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科学的に減量作用が証明された「16時間ファスティング」。「カロリー制限」よりも効果的【最新医学論文】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

日本人40代は2〜4割が太り過ぎ?

楽に痩せたい」。

容姿を保つためだけでなく、健康維持のためにもそう願っている人は多いはず。

日本人では40代男性の39.7%、50代男性の39.2%、40歳以上女性の22.5%が「肥満」(BMI≧25)だと明らかになっています [厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」P119] 。

ではどうやって痩せましょう?今回は「科学的に減量効果が証明された『16時間ファスティング』」についてご紹介します。元ネタは米国・シカゴ大学のヴァシリキ・パヴルー氏たちが「米国医師会雑誌ネットワーク・オープン」という学術誌で10月27日に発表した論文です [文末文献1] 。

米国医師会雑誌(JAMA [ジャマ])は臨床系医学学術誌としては四天王の一つ。信頼されている論文誌です。今回のJAMAネットワーク・オープンはその兄弟誌。

「ランダム化試験」という科学的検証

今回パヴルー氏たちは、「16時間ファスティング」と「カロリー制限」による減量作用を比較するランダム化試験を実施しました。

ランダム化試験:比較する各群に参加者をくじ引きで振り分ける。いずれかの群が有利になるような人為性を排除できるので信頼性は高い。

対象は米国在住の、2型糖尿病を持つ肥満の人たち75人です。

次の3群にくじ引きで割り振られました。

1)昼12時から夜8時までは飲食自由。ただし夜8時から翌日昼12時までの16時間は絶食。絶食中も水とノンエナジードリンクはOK(16時間ファスティング)。

2)食事時間制限はないけれど、摂取エネルギーを25%カット(カロリー制限)。

3)何の指示もなし(対照)。

「対照」群を置くのは「16時間ファスティング」や「カロリー制限」以外による体重変動の様子を観察するため。つまり「対照」群における体重変化を差っ引いた値が、「16時間ファスティング」や「カロリー制限」による真の減量作用。

食事制限なしの「16時間ファスティング」でほぼリバウンドなしの減量を達成

そして6カ月後・・・・、

「16時間ファスティング」群では「対照」群に比べ、体重が3.6%、言い換えると4kg弱減っていました

「カロリー制限」群では「対照」群と差なしです。下がってはいるのですが、統計学的に「偶然の域を出ない」(「有意」ではない)と判断されました。

統計学的に偶然ではない=有意。医学研究では差が「有意」でない場合、「差は存在しない」と考える。

万国著作権条約にのっとり引用
万国著作権条約にのっとり引用

注目したいのは「16時間ファスティング」群の体重は時間が経つに減り続け、明らかな「リバウンド」が見られない点でしょう。

対照的に「カロリー制限」による減量はある時期から頭打ちになってしまいます。

週1回なら「絶食破り」もOK

昼12時から夜8時までは好きに飲食できて、かつリバウンドなく痩せ続けられる。これが夜8時から翌日昼12時まで何も食べない「16時間ファスティング」の効果です。

魅力的ではありませんか?

その一方、「毎日夜8時以降絶食だと、友達と食事をする時間が・・・」という悩みもあるでしょう。

ご安心ください。週に1日なら「16時間ファスティング」を破っても大丈夫。上記の試験でも、平均して週に1回は指示に従っていなかったことが明らかになっています。それにもかかわらず、「16時間ファスティング」で上記のように痩せられました。

最後に

いかがでしたか?「正午から夜8時までは好きなように飲み食いして良いけれど、それ以外の時間は水とノンエナジードリンクだけ」という「16時間ファスティング」で痩せられたという論文のご紹介でした。

試してみた私の感想では、「16時間ファスティング」で目覚めが早くなりました。その分、朝の時間も有効に使えるようになった気がします。「お勧め!」です。

食事については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読みください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 「日内絶食」で肥満2型糖尿病患者の体重は減るが、「カロリー制限」では減らず [英語、全文無料] 。

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【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。10年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌などに寄稿。近年では共著で医師向け書籍も執筆。国会図書館収録筆名記事数は100本を超える。

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