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有酸素運動がつらければストレッチだけでも。それで長生きできる可能性。3万5千人データ解析【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

「運動する時間も元気もない」←ならばストレッチ!

「健康維持のためには運動が良い」。耳にタコができるほど聞かされているお題目だと思います。でも実際にはジムに行く時間は取れないし、仕事中にそんなに歩き回れるわけでもない——。そんな悩みを抱えている人の方が多いはず。

そんなあなたにおすすめの論文が6月14日、「BMC公衆衛生」という学術誌に掲載されました [文末文献1] 。ストレッチをすれば有酸素運動と同じ程度に死亡リスクが減る可能性が示されたのです。報告したのは韓国・高麗大学校のYoonkyoung Cho氏たち。わたしたちへの適合性は白人たちのデータよりも高いでしょう。

韓国3万5千人のデータを解析

Cho氏たちが調べたのは、20歳以上の健康な住民およそ3万5千人です。がんや心臓病などを患っている人たちは除かれています。これらの人たちに運動習慣をアンケート回答してもらい、最長12年間観察した上で、運動習慣と死亡リスクの関係を解析しました。

するとやはり「有酸素運動」をたくさんすると死亡リスクが低くなっていました。まったくしないのに比べ、1週間に「5MET×1時間分」以上の有酸素運動をすると、死亡リスクは相対的に30%前後も減っていました。5METといえば「自転車通勤」や「庭の芝刈り」「クラブも自分で運ぶゴルフ」などが相当します [改訂版 『身体活動のメッツ(METs)表] 。

筋トレでも死亡の危険性は減っていました。まったくやらないのに比べ、週1でも筋トレすれば死亡リスクはやはり、相対的に20~30%低くなっていたのです。筋トレの種類までは明らかでありませんが、力まない「アイソメトリック」なら十分に実現可能でしょう。

週一ストレッチで死亡リスクは30%も低下

そして本題。ストレッチです。1週間のストレッチ回数「0回」に比べ「1回」でも死亡リスクは30%も低くなっていました。回数を増やしても同じです。

なぜストレッチで死亡リスクが減るのでしょう?この研究からだけでは死亡リスクを減らしているのが「ストレッチそのもの」なのか「ストレッチする人に共通な何らかの要素」なのかは分かりません。

ストレッチが免疫や代謝、血流を改善した可能性。メンタルにも好影響か

しかしCho氏たちはストレッチによる免疫や代謝の改善、さらに血流の改善などが死亡リスクを減らした可能性を指摘しています。また大きく息を吸ってゆっくり動くストレッチは、ストレスや不安などのメンタルにも良い影響があるかもしれないと推察しています。

だったらやってみて損はないですね。

まとめ

いかがでしたか?運動時間が取れなくても、ストレッチをしっかりやっておけば長生きできる可能性が高まるという論文のご紹介でした。

「死亡」リスクについては以下の文献紹介記事も書いています。ぜひ、こちらもお読みください。ではまた!

今回ご紹介した文献

ストレッチ習慣で死亡リスク低下 [英語・全文無料]

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【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。10年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌などに寄稿。近年では共著で医師向け書籍も執筆。国会図書館収録筆名記事数は100本を超える。

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