糖尿病になりにくい人はコレステロールを控えていた。36万人データ解析で判明【医学論文】
血中コレステロールのうち食事由来は2割だけ
皆さんは食事に含まれるコレステロールを気にされていますか?一昔前までは「コレステロールの多い食事は血中のコレステロールを増やす」と悪者扱いされ、卵やイカなどが槍玉に挙げられていました。
流れが変わったのは、小腸からコレステロールを体内に吸収するNPC1L1(エヌシーピー・ワン・エル・ワン)という輸送体が発見された2004年です [文末文献1] 。これによりその後、血中コレステロールの何割が食事由来か検討できるようになりました。すると驚くことに、血中コレステロールの約8割は体内で合成されたものだと明らかになったのです [日本動脈硬化学会 HP] 。
だからと言って好きなだけ食べても良いわけではない
これで形勢は逆転。「コレステロールは気にせず食ってよし!」という声が高まります(雑誌でもよく見かけませんか?)。でもどうなんでしょう?血中コレステロールの約2割は食事由来ですから、やはりコレステロールを食べすぎると血中コレステロール値は上がるような気もするのですが。事実、「卵をたくさん食べる人ほど、血中コレステロール値は高い」というデータも韓国から報告されています [文末文献3] 。
そして今日の本題です。コレステロールをたくさん食べると血中のコレステロール値が上がるだけでなく、糖尿病になる危険性も上がってしまう可能性が明らかになりました。少し前になりますが、「栄養・代謝と心臓血管疾患」という学術誌の1月号に載った研究をご紹介します。著者は中国・北京協和医学院のYuehua Li氏たちです [文末文献3] 。
Li氏たちが今回解析対象としたのは、コレステロール摂食量と2型糖尿病発症の関係を経時的に観察した論文11本です。観察人数は35万5千人を超えています。これらのデータを、統計学を用いて併合しました(メタ解析)。
食事から摂るコレステロールが増えるほど糖尿病になるリスクが上昇
その結果、1日のコレステロール摂食量が100mg増えるに従い、2型糖尿病になるリスクが1.05倍ずつ上昇していました(図)。逆に言えば、2型糖尿病になりにくい人は(結果として)コレステロール摂食を控えていたということです。
ただしこの結果から「コレステロールが2型糖尿病リスクを上げる」とは断言できないのも事実です。コレステロールを控えている人たちに共通の「何か」が糖尿病発症リスクに影響している可能性も否定できないからです。
背景にインスリン分泌の低下?
しかしLi氏たちは「摂食コレステロール増加そのものが2型糖尿病のリスクを増やす」と考えているようです。そのメカニズムについては「詳細は不明」としながらも、インスリン(血糖を下げるホルモン)を分泌するβ細胞にコレステロールが沈着すると、インスリン分泌が低下する可能性を指摘しています(動物実験で実証)。
コレステロールは生体の構成に欠かせない物質ですから、極端に摂食を制限する必要はないかもしれません。しかし近親者に糖尿病の患者さんがいる、あるいは健康診断で血糖値を注意されているなど、2型糖尿病になるリスクの高い人は留意した方が良いかもしれません。グラフをよく眺め、自分なりの「落とし所」を見つけましょう。
まとめ
いかがでしたか?食事に含まれるコレステロールに神経質になる必要はないものの、やはり摂りすぎは高コレステロール血症や2型糖尿病になる危険性を高める可能性があるというお話でした。
コレステロールについては次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひご覧ください。ではまた!
今回ご紹介した論文
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【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。