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【横浜市】新年度に知っておきたいハマっ子の生態(後編) 坂だらけ、交番の罠、みどり税、マスコットたち

krayskyライター/東京神奈川行ったり来たり(横浜市)

「ハマっ子の生態」について考えてみる。前編の記事に続き、後編でも「ハマっ子なら知っている」「横浜に住むなら知っておきたい」話題を取り上げる。横浜に関する確かな情報と、「確からしい」情報とを織り交ぜてお伝えします。

・横浜市外に出ると坂が少なくてびっくり、横浜は坂の街
・「横浜集合、交番前で待ち合わせ」には注意!
・横浜に住むと「みどり税」がかかる
・(番外編)スターマンとそうにゃんを間違えてはいけない

横浜市外に出ると坂が少なくてびっくり、横浜は坂の街

横浜で生まれ育ち、新しい土地へと移る。とあるハマっ子はそこで気づいた、なんだかこの街は平らだな…。そう、横浜は坂の多い街なのである。

「坂の多い街」を定義するのは難しいかもしれないが、日常の実感として、ハマっ子たちは坂が多いことを受け入れているようだ。みなとみらい、鶴見・新子安駅、新杉田駅などの海側は平らだが、JR京浜東北線や京急の線路よりも山側に入ると坂だらけだ。

旧東海道の「権太坂(ごんたざか)」(横浜市保土ケ谷区)。かつてここを訪れた旅人が、この長い坂に通りかかり「この坂はなんという名前ですか?」と地元の人に声をかけた。話しかけられたおじいさんは耳が遠く、自分の名前を聞かれたと思い「ヘイ、権太(ごんた)と申しますだあ」。そんな由来も残る(※1)。

横浜市保土ケ谷区権太坂1丁目
横浜市保土ケ谷区権太坂1丁目

こちらも有名どころ、桜木町駅前「紅葉坂」(横浜市西区)。桜木町駅から徒歩で横浜能楽堂に向かうと、途中で「あーっ、まだ坂か!」となる、つらい傾斜。下りで通り抜けていく車を恨めしく眺める。

横浜市西区花咲町4丁目
横浜市西区花咲町4丁目

紅葉坂の近く、野毛山公園に向かう「急坂」(横浜市西区)。「急坂」という名前が付けられていると、もはや上るほうも諦めがつくのは不思議だ。

横浜市西区東ケ丘
横浜市西区東ケ丘

野毛山動物園を越えて「水道道」(横浜市西区)。「尻こすり坂」とも呼ばれ、西横浜駅へ続く道は、上ったかと思えば下り、下ったかと思えば上る。まるで人生のアップダウンのようだと考えさせられてしまった。ハマっ子の通学路はつらいね。

横浜市西区西戸部町1丁目
横浜市西区西戸部町1丁目

横浜市西区藤棚町2丁目
横浜市西区藤棚町2丁目

有名な坂のみならず、日常の中に何気ない坂がある。たとえば洋光台駅や港南台駅の、駅に向かって続く、長くなだらかな坂。…足腰が疲れたので、写真はまたの機会に。

「横浜集合、交番前で待ち合わせ」には注意!

待ち合わせで「横浜に集合」と言われたら、どこに行くだろうか。まず、ハマっ子が言う「横浜」とは「横浜駅」を意味するので、ここで「みなとみらいにしようか?」とか「中華街から山下公園に歩こうかしら」などと返してはいけない。

さて、横浜駅で登場するのが「交番前で待ち合わせ」である。しかし安心するのはまだ早い。 なぜなら、どちらの交番かという問題があるからだ。

繁華街の広がる、横浜駅西口。ここには「駅前の交番」が二つある。一つは、高島屋正面入り口前の「横浜駅西口警備派出所」。建物に「KOBAN」の文字。「高島屋の前の交番」と言えばここ。

横浜駅西口警備派出所
横浜駅西口警備派出所

もう一つは「横浜駅相鉄口交番」。看板に「KOBAN」の文字。JRに比べ相鉄線の改札は西南にあり、帷子川周辺の繁華街にぐっと近い。「相鉄の方の交番」と言えばこちら。

横浜駅相鉄口交番
横浜駅相鉄口交番

携帯電話が普及した時代にあっても、お互いが違う交番にいては「横浜の交番着いたよ」「私も交番にいる」「え、見えないどこだろう?」「え、私も見えない、交番にいるってば!」ということになりかねない。

学生時代などは、横浜ビブレの方面に向かってカラオケやゲームセンター、ハンバーガーやクレープを目指すから、「相鉄の方の交番」が活躍する。

横浜に住むと「みどり税」がかかる

ハマっ子なら納めている、「横浜みどり税」(以下「みどり税」)。その名のとおり、横浜市の緑のための税金だ。ハマっ子たちに「横浜と言えば?」と質問をして、意外にも話題になることが多かったのがこの「みどり税」。ちなみに2019~2021年度に横浜市が行った調査では、みどり税を知っている市民は、全体の約50%(※2)。

2009年度から導入され、個人で負担する金額は年間900円。個人住民税の「均等割」(所得に関わらず定額で負担する金額)だから、個人住民税を払っている人なら誰でも、この金額が上乗せして徴収されている(※3)。税金の種類としては「法定外税」にあたり、自治体が独自に作り課税するもの。つまり、横浜が作った、横浜の緑のための、横浜市民が払う税金だ。

どのように使われているかというと、たとえば日本大通り(横浜市中区)の街路樹や花の整備。横浜市は「横浜みどりアップ計画」を策定し、「樹林地・農地の確実な担保」「身近な緑化の推進」といった使い道に、みどり税を充てている。

