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【京都市下京区】《The Terminal KYOTO》ギャラリー「悲とアニマⅡ~いのちの帰趨~」展

高津商会RICALIFE&文化芸術☆プロデューサー/ジャーナリスト(京都市)

悲とアニマⅡ~いのちの帰趨~

2015年3月に北野天満宮で開催した現代京都藝苑2015「悲とアニマ」展は、伝統的な日本的感受性とは何かを理論と実践の両面から考察する日本学術振興会科学研究費助成事業「モノ学・感覚価値研究会」の活動の一環であった。当時、2011年3月11日に発生した東日本大震災の記憶が徐々に薄れつつある中で、改めてそれがもたらした衝撃と向き合い、そこから名もない全ての生の悲しみに心を寄せつつ、社会の安寧と賦活の方向性を模索する現代美術の展覧会であった。
 2020年、私達は新たに新型コロナウィルス禍に見舞われた。これまで盤石と思われていた近代文明が想像以上に脆弱であり、誰もが底知れぬ不安に包まれる中で、今改めて本当に大切なものとは一体何かが問われている。古今東西の叡智が教えるように、生の充実は死と向き合う中にあり、そこにこそ伝統的な日本的感受性も自ずから現代的なかたちで立ち現れるのではないだろうかと思われる。
 この観点から、東日本大震災から10年目の2021年に、現代美術の展覧会「悲とアニマⅡ~いのちの帰趨~」展は開催される。第1会場である建仁寺塔頭・両足院では「彼岸」を、第2会場であるThe Terminal KYOTOでは「此岸」を象徴する展示を行う。(秋丸知貴)

現代京都藝苑2021による現代美術の展覧会「悲とアニマⅡ~いのちの帰趨~」(The Return Destination of Life展)

建仁寺塔頭・両足院とThe Terminal KYOTOの2会場で開催中の現代京都藝苑2021による現代美術の展覧会「悲とアニマⅡ~いのちの帰趨~」(The Return Destination of Life展)。

【作家】(五十音順)池坊由紀 入江早耶 大西宏志 大舩真言 岡田修二 勝又公仁彦 鎌田東二 小清水漸 近藤高弘 関根伸夫 成田克彦 松井紫朗 吉田克朗
【期間】2021 年 11月19日(金) – 11月28日(日)

京都の真ん中にある京町家をギャラリーとした「The Terminal KYOTO」。まず、開かれた格子戸を入るといきなりハイシーリングの空間に飾られた写真たちが迎えてくれます。

勝又公仁彦インスタレーション『Skyline』シリーズと『CITIES ON THE MOVE』シリーズ。勝又作品の中でも2000年以降の代表作品とも言えますね。

Panning of Days -Syncretism/Palimpseste-3DAys in 14years(2008-2021)こちらも勝又作品です。巨大な作品であるこの作品は、屏風のように京町家を飾っています。桜の木の影が、その下に見える街の景色とうまくとけ合い、ピンクの色が明るい未来を象徴しているかのようです。両足院でのインスタレーションとは打って変わり、いらない物が削ぎ落とされ洗練された感が否めません。両足院での展示が、古代から現代までの時空空間を物質での表現だとすると、The Terminal KYOTOでは平面の中で立体空間を演出するという対比が大変面白かったです。両足院での展示会について→ https://creators.yahoo.co.jp/kozushokairica/0100159126

また、靴を脱いで中に入ると正面には鎌田東二教授の「大島のオーソレミヨ(気仙沼市大島亀山)」(2014年)が迎えてくれました。

ー非のみやこ おきてやぶりの 雷光と ともに翔けゆけ アニマの鳥よー(鎌田東二)

池坊由紀さんの作品が床の間にみえ、その先に綺麗に剪定された中庭と大舩真言作品が見れます。中でも、伊吹山のリフレクションという作品は家族や姪や甥と一緒に登山をした思い出のある大切な山。滋賀の「太郎坊の天狗さん」を思い起こさせるヒゲのようなものが中庭に続く縁側に見え、一瞬テンションが上がりました♪

二階に上がり、廊下の空間も演出がされています。「和」の世界に溶け込むアート作品集に圧倒されつつ、次の部屋へと向かいます。

二階からは中庭を望みつつも、メッセージ性のある作品が集まった部屋が連なっております。

高い天井からぶら下がったオブジェたちが「静」を表しつつ、いつでも動きそうな「動」を含む表現作品と『生と死』を彷彿させる空間演出。

このギャラリーには防空壕も2つありました。規則的に敷かれた石に導かれ、路地を進みます。

現世では、その存在を聞いたことがあっても実際に見ることが少ない『防空壕』。ドキドキしながら中に入ってみました。

密閉された中で、「生」を望みつつ「死」と隣り合わせの時間を過ごしたと思われる『防空壕』では、不思議な感情が生まれてきました。

老舗会社『高津商会』という日本映画界を作ってきた会社で、現代での役割がなにかを考える日々。京町家という『和』の中にあるモダンアートたちを、紅葉が色とりどり綺麗な秋に感じることで「生きること」とは何か一瞬でも立ち止まることで、「今」を感じることなのだと気付くきっかけになりました♪感謝♪

第2会場:The Terminal KYOTO
(京都府京都市下京区新町通仏光寺下る岩戸山町424)
 時間:09:00~18:00(※但し11月28日は09:00~17:00)受付終了は30分前
 予約不要 入場無料
http://kyotocontemporaryartnetwork.web.fc2.com/introduction2021.html

LIFE&文化芸術☆プロデューサー/ジャーナリスト(京都市)

京都で生まれ育つ。世界各地を周遊、欧米中心に20年ほど滞在し京都に帰還。日本のコアな伝統文化や芸能、神社仏閣や裏歴史、催事らを国内外の旅サイト・雑誌・新聞で執筆。経験に基づく“陰謀説”の電子書籍出版あり。ジャーナリスト、写真映像家、イベントプロデューサー、特殊ツアーガイドから日本庭園庭師までマルチに活躍。京都太秦にある老舗『髙津商会』にて映画・美術装飾・アート&エンタメ、海外事業に携わりつつ伝統文化・芸能などに関わる史実や古美術らについて勉強中。『京愛』や『日本愛』を深める毎日。

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