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【上田市】遠いまちで発見した上田の魅力 注目をあつめる上田の紬 手織り紬 小岩井紬工房

もりのりこ地域移住系ライター(上田市)
撮影場所:イトノサキ(東京・南青山)

昨年の暮れに東京・南青山でひらかれた上田紬の作品展。

ハイブランドの店やアートギャラリーが並ぶ文化の中心地で、上田紬の独特な美しさが注目をあつめていました。

近くにあると気が付かない上田の魅力。

織物職人小岩井カリナさんに、上田紬についてのお話をうかがいました。

(取材日:2023年12月)

◆東京で知った上田紬

手織り上田紬・小岩井カリナ作品展~雪待月から春待月へ~

外苑から西麻布にぬける閑静なエリアにあるギャラリーで開かれた作品展 撮影場所:イトノサキ
外苑から西麻布にぬける閑静なエリアにあるギャラリーで開かれた作品展 撮影場所:イトノサキ

会場で反物を広げてみせてもらっていた女性は、

紬ならではの控えめな光沢がなんとも美しく、いつまでも眺めていられます、と感激した様子。

紬と言えば大島紬、くらいしか知らなかったが、目の前で広げてくださった上田紬が、作家さんの手によって大切に慈しみ育てられたものであることはすぐに理解ができたそうです。

紬をつかった小物雑貨 作品展にて
紬をつかった小物雑貨 作品展にて

着物は着るもの

仕立て上がると立体的になり、そこに光があたり絹に表情がうまれる。

そして着る人の立ち居ふるまい、所作のひとつひとつを含めて着物の美しさができあがる。

光があたると生地に表情がうまれる
光があたると生地に表情がうまれる

着物というとつい身構えてしまって面倒が先に立ち、遠ざけてしまうと言っていた方も、はじめて知った上田紬の美しさに魅せられ、

実家に置き去りにしていた母や祖母から受け継いだ着物たちを思い、そろそろ年齢的にも袖を通してみようかな、と話していました。

上田紬のステキ!

とても軽くて丈夫なのが紬のよさ。

上田紬はとくに丈夫で、裏地を3回かえられると言われています。

色とりどりの反物 上田市の小岩井紬工房にて
色とりどりの反物 上田市の小岩井紬工房にて

反物から着物に仕立てて、着られなくなったらほどいて反に戻す。

そしてまた仕立て直す。

まさにSDGs!

◆長野で知る上田紬

手織り上田紬 小岩井紬工房

小岩井紬工房の入口
小岩井紬工房の入口

さっそく上田にもどり、上塩尻にある小岩井紬工房をたずねました。

養蚕で栄えた時代の名残がのこる上塩尻の町並み
養蚕で栄えた時代の名残がのこる上塩尻の町並み

工房があるのは、蚕種の都として栄えた時代をしのぶ屋敷が立ち並ぶ一角。

細い路地からは先日紹介した兎峰の姿もみえます。

おとなの社会見学 

機を織る工房内
機を織る工房内

染色、整経、機織りの手仕事をする工房は無料で見学(要予約)することができます。

今回は、東京・南青山の作品展を手掛けた小岩井カリナさんから丁寧な説明を受けました。

長い工程を経てしあがる糸
長い工程を経てしあがる糸

工房では、糸を練って、糸を巻く、染める、のばして、束にする・・・とメモしきれないほどの工程を手仕事で行っています。

糸を巻く機械
糸を巻く機械

1 反分の糸をまくだけでも半日染色から 1 反織り終わるまで3、4か月ほどかかることもあるそうです。

手織りへのこだわり

機織り機に張られた縦糸に横糸をとおす
機織り機に張られた縦糸に横糸をとおす

小岩井紬工房は昭和時代に蚕種業から手織り紬の生産に移行し、今日まで手織りにこだわってきました。

高度成長期、紬が飛ぶように売れた時代。

周囲が機械織りにシフトする中、品質にこだわり手織りを貫いた初代。

その思いは今も変わらず引き継がれています。

織り機にはられた縦糸
織り機にはられた縦糸

手織りと機械織り。その違いは着るとわかるそうです。

着る人、使う人のために手織りにこだわる。

機織り体験で知る手織り

小岩井紬工房では、機織り体験(有料・要予約)も開催しています。

体験中は作業に集中し時を忘れる
体験中は作業に集中し時を忘れる

わたしも実際に機織り体験をさせてもらいました。

ちょっとした力の加減でムラができるので、ひと織りごとに気持ちが入ります。

こうして魂をこめて織りあげられるのが手織り紬なのかもしれません。

花瓶敷の織り体験常時予約を受け付けています。

1日かけてストールを織りあげる「織りの休日倶楽部」は3月頃から公式LINEで予約受付を開始します。全国から参加者が集まるので募集情報をみたら早めに予約したほうが安心です。

