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ガンにならないための「7つの生活習慣」とは?10万人弱データで確認【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

5年後に生きている可能性は6割

2月4日は今年で24回目となる「ワールド・キャンサー・デー」

ガンによる死亡の減少、そしてガン患者の生活の質向上を目的としています [世界がん宣言2013] 。

とは言え、ガンで亡くなる患者さんが多いのも事実。

がん患者が診断から5年間生きている可能性を同世代のガンではない人と比べると、日本人では男女とも約6割という数字でした [国立がん研究センター がん情報サービス]。

5人に2人が天寿を全うできなかった計算になります。

治療は日進月歩の進歩を遂げていますが、やはりガンにならない、つまり予防が一番大切ということでしょう。

でもどうやって?

「ガンになりにくい生活チェックリスト」が存在

実はガン予防を目的としたチェックリストが、2018年に公表されています [文末文献1] 。

作成したのは「世界がん研究基金」(WCRF)と「米国がん研究財団」(AICR)。そのため「WCRF/AICRスコア」と呼ばれています。

中身を見ると驚くくらい単純です。チェックするのは次の7項目だけ。

WCRF/AICRスコア
   ・適正な体重を維持
   ・積極的に体を動かす
   ・全粒穀物、野菜、果実、豆類の多い食事
   ・ファストフードや脂肪、澱粉、糖の多い加工食品を控える
   ・赤身肉、加工肉の摂取を控える
   ・砂糖入り飲料を控える
   ・アルコールを控える

これだけです。

そしてそれぞれの項目を「まったく達成できていない」なら「0」ポイント、「達成」できていたら「0.5〜1」ポイント、「まあまあ」だったら「達成」の半分のポイントを加算して合算します。

ポイントが高いほど「ガンになりにくい」とされていました。

そして2013年11月末、この「WCRF/AICRスコア」が高いと本当に、「発ガン」リスクが低くなることが確認されたのです。

英国ニューカッスル大学のフィオナ・C・マルコムソン氏たちが、医学学術誌「BMCメディシン」誌で報告しました [文末文献2] 。

簡単にご紹介します。

「1ポイント」アップだけでガンになる確率は約1割低下

マルコムソン氏たちが解析したのは英国に住む9万5千人のデータです。「UKバイオバンク」という観察研究から、観察開始時の「WCRF/AICRスコア」が明らかだった人たちを抽出した人たちです。

観察開始から8年間の発ガン状況を調べ、観察開始時の「WCRF/AICRスコア」との関係を調べました。

その結果、「WCRF/AICRスコア」ポイントが高くなるほどそれだけ、発ガンリスクは低くなっていました。具体的には1ポイント高くなるだけで、発ガンの危険性は相対的に8%減っていたのです(0.92倍)。ポイントがもっと高くなればもちろん、発ガンの可能性はさらに低くなります。

日本人男性では最も死亡者の多い「肺ガン」(女性の死因でも2位) [国立がん研究センター がん情報サービス]だけで解析しても同様でした。1ポイント高値に伴う発ガンのリスク減少率は14%です(0.86倍)。

日本人女性の最多ガン死因である「大腸ガン」(男性では2位)も、ポイントが「1」上がれば発がんリスクは11%減っていました(0.89倍)。

いずれも「年齢」「性別」が与える影響を統計学的に除去した数字(年齢が上がれば発がん率は増え、がん種によっては男女で発ガンのリスクが異なる)。

このように「7つの生活習慣」を心がけるだけで、ガンになるリスクを減らせることが明らかになったのです。

最後に

いかがでしたか?

日常生活のちょっとした習慣に気を配るだけでガンになるリスクを減らせるという論文のご紹介でした。

あまりにフツーすぎて拍子抜けしてしまったかもしれません。でもこれが医学論文に示された「事実」。「専門家コメント」のように面白おかしくないのは仕方ないのかもしれません。

でも逆に考えれば、何か特別なことをしなくてもガンは予防できるということ。ここはまず、「ラッキー」と思っておきましょう。

ガンについては次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. ガン予防のための「WCRF/AICR」スコア
  2. 「WCRF/AICR」スコア高値で発ガン抑制

どちらも英語ですが無料で全文読めます。

DeepLなどの無料翻訳サイトを使ってぜひ、ご自身でも!

【注意】本記事は医学論文の紹介であり、研究結果の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。10年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌などに寄稿。近年では共著で医師向け書籍も執筆。国会図書館収録筆名記事数は100本を超える。

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