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【川崎市川崎区】地元プロボノ団体と老舗久寿餅店が挑む20年ぶりの新商品開発プロジェクト

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人とのつながりから始まった川崎大師での新たな挑戦

 川崎大師の定番土産といえば、弾力があるもちっとした食感のお餅に黒蜜ときな粉をかけた和菓子「久寿餅(くずもち)」。実は、和菓子の中で唯一の発酵食品なのだそうです。

 そんな久寿餅を川崎大師山門前で製造販売する老舗和菓子店「住吉」地元若者によるプロボノ団体「大師ONE博(だいしわんぱく)」を中心とした有志による新商品開発プロジェクト「Hack-O(ハッコウ)プロジェクト」のプラン発表会が、9月23日に閉店後の住吉店舗内にて行われました。

大師ONE博
大師地区を拠点に活動する地域団体
「大師のまちなかで、大人もこどももわんぱくできる、ぼくらの万博を創る」をコンセプトに地域を盛り上げる
Facebookページ:https://www.facebook.com/daishionepark/

住吉店舗内でのプラン発表会の様子。
住吉店舗内でのプラン発表会の様子。

老舗企業と地元若者たちのつながり

 ことの発端は昨年11月に住吉社長の森 明弘さんが大師ONE博の共同代表である杉谷 昌彦さんにある相談をもちかけたことがきっかけでした。

 大師ONE博は、川崎大師エリアに住む子育て世代を中心とした地域団体。メンバーは本業で培った様々な業界でのノウハウを地域に還元し、自分たちの実現したい子育て環境づくりを目指しています。これまでも山門前の通りで騒音の出ない音楽イベント「サイレントディスコ」を開催したり、今年の年始には参道の人通りをモニタリングした動画を配信したりするなどの実績があり、参道に店舗を構える住吉との関わりが深く、これまでの関係性から相談に至ったとのことです。

川崎大師山門前で開催されたサイレントディスコの様子。音楽は参加者が装着した無線ヘッドフォンに届くという仕組み。
川崎大師山門前で開催されたサイレントディスコの様子。音楽は参加者が装着した無線ヘッドフォンに届くという仕組み。

 「新型コロナウィルス感染症の影響による参拝客の減少で、繁忙期である三が日の売上が激減。すぐに危機的状況を迎えるという訳ではないものの、今のうちから次の手を打っておきたい」と森さんは語ります。

 地域企業の事業開発やサスティナブルシフトを支援する会社に務める杉谷さんは本業の知見から、「デザイン経営」の手法での新商品開発を提案しました。

デザイン経営とは、
2018年から経済産業省と特許庁が推進する企業の競争力を高めるため、ブランドの構築やイノベーションの創出にデザインを活用する経営手法です。商品・システム・サービス開発のみならず、企業の経営戦略、組織や制度設計、教育、地域の課題解決など様々な領域において考え方や取り組みが活用されている「人間(ユーザー)中心設計」は、根本的な課題を発見し、新たな発想を用いた解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返し、生み出します。

 「たとえば東京インターナショナル・ギフト・ショーでは、毎年数万点の新商品が発表されている。『新しい』『おいしい』だけではすぐに飽きられてしまう。長期的なファンになってもらうためにも、企業や作り手の『実現したい未来』や『大切にしている価値観』に共感してもらえるようにメッセージから商品デザイン、店舗内装、接客態度など総合的な視点から『ブランドデザイン』を設計する必要がある。同時に『いいものを作れば売れる』という作り手都合な発想からの脱却が必要。人々の生活をじっくり観察してお客様本人ですら気付いていない困りごとを見つけ出し、試行錯誤を繰り返しながら製品やサービスを生み出すという『デザイン思考』に切り替えていかなければならない。アップルのiPhoneや任天堂のWiiもそのようにして誕生した。」と、杉谷さんはデザイン経営の可能性について話します。

特許庁Webサイトより
特許庁Webサイトより

「デザイン経営を通じて、大企業による効率重視の経営により結果的に画一化されてしまった地方の多様性の保存と復活、地域と地元企業との共存共栄による地方創生に貢献したい」

