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紙の表情を引き出す3作家による作品展が灘五郷の中心地で開催中@櫻宴【神戸市東灘区】

小坂裕子フリーランスMC/ライター/ワーママ(神戸市)

- 描く・切る・折る - お紙ごと展

魚崎郷の松並木を進むと「櫻正宗記念館“櫻宴”(外部リンク)」の重厚感ある門が見えてきます。現在、櫻宴2階展示室で三人展が行われており、今回は「紙」を使い、それぞれ違う表現方法で生み育てられた3作家の作品が展示されています。個々の素晴らしさはもちろん「表現の違い」や「紙の変化」も楽しんでいただきたいと思います。

阪神・淡路大震災を乗り越えた門
阪神・淡路大震災を乗り越えた門

紙に描く - 永田恵理

墨や、金泥・金箔を使用した作品が中心でした。金泥とは、金粉をニカワの入った水で溶かした絵具のことです。墨の濃淡で表現されたモノクロの世界に、まるでもともとそこにその色があるような、金泥の色が絵の中に溶け込んでいるようでした。

激しい動きを感じさせるペンギン(右)
激しい動きを感じさせるペンギン(右)

じっと動かずこちらを見つめる様子が印象的なカラス
じっと動かずこちらを見つめる様子が印象的なカラス

金泥の染みで目力がより強く感じるネコ
金泥の染みで目力がより強く感じるネコ

永田さんの描く動物には、ある種の独特な雰囲気があって、墨で描かれたネコも同様でした。特に目が特徴的です。このネコの金泥は、アクセントとして添えられた感じが素敵です。

今にも動き出しそうなイヌ
今にも動き出しそうなイヌ

上の永田さんらしいイヌの絵は、今回の私の一番お気に入りです。細密画ではないし平坦な紙に描かれているのに、すごく立体的で存在感があります。さらに、楽しんでいるのか?怒っているのか?それとも苦しんでいるのか…想像の余地を与えてくれます。

以前はアクリル絵の具などカラフルな作品も
以前はアクリル絵の具などカラフルな作品も

永田さんとの出会いはおそらく6、7年前。喫茶店のペン画と不思議な表情のカラフルな動物たちに魅せられました。使用画材など年々変化しているものの、やはり永田さんの作品!とわかるものばかりでした。

本になった喫茶店のペン画「末端試験弁の向こう側へ」とおせち陶器
本になった喫茶店のペン画「末端試験弁の向こう側へ」とおせち陶器

現在、櫻宴の近くのサクラゴルフガーデンにも永田さんの作品が飾られていますので、ぜひご覧ください。

サクラゴルフガーデンの展示
サクラゴルフガーデンの展示

紙を切る - kirittai(キリッタイ)

1枚の紙からフリーハンドで切り出された作品とは思えないほどの表現で、細かい所まで丁寧に作られています。色は付けられておらず、紙の陰影で微妙な色の変化が表されているようです。

kirittaiで作られたジオラマ
kirittaiで作られたジオラマ

額に入れて飾られている作品も素敵ですが、切った後の紙(抜け殻)を見るのも面白いと思いました。完成作品を見る前に、抜け殻を見て「これは何だろう」と想像するのも楽しいですね。

まるで影のような「抜け殻」
まるで影のような「抜け殻」

作品の躍動感や抜け殻に残る余韻から、kirittaiの「紙に命を宿す」というコンセプトがよく伝わってくるようです。

大小様々な躍動感ある昇龍
大小様々な躍動感ある昇龍

kirittaiは、見たり飾ったりするのも楽しいですが、やはり創るその課程に一番の魅力があるのではと思っています。在廊日には、お客様から作って欲しい生きものをリクエストしてもらい、実演されるそうです。年内は、20日(月)、21日(火)といらっしゃるので、ぜひご覧ください。

紙を折る - 坂口雅彦

ニコニコとこちらを見ている大きなシーサー。よく見るとミニマムなシーサーたちも笑っています。坂口さんの活動の中心地であり「リトル沖縄」とも呼ばれる大阪市大正区がそのままここに来たような陽気さです。

地域のイベントでは子ども向けの組み立てや色付け体験も
地域のイベントでは子ども向けの組み立てや色付け体験も

手を使って何かを創るという機会が減っている今の時代に、こういったことをきっかけに子どもたちにもものづくりの楽しさが伝わればいいですね。私もお正月に、十二支紙細工を子どもと一緒に作って飾ろうと思います。

のり・はさみ不要で折るだけで完成「十二支紙細工」
のり・はさみ不要で折るだけで完成「十二支紙細工」

坂口さんの展示作品の中でも、異色なものを発見。「いったいどうやって作っているの?」とまじまじと見てしまいました。白いボディ作品は、縦横の直線的な表現では表しきれない、他の方法を追求したアート作品だそうです。

段ボールから作られた白いボディ作品
段ボールから作られた白いボディ作品

櫻正宗記念館“櫻宴”

櫻宴玄関前
櫻宴玄関前

お紙ごと展が開催されている展示室(2F)のある「櫻宴」は、正宗名発祥のアイデンティティを後世に遺そうと建てられた記念館で、櫻正宗株式会社(外部リンク)の施設です。館内を簡単にご紹介しましょう。

