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【土浦市】岡本太郎現代芸術賞に入選した土浦のイラストレーターが県指定文化財の実家で個展を開催

コイケケイコ土浦在住ライター(土浦市)

土浦出身・土浦在住のイラストレーター、かえるかわる子さんこと矢口祥子(やぐちあきこ)さんが今週末(10/2・3)に実家である「矢口酒店」にて個展を開催します。茨城県指定文化財で、土浦の魅力を描いた「矢口新聞」を見られるという貴重な2日間です。

個展の開催場所は土蔵造りの歴史ある建物である矢口さんの実家

矢口祥子さんは、江戸時代から続く「矢口酒店」の娘さんで、現在は実家にほど近い場所をアトリエ兼住居にしてお住いですが、いつかは実家いっぱいに作品を飾って個展を開きたいと願っていました。

個展開催前日は台風直撃だったため外からの撮影を断念しましたが、「矢口酒店」は土蔵造りの印象的な佇まいで後世に残したい建築物として1980年に茨城県指定文化財に指定されています。

この建物は「矢口家住宅」と呼ばれ、旧水戸街道沿いに面して主屋があり、入って右側が店蔵(みせぐら)、左が袖蔵(そでぐら)、別に建てられた元蔵(もとぐら)で構成されています。現在通りに面した側は閉じられたままになっていますが、江戸時代の面影が今もなお強く残る風情ある家屋です。

2011年3月11日の東日本大震災で建物が損傷し、5年におよぶ修理工事が行われました。それを機会にお酒の販売は仮店舗という形で裏手に構えた店舗で行われ、矢口家住宅のほうは土浦市を代表する観光地のひとつとして開放されるだけとなっていました。

矢口さんが実際に住んでいたこともある実家での個展開催は実は今回が初めて。6年をかけて描いてきた約250点もの作品(矢口新聞)をはじめ、手作りのオブジェなどが1階と2階の全面を使って展示されます。

この週末の個展に先駆けてちょっとだけ見どころをご紹介!

全部をお見せすると実際に見た時の感動が薄れてしまうので、ちょっとだけ個展の見どころをご紹介します。ナビゲーターはもちろん矢口さんご本人です。まずは店蔵に飾ってあるこちらのオブジェ。カラフルでかわいいモチーフを木の枝に飾り、まるで矢口さんの「夢」という名のお花が咲いたようです。オブジェの横にはお酒の瓶。酒店の趣とコラボさせるあたりが心憎い演出です。

1階の壁一面に「矢口新聞」が掲げられています。「矢口新聞」は通常はB4版2つ折りの小さなサイズなのですが、個展用に拡大コピーをしてフレーム代わりに手作りの台紙に貼ってのお披露目です。

矢口さんは、都内やつくば市などさまざまな場所でグループ展や個展を開催していて、回を増すごとにファンが増えています。幾度となく作品鑑賞に訪れる人に新しい作品を見てもらうため「新作」付箋のついた作品もちらほら。

こちらは2015年4月に発行された記念すべき「矢口新聞」第一号。絵の勉強に通っていた先生から思ったことを絵日記にするといいよとアドバイスがあったのですが、絵日記なんて何を描いていいものかと悩みに悩んで日記ではなく思ったことを書こうと心の中に思い描いたことを表現したそうです。

ちょっとまだ自信がなさげな感じが初々しいです。

6年を経た矢口さんの作品はもう白いスペースがなく、文字も絵も色もあふれそうなくらいです。矢口さんの爆発した思いが感じ取れるようです。

爆発で思い出しましたが、矢口さんは今年行われた「第24回 岡本太郎現代芸術賞展」で入選を果たしたその人。岡本太郎現代芸術賞展とは、芸術家である岡本太郎さんの遺志を継ぎ、時代を創造するにふさわしい人を選んで賞を贈るもの。多彩な色遣いや心からの想い、そのすべてが審査員の心を打って入選したのです。

2階は床一面に土浦の街が描かれていてとても楽しいです。閲覧できるスペースはカーペットが敷いてあるのでそこから作品を鑑賞しましょう。

壁にはもちろん「矢口新聞」。本当にずっとここにいて新聞を読んでいたくなります。

矢口さんの作品ではありませんが、改修工事で荷物を整理していた時にたくさん出てきたという手ぬぐいも展示されています。土浦の歴史を垣間見ることのできる作品レベルの手ぬぐいです。

中でも矢口さんのお気に入りは呉服店「大徳」さんがお年賀に配る干支の手ぬぐいです。カラフルで本当に素敵。

ちなみに2階へは階段を使って移動します。「一番急じゃない階段で2階へ行きましょう」とすいすいと矢口さんは行くけれど、これ、結構急です…皆様お気を付けて。

矢口さんの個展に訪れるのは2回目なのですが、コイケのお気に入りはこれです。矢口さんのメッセージはとてもパワーがあって、神様もそのパワーに押されてか、彼女の夢を応援しているかのよう。次々にしたいことが形になりつつあるのです。

会期中にもしかしたら矢口さんのお父さまやお母さまにお会いできるかもしれません。もともと実家での個展には「NO」だったというご両親ですが、今回の個展はもしかしたら矢口さん本人よりも喜びが強く、ノリノリなんです。

歴史ある代物を見せてもらえるかもしれないので、お会いできたらラッキーと思っていろいろとお話を聞いてみて下さいね。

個展情報
矢口新聞 個展
開催場所:矢口酒店(茨城県指定重要文化財:矢口家住宅)
(茨城県土浦市中央1-6-13)
開催日時:2021年10月2日(土)・3日(日)13:00~16:00
入場料:無料
※駐車場は最寄りのコインパーキングをご利用ください。また、個展開催場所の「矢口酒店」のある通り沿いは一方通行のため、運転に不安がある方は表通り沿いのコインパーキングに停車して歩いてお越しください

土浦在住ライター(土浦市)

土浦市在住のフリーランスの編集・ライター。海外・国内の旅行関連のガイドブックや書籍制作をはじめ、ブライダル情報誌の編集にも携わる。食べること・飲むことが好きで、趣味が興じて最近では食を中心にWEB、紙媒体などで取材執筆活動中。地元土浦の飲食パトロール、歴史やカルチャー学習も積極的に行っています。

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