と今回のプロジェクトへの意気込みも語ってくれました。

大師ONE博共同代表・杉谷昌彦さん。
大師ONE博共同代表・杉谷昌彦さん。

 住吉では20年近く新商品が出ていない現状があり、社員一人ひとりに「新しいものを生み出す文化」を根付かせたいという森さんの思いもあったことから実施に向けて動き始めることになります。

 デザイン経営による商品開発では多様な視点からのアプローチが欠かせないことから、大師ONE博の杉谷さんが、住吉社員だけでなく、地元に関わる社会人に対してプロジェクト参加を呼びかけました。さらに杉谷さんの関係から、小山 薫堂さんの元で企画を学び、北海道の洋菓子店「ルタオ」が運営する生アイス専門店「GLACEL(グラッシェル)表参道店」をはじめ数多くの食プロデュースを手がけ、自らも青森県弘前市「弘前れんが倉庫美術館」併設のカフェ・ショップを運営するFoodniaJapan代表・松田 龍太郎さんがアドバイザーとして参画しました。

FoodniaJapan代表・松田 龍太郎さん。
FoodniaJapan代表・松田 龍太郎さん。

「Hack-O(ハッコウ)プロジェクト」発足

 6月9日に開催したキックオフ会には「NEC玉川プロボノ倶楽部」の賛同もあり、総勢18人が参加し、杉谷さんによる趣旨説明のあと2チームに分かれてそれぞれのチーム名やチームでプロジェクトを進めていく上でのルール決めなどを行いました。

 あわせてプロジェクト全体の名称も参加メンバーから募集し、投票で「Hack-O(ハッコウ)プロジェクト」に決定。「発酵」「20年間新商品ゼロの過去を断ち切る(=hack 0(ゼロ))」をかけ合わせた造語にメンバーの多くが共感しました。

 第2回目は森さんの案内で住吉の工場見学。創業104年の歴史や製法・材料へのこだわりなどを学び、第3回目から第4回目のグループワークで、住吉として大切にしたい価値観や目指したい未来像、活かしたい自社の強み、顧客イメージ、商品アイデアなどを検討しました。オンライン会議ツールやチャットツールを活用してミーティングをしたり、実際にデパートや人気店を訪れて市場調査を行ったりと、運営側で設けたグループワークの時間以外に16回も集まったというチームもありました。

工場見学では生地づくりを体験。
工場見学では生地づくりを体験。

製造ラインを見学。機械化されても人の手による微調整が欠かせない。
製造ラインを見学。機械化されても人の手による微調整が欠かせない。

2チームによる新商品発表会

 最終回となるプラン発表会では、パティシエで数多くの洋菓子ブランドの商品開発に携わる中達 敬治さんの協力のもと、それぞれのチームの思いやアイデアを込めた試作品をお披露目しました。4ヶ月間で徹底的に議論したプランのプレゼンテーションです。

パティシエ・中達 敬治さん。
パティシエ・中達 敬治さん。

 最初の発表は「イエローロケッツ」チーム。チーム名は住吉のブランドカラーである黄色と新境地を開拓するロケットのイメージから命名。住吉の若手社員である田辺 瑞季さんが発表します。

住吉社員・田辺 瑞季さん。
住吉社員・田辺 瑞季さん。

 ブランドメッセージは「貴方が大切な人とつくる、倖(しあわ)せなひととき」。あえて「倖せ」という当て字を使ったのは「人と人との幸せ」であり漢字本来の「思いがけない幸せ」という意味を込めたかったそうです。

 商品名は「あんさんぶる」。短期間で試作品を仕上げたため食感に課題があったものの、試食では「一般的な和菓子はパクパクと食べられないが、2個3個と口に運びたくなるクセになる味」と好評でした。

イエローロケッツチームの試作品「あんさんぶる」。
イエローロケッツチームの試作品「あんさんぶる」。

 続いての発表は「松竹梅」チーム。チーム名の由来はチームメンバーの名字に松・竹・梅が揃っていたから。こちらのチームの発表は大師ONE博メンバーの松崎 正義さんが行います。

大師ONE博メンバー・松崎 正義さん。
大師ONE博メンバー・松崎 正義さん。

「あなたと、心躍る、笑顔溢れる時間を」をブランドメッセージとし、新型コロナウィルス感染