織り体験 花瓶敷
所要時間:約40分
料金:3,800円
予約:電話 もしくは 公式サイトから

ストール織り1日ワークショップ 織りの休日倶楽部
所要時間:1日
参加費:12,000円(おいしいお弁当とおやつ付き)
予約:公式LINE

◆小岩井カリナさんについて

ヨーロッパ、東京で気付いた伝統工芸のたのしみ

幼い頃から身の回りにあった紬。

小岩井カリナさん 画像提供:小岩井紬工房
小岩井カリナさん 画像提供:小岩井紬工房

そもそもは家業を継ぐつもりはなく、東京で別のキャリアを積みヨーロッパ各地をめぐったカリナさん。

普段の生活で伝統工芸を楽しむヨーロッパの暮らしの中で、幼い頃の光景を思い出し上田紬の魅力を再認識したそうです。

そして紬の世界に入る決意をされました。

鮮やかな色つかいが印象的なカリナさんの作品。伝統工芸は自由でたのしいと教えてくれる 撮影場所:イトノサキ(東京・南青山)
鮮やかな色つかいが印象的なカリナさんの作品。伝統工芸は自由でたのしいと教えてくれる 撮影場所:イトノサキ(東京・南青山)

遠くのまちで上田紬の魅力を再発見し、美しい織物で多くの人を魅了し続けるカリナさん。

「織れば織るほど、良いものを織りたいという欲がでます。」

数々の賞を受賞しても満足することはないそうです。

受け取ったこと 伝えること

上田に戻ってから受け取ったことがたくさんある。

そして、それを次に伝える仕事もある。

現在は弟の小岩井良馬さんと姉弟で工房を盛り立てている。

地元のリンゴや上田城の千本桜で染めた糸をつかうなど 継承した技術をベースにあたらしい感覚で商品を開発している
地元のリンゴや上田城の千本桜で染めた糸をつかうなど 継承した技術をベースにあたらしい感覚で商品を開発している

大切に守ってきた手織りという手仕事。

着物という文化。

シルク、紬というかけがいのない素材。

上田紬、小岩井紬工房という伝統。

「わたしたちの世代が受け取った仕事はたくさんあります。」

工房内のショップではお土産やギフト向けの小物もならぶ
工房内のショップではお土産やギフト向けの小物もならぶ

たくさんのことを細身のからだにさらりと背負い、伝統を誇示するだけでなくあたらしい感覚でやわらかにつむぐ小岩井カリナさんの作品は工房内のショップで購入できます。

紬とレザーのコンビネーションが新鮮なショルダーバッグ
紬とレザーのコンビネーションが新鮮なショルダーバッグ

◆さいごに

東京・南青山の作品展で上田紬を知ったという女性の言葉が心に残りました。

時間にしてわずかながらの上田紬との出会いの時間でしたが、私の中に確かに光る何かを残してくれた、この出会いに感謝したいです。

人と出会うことでひろがる世界は、糸と糸をあわせて織りあげる紬とどこか似ています。今回の取材でも出会いに恵まれ、気づきや学びが多くありました。

近くに住んでいると気がつかないこともありますが、上田にはたくさんの魅力があります。

その美しさに魅了され県外や国外から訪れる人も多い小岩井紬工房の手織り紬もそのひとつ。

上田の紬との出会いに感謝し、あたらしい年もひとつひとつ出会いをつむいでいきたいと思います。

手織り上田紬 小岩井紬工房
住所:〒386-0042 長野県上田市上塩尻40
電話:0268-22-1927
営業時間:午前10時から午後5時ころ 
定休日:問い合わせ

公式サイト:手織り上田紬 小岩井紬工房
インスタグラム:koiwai_tsumugi
公式LINE:小岩井紬工房

地域移住系ライター(上田市)

東京から長野に拠点を移してあちこち巡るヒト。 豊かな自然、伝統とあたらしさ、独特の上田カルチャーに惹かれ、日々過ごしています。 ヨソから来たからこそ発見できる上田の魅力。 ほんとうに伝えたいことだけをていねいに記事にします。

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