1階

・ショップ「櫻蔵」

蔵元ならではの酒商品や特産品が購入できる
蔵元ならではの酒商品や特産品が購入できる

・喫茶「カフェ」

お庭を眺めながら和スイーツが楽しめます。私もショップとカフェを利用させていただきました。酒粕ケーキがとっても美味しかったです。

手造り酒粕ケーキ@櫻宴のカフェ¥550(税込)
手造り酒粕ケーキ@櫻宴のカフェ¥550(税込)

2階

・酒造ダイニング「櫻宴」

地元の方はもちろん、酒蔵観光と共に本格和食を楽しめます。

・呑処「三杯屋」

カウンターで一日三杯までお酒が楽しめるシステムです。

・展示スペース「櫻宴蔵町通り」

昔ながらの酒づくりの道具展示や映像上映があります。

昔使われていたレトロな看板も
昔使われていたレトロな看板も

※櫻宴の営業時間は各店違い、予約が必要な場合もありますので、詳しくは櫻宴公式HP(外部リンク)でご確認ください。

年末年始のお休みを利用して、美味しいものと3作家の「お紙ごと」を楽しむのはいかがでしょうか。展示は1月10日までの開催です。

なお、作品の購入は、オンラインショップや作家在廊日に直接作家からご購入ください。年末年始の在廊予定日・在廊日に来館できない場合の問い合わせは、最後にご紹介する「作家情報」に掲載の、それぞれのHPやSNSなどでご確認ください。

以上リポートは
MCのB面:新米ライター・YUKOでした!

イベント情報

- 描く・切る・折る - お紙ごと展
イベントFacebookページ

場所:櫻正宗記念館“櫻宴” 2F展示室
住所:神戸市東灘区魚崎南町4-3-18
アクセス:阪神魚崎駅から徒歩約5分
会場の公式HP(外部リンク)

開催期間:
2022年1月10日(月・祝)まで
10:00~21:00
(館内の飲食店と時間が異なります)
定休日:火曜日

作家情報

永田恵理(ながたえり)
永田恵理(ながたえり)

永田恵理(ながたえり)
公式HP Twitter Facebook Instagram
(上記4つ全て外部リンク)

兵庫県神戸市生まれ。京都嵯峨芸術大学卒業後、関西・関東を中心に主に動物モチーフで描いた展示活動を開始。今年も、神戸阪急のアートフェアへの参加や、櫻正宗記念館櫻宴・兵庫県立美術館別館原田の森ギャラリー他で個展を開催するなど、精力的に活動している。

■「お紙ごと展」在廊予定日
12月26日(日)11時半~15時(12月20日時点)
その他、平日夜も在廊する場合があります。詳しくは、Facebook、Twitter、Instagramをご覧ください。

■2022年1月22日~2月2日
アートカクテル主催 第4回公募オーディエンス賞受賞グループ展2022 出展予定(大阪)

■2022年6月 個展開催予定
詳しくはHPやSNSで随時情報発信中

kirittai(キリッタイ)
kirittai(キリッタイ)

kirittai(キリッタイ)
公式 HP 書籍 HP minne Facebook YouTube
(上記5つ全て外部リンク)

親戚の子どもからのお面製作リクエストが立体切紙を始めたきっかけ。ブランド「kirittai」を立ち上げ、ギャラリー運営で作家サポートをするなど、活動の場を広げている。様々なメディアからの取材を受け、新しいペーパークラフトとして全国的に認知されるように。

■「お紙ごと展」在廊予定日
12月20日(月)、21日(火)
在廊中はリクエスト切りを受付。1つリクエストにつき1,000円、5分程度。(複雑なものを除く)

坂口雅彦(さかぐちまさひこ)
坂口雅彦(さかぐちまさひこ)

坂口雅彦(さかぐちまさひこ)
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幼い頃から方眼紙や箱を使う工作が好きで、10代から商品紙箱の設計に従事。現在は大阪市大正区を拠点に「組立紙細工(くみたてかみざいく)ひこかみ」として活動中。舞台などの空間デザインも手掛けている。

■2022年1月31日〜2月5日
第15回美術の祭典 東京展春季会員展2022 出品
@ギャラリー暁(東京都中央区)

■2022年2月14日〜24日
第47回美術の祭典 東京展受賞記念展 出品
@ギャラリーセイコウドウ(東京都中央区)

■2022年3月16日〜21日
第10回美術の祭典 東京展美術協会主催 関西展 出品

@兵庫県立美術館王子分館(原田の森ギャラリー)1階

フリーランスMC/ライター/ワーママ(神戸市)

兵庫県神戸市で子育て中(0歳・2歳)のワーママ。フリーランスのウェディング司会者として活動しながら、カフェで隙間時間に執筆。趣味の茶道は、お抹茶といただく季節菓子が楽しみのひとつ。忙しい合間の息抜き時間を、有意義に楽しんでもらえるような地域情報を発信していきます。1984年明石市出身。

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