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体重を落としたい?ミックスナッツで「痩せやすい脳」になる可能性。最新の論文で明らかに。

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

さあ今回も、最新の医学論文をご紹介します。

取り上げるのは「ミックスナッツは太り気味の人の脳や肝臓などに良い影響を与える」という臨床試験論文です。米国臨床栄養学雑誌という学術誌が12月20日に掲載しました [文末文献1]。この学術誌は米国栄養学学会の公式論文誌。信頼性は高いと考えられます。報告したのはオランダ・マーストリヒト大学のケビン・ナイセン氏たち。

どんな内容だったのか、簡単に見ていきましょう。

信頼性の高いランダム化試験で検討

臨床試験の対象となったのは、BMIが25を超えているけれど健康な60〜70歳の28人です。みなさん、オランダ在住です。

この人たちをくじ引きで「ミックスナッツ(60g/日)」を「食べる」群と「食べない」群に分けました(ランダム化)。そして16週間経過した時点で脳や肝臓などを調べます。検査が終わったら8週間の休暇後、最初とは逆の群に入って(クロスオーバー法)同じように16週間観察しました。

こうすることで28人全員でミックスナッツを「食べた時期」と「食べない時期」の比較が可能となりました。バイアスの入りにくい、きちんとした臨床試験と言えます。

その結果、以下の事実が分かりました。

1)ミックスナッツ長期摂取で脳におけるインスリン感受性(インスリンの効き)が改善。

インスリンはご存知の通り、膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンです。

一番有名な作用は、体内の細胞一つひとつをノックして、血中を流れるグルコース(血糖)を取り込むよう勧めて回る働きでしょう。その結果、血中のグルコースが減少し、血糖値が下がります [厚生労働省e-ヘルスネット] 。

そして脳では、それとは別に2つの大きな働きをしていると考えられています。

1つは食欲などメタボ関係の調節、もう1つが神経系の維持・調節です。

なので脳のインスリン感受性が下がると、太りやすくなったり認知症リスクが上がると考えられています。

その「脳のインスリン感受性」をミックスナッツが改善したのです。

それも特に「食欲などメタボ関係の調節」をつかさどる部位、特に「太り過ぎ・肥満」と関連する部位で「感受性」が良くなっていました

ナイセン氏たちも「メタボ関連疾患の予防に重要である可能性」があると指摘しています。ただし観察期間が16週間ということもあり「減量」そのものは観察されませんでした。

2)肝脂肪が減り悪玉コレステロールと血圧も低下

ミックスナッツの影響は、このように「痩せやすい脳」に変わる可能性だけではありません。もっと分かりやすい変化も観察されました。

その1つが肝臓に含まれる脂肪です。ミックスナッツ摂取で非摂取時に比べて相対的に15%、減っていました。16週間で肝脂肪がここまで減ったのです。

悪玉と呼ばれるLDLコレステロールも、ミックスナッツ摂取時には10 mg/dL近く下がっていました

血圧も同様です。診察室で測定した上の血圧(収縮期血圧)は、ミックスナッツ摂取時の方が5 mmHgの低値でした。

まとめ

いかがでしたか?

ミックスナッツを16週間食べ続けると、

1)「痩せやすい脳」に変わる可能性があるだけでなく、

2)肝脂肪やコレステロール、血圧が良くなる——

という臨床試験のご紹介でした。

観察対象が28名と必ずしも多くない点、減量効果は確認されていない点など、いくつか「?」もつく試験ですが、試験方法自体はしっかりしており、また肝臓などへの好影響はちゃんと観察されています。ミックスナッツを試す価値はありそうです。

今回試験で使われた「60g」という量は、小分けされて売られている量とほぼ同じ。間食にはちょうど良いのではないでしょうか?

ただし添加食塩には要注意。できれば食塩無添加にした方が良いでしょう。もしも仕事中なら、食塩無添加の方が手も汚れません。

ナッツについては次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読みください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. ミックスナッツは脳のインスリン感受性を改善する(ランダム化試験)[英語、全文無料]

英語論文ですが、無料翻訳サイトのDeepLなどを使ってぜひご自身でも読んでみてください!

【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも見解形成の「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。10年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌などに寄稿。近年では共著で医師向け書籍も執筆。国会図書館収録筆名記事数は100本を超える。

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