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必見アート「天使降りるを憚る処」西本剛己 個展@六本木/赤坂

Luna Subitowriter editor(東京都渋谷区)

アーティスト 西本剛己氏の個展「NEOLOGISM22303-22324 AWE(畏れ)」が11月26日(土)まで、六本木/赤坂のMARUEIDO JAPANで開催中です。

もうね、エントランスからただならぬ雰囲気。クールな黒い十字架に背骨。そしてどこにもつながっていない電話という、サイコホラーな事件現場のようなインパクト。

実は西本剛己氏は私の大学時代の先輩。学生時代は「タケミ(剛己)さん」とお呼びしていたので、ここでも敬意と親しみを込めて、タケミさんと呼ばせていただきますね。

タケミさんは年月を経てもイメージは学生時代のまんま。クレバーで快活で饒舌でどこまでもマニアック。しかも、個展の度に作品がパワーアップ&濃密化!

天使の足が舞い降りる瞬間…のようなドローイングが完成するまでの試行錯誤のスケッチも傍らに展示されおり、見比べるといとをかし。
天使の足が舞い降りる瞬間…のようなドローイングが完成するまでの試行錯誤のスケッチも傍らに展示されおり、見比べるといとをかし。

今回の個展は、昨年10月から約半年間かけてニューヨークのブルックリンで制作した作品を日本で仕上げた最新作揃い。メインのインスタレーション「天使降りるを憚る処」は、人類学者グレゴリー・ベイトソンの言葉に由来するそう。

焚書を思わせる焼けた書物とむしられた羽毛は、タケミさんの初期の作品にも見られたアイコン
焚書を思わせる焼けた書物とむしられた羽毛は、タケミさんの初期の作品にも見られたアイコン

モノリスのような真っ黒な幾何学的オブジェに突き上げられたベッド、裏に円周率がびっしり書かれたNYのサブウェイタイル、点滴から滴る水滴が描く円い波紋、横たわる牛骨…まるで謎解きのようなインスタレーションの中を分け入っていく感覚がたまりません。

これは奥の小部屋にある床の間風空間に合わせて制作したという「思考の滝」。タケミさんの十代の頃からの愛読書であるカミュの『シーシュポスの神話』が細く裂けてソーメンみたいになっているのですが、渋い掛け軸のように空間に馴染んでいるのがいとをかし。

ちなみに、タケミさんはこれらの作品のエスキースから綿密な設計図まで、1冊の黒革のノートに描き込んでいるそうで、ギャラリーで何気に見せていただいて驚愕しました。たとえるなら、あのレオナルド・ダ・ヴィンチの鑑文字ノートに匹敵する緻密さ。そのまま本として出版してほしいものです。ギャラリーでタケミさんに会ったら、ぜひ見せてもらってください。

MARUEIDO JAPAN
東京都港区赤坂2-23-1アークヒルズフロントタワー 1F
営業時間:11:00 - 18:00
休廊日:日曜日 月曜日 祝日

writer editor(東京都渋谷区)

奥渋在住20余年。旅、アート、インテリア、ウエルネス、映画、猫など多様なメディアに携わる文筆家。

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