2023年4月
2023年4月

例年見事な量のチューリップを楽しめる、横浜公園。開花状況は「2023年横浜公園チューリップ通信」で発信されている。今年の見ごろは、早くも終盤。

2022年4月
2022年4月

みどり税の期間は5年間で、2009-2013年度、2014-2018年度、2019-2023年度と3期にわたって継続してきた。今年は現在の期間の最終年度にあたるので、秋ごろには2024年度以降の制度について議論・計画が行われる見通し。

ちなみに2024年度からは国税である「森林環境税」が導入されるが、横浜市はこれとみどり税とは「目的と使いみちが異なります」としているから、ハマっ子は市内の緑とともに国内の森林についても支えることになりそうだ(※4)。

実際のところ、横浜では緑を意識する機会は多いかもしれない。3月25日から6月11日まで行われているのは「ガーデンネックレス横浜2023」。市内の公園で見かける「ガーデンベア」は、このイベントのマスコットキャラクターだ。春の気候に楽しめる、マルシェや草花の展覧会などが企画されている。

ガーデンネックレス横浜のマスコットキャラクター
ガーデンネックレス横浜のマスコットキャラクター

(番外編)スターマンとそうにゃんを間違えてはいけない

野球中継を見ていて、勘違いしたことがある。ベイスターズのスターマンは、そうにゃんの仲間なのか…?!

左:野球中継のヒーローインタビューに映った「DB.スターマン」。右:そうにゃん(相鉄ホームページより)
左:野球中継のヒーローインタビューに映った「DB.スターマン」。右:そうにゃん(相鉄ホームページより)

「そうにゃん」は相鉄線のマスコットで猫、趣味は「食べ歩き (つい食べ過ぎちゃうのでダイエット中)」「DB.スターマン」はベイスターズのマスコットでハムスター、性格は「食いしん坊」(※5)。

ハマっ子たちは、この二つのマスコットが似ているとは思わないらしい。特にベイスターズファンには、「スターマンは顔が星型なので、そこがだいぶ違う」と反論されたことがあるが、果たして…。彼らは丸顔、顔の縁取り(毛色)がオレンジで中央は白く、控えめなサイズの帽子を頭の上にちょこんと載せている。衣装はブルー。…親戚同士くらいには見えてしまうのだが、それは筆者がハマっ子ではないことの証なのか。

スターマンのファンサービス。2012年から活躍。体重は「ボール10個分」、これは目標体重の倍とのこと。

2023年4月
2023年4月

そうにゃんは2014年に相鉄に「入社」した広報担当。鉄道会社の社員として、てきぱきと働く雰囲気で、『そうにゃんとえきいんさん』などの絵本にもなっている。

西横浜駅、2023年4月
西横浜駅、2023年4月

…と、こんなことを考えていたら、2マスコットが並んでいるのに出会った!横浜駅・相鉄ジョイナスの一階通路、Tシャツショップ「OJICO」のポップアップストアで、そうにゃんのTシャツとスターマンの靴下が隣り合っている。こちらのポップアップストアは4月16日まで。

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前後編に分けてお伝えした「ハマっ子の生態」。国語辞典には「江戸っ子」はあるが、「ハマっ子」はない。しかし現代では、「宵越しの銭は持たない」とか「チャキチャキ」の江戸っ子以上に、ハマっ子は存在感を増しているようにも思う。ただ、江戸っ子ほどステレオタイプに定義するのは難しく、どういう行動・性格だと「ハマっ子だねぇ!」と言いたくなるのかは、考え甲斐がありそう。

港が世界に開かれたことが「ハマっ子」を誕生させたことは間違いなさそうで、「濱ツ子の意気何ぞ壮なる」といった表現は、1900年代の初めにはすでにあった(※6)。「ハマっ子」には、少なくとも120年ほどの歴史がある。これからもハマっ子の伝統と進化を見守りたい。

<注>
※1 森川昭編『東海道五十三次ハンドブック 改訂版』三省堂、1997年6月。「保土ヶ谷」の項。保土ケ谷区のホームページでも坂名の由来が紹介されている。
※2 「横浜みどりアップ計画[2019-2023]3か年(2019年度~2021年度)の事業・取組の評価・検証」(環境創造局、2022年10月)
※3 横浜みどり税は法人に対しても課税されている。詳細は「横浜みどり税の概要」(横浜市ホームページ)。
※4 「横浜みどり税の概要」(横浜市ホームページ)
※5 そうにゃんプロフィール(相模鉄道ホームページ)、DB.スターマンについて(横浜DeNAベイスターズホームページ)
※6 伊藤銀月著『百字文選 続』(如山堂、明治37(1904)年)は、当時の新聞「萬朝報」の懸賞作文で、海の風景を「瑠璃の坦道を乳母車の歩む様に往きては戻る御船様」と詠んだ作品を載せている。作者は横浜の人とあり、評者はこれを「(海と船をこう表現するとは)さすがハマっ子はパワフルですねぇ」といった感じで評価している(『百文字選 続』国立国会図書館デジタルコレクション

ライター/東京神奈川行ったり来たり(横浜市)

東京生まれ、東京&神奈川&アメリカ大陸育ち。出版社やメーカー勤務を経て、好奇心とともに東奔西走。好きな言葉は「一石二鳥」「三つ子の魂百まで」。文化/日本語/フィクションとノンフィクション/経済的/すこやかな生活。

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