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リカちゃんから呪い人形、ラブドールまで「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ展」松濤美術館【渋谷区】

Luna Subitowriter editor(東京都渋谷区)


渋谷区立松濤美術館で今夏開催中の「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」。前期と後期の両方を観てきましたが、なにげに攻めたキュレーション!

こちらがチラシ。まさに今展の多様な世界観を象徴するメインヴィジュアルですが、展示を見た後、再びこれを見て震えました。。

「私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」チラシより
「私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」チラシより

右は村上隆のキッチュなアートフィギュアですが、
左は平安京から出土した「人形代(ひとかたしろ)」

人形代とは災厄や病魔のケガレをお祓いするための身代わりや、他者に呪いをかけるよりしろ。つまり、この人形代には千年以上も前に込められた災厄やケガレや呪詛の念が宿っているわけです…。
展示室の入口付近にいきなりこの人形代が数体寝かされており、中には体がバッキバキにへし折られた人形代も…。

現代の神社でも紙の形代による祓いがありますが、平安時代の人形代たちから放たれる念のオーラはただ者ではなく。。おかげで、残暑で火照った身体がいきなりスーッと冷えました。

「私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」チラシより
「私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」チラシより

ちなみに、このチラシの隅には「※不可解な現象や霊的現象が発生しても今回の展示、イベントとは一切関りがありません」という但し書きがしっかりと。。

でも安心してください。
今展には実に魅力的で多様な人形たちが集結しています。雛人形や御所人形など日本古来の年中行事に関わる人形から、彫刻や美術作品に昇華した近現代作家たちの選りすぐりの名品も見ごたえあり。もちろん、リカちゃんラヴァ―感涙のリカちゃんハウスなども網羅。

大正から昭和初期に活躍した作家たちの人形も白眉です。竹久夢二の人形作品「ピエロ」はどこか儚く、中原淳一が自分のためにつくった美しい少年と青年の人形は、まるで古いフランス映画の一場面のようでした。
また、彫刻家・陽威二の尖ったサロメの隣には、陽に師事したフランス人形作家・川崎プッペの猫のようにしなやかな水着の女の人形が。多くの人たちがその官能性に吸い込まれるようにぐるりと一周しながら見入っていました。

さらに、夢二に憧れた彫刻家であり、グラフィックデザイナーであり、画家であり、人形作家でもあったマルチアーティスト河村 目呂二(カワムラ メロジ)と、妻の河村すの子の傑作人形も、おうちに連れて帰りたいほどかわいらしく!

こちらは河村すの子のモボ・モガ雛。イエロー和装のお洒落モガ雛と、寄り添う操り人形みたいなプチモボ雛のバランスがいとをかし。

展示物の撮影は不可なので、河村目呂二ライブラリィ発行『すの子の小さな変わりびなの世界』より掲載
展示物の撮影は不可なので、河村目呂二ライブラリィ発行『すの子の小さな変わりびなの世界』より掲載

こちらは河村目呂二のカメラ(左)と姿見(右)。しなやかな柳腰に艶っぽいうなじや指先、チャーミングな表情、そしてなんとも小粋な柄×柄のこなれた和装の着こなし。プリティすぎて、ずっとそばで眺めていたかったです。

展示物の撮影は不可なので、目呂二ライブラリィ発行『目呂二くさぐさ』より掲載
展示物の撮影は不可なので、目呂二ライブラリィ発行『目呂二くさぐさ』より掲載

ほかにも、幕末から明治にかけてつくられた人間そっくりの「生人形(いきにんぎょう)」や蝋人形たちがまつ毛の1本1本まであまりに生々しく、うっかり会場の監視スタッフまで人形と間違って苦笑されてしまいました。

また、彫刻家が挑んだアートなマネキンや、四谷シモン独特の耽美な球体関節人形、村上隆の現代アートなフィギュアなど、現代の多彩なヒトガタも、生人形や蝋人形と同じフロアに並ぶと、なかなか異様なインパクトでした。

さらに、衝撃だったのが、18歳以上は閲覧禁止の人形たち。おっぱいのボタンを押すとヌードが見られる地方の秘宝館で人気だった仕掛け人形や、イノセントな妖しい美貌のラブドールたち。。どちらも間近に対峙するのは初めてだったので、まぢまぢと凝視してしまいました。

ぜひお見逃しなく!
もし見逃した方も、図録の内容が充実しているので、松涛美術館のオンラインストアでぜひ。

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私たちは何者?ボーダレス・ドールズ
The Infinite World of Japanese Dolls: From Religious Icons to Works of Art
2023年7月1日(土)~2023年8月27日(日)
前期:7月1日(土)~7月30日(日)
後期:8月1日(火)~8月27日(日)
渋谷区立松濤美術館
東京都渋谷区松濤2-14-14
TEL:03-3465-9421
入館料一般1,000円(800円)、大学生800円(640円)、高校生・60歳以上500円(400円)、小中学生100円(80円)※( )内は団体10名以上及び渋谷区民の入館料※土・日曜日、祝休日及び夏休み期間は小中学生無料 

*本展覧会の出陳作品には、18歳未満の方(高校生を含む)がご覧になれない作品が一部含まれます。あらかじめご注意くださいますようお願い申しあげます。

*会期や開館時間、イベント等変更する場合があります。最新情報は当館ホームページ等でご確認ください。

writer editor(東京都渋谷区)

奥渋在住20余年。旅、アート、インテリア、ウエルネス、映画、猫など多様なメディアに携わる文筆家。

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