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父が亡くなりました。母は認知症です。亡父の自宅は自分が相続できますか。

高齢化と共に増えている認知症。2025年には65歳以上の5.4人に1人が認知症になると予測されています。

このような状況で実際に増えているのが相続人に認知症の方がいるケース。

お父様が亡くなって自宅を相続登記したいけれども、お母様が認知症と診断されている場合、どうすればよいのでしょうか。

相続人に認知症の方がいる場合は遺産分割協議ができない

例えばお父様が亡くなり、相続人は認知症のお母様とお子様が2人だとしましょう。遺言書はありません。

子供のうち1人は遠方に住んでいるので、実家の近くに住んでいるもう1人が実家を相続したいとしています。

通常であれば、遺産分割協議をすることによって亡くなったお父様名義のご自宅を相続人の中の1人の名義にすることは可能です。しかし、相続人の中に認知症の方がいる場合、この遺産分割協議をすることができません。

認知症の方は程度にもよりますが、意思能力が無いと判断されると法律行為ができなくなってしまうからなのです。

相続人全員の名義にするなら相続登記は可能

相続人の中の1人の名義にすることはできませんが、相続人全員の名義にすることは可能です。この場合、相続人はそれぞれが持つ法定相続分での共有となります。

ただし、この方法はおすすめしません。

なぜなら以下の理由があるからです。

  • 認知症のお母様が共有者の1人になるため自由に処分ができない。
  • 共有者の1人である子供が亡くなった場合、その持分に対して更に相続が発生し、権利関係が複雑になる。

お母様に成年後見人を付ければ遺産分割協議ができる

お母様が認知症だからこそ、施設への入所費用を賄うために実家を売りたいと考える方もいるでしょう。

その場合、お母様に成年後見人をつけることが解決可能な1つの方法です。

成年後見人とは、認知症のお母様の代わりに様々な契約ごとを代理したり財産の管理をする人の事で、裁判所に申し立てて選んでもらいます。

裁判所の判断で成年後見人として身内の方が選ばれることもありますし、司法書士などの専門家が選ばれることもあります。

成年後見人を申し立てるかは慎重に検討しよう。

お母様に成年後見人が付くことによって、遺産分割協議ができるようにはなりますが、以下のようなデメリットがあります。

  • お母様が亡くなるまで成年後見人が付く
  • 成年後見人に対して報酬が発生する(お母様負担)
  • お母様に不利になる遺産分割協議はできない

結論として、お父様が亡くなったときにお母様が認知症だとすると、遺産分割協議ができないためお子様ひとりの名義にすることは簡単ではないと言えるでしょう。

これから相続登記が義務化されますが、3年の期限が設けられており正当な理由があれば過料は課されない予定となっています。

そのため、しばらく様子を見るというのも1つです。なお、このような事態を回避するためには、生前にお父様に遺言書を書いておいてもらうことが有効です。

ちなみに、実家の名義変更をしなくても固定資産税は相続人代表者に請求されます。相続登記をしなくても固定資産税はかかるということを覚えておきましょう。

司法書士とは不動産などの大切な権利を守るための専門家です。司法書士の視点から不動産、相続、終活を中心にわかりやすく役に立つ記事をお届けします。AFP2級ファイナンシャルプランナーでもあり、行政書士、宅建士の有資格者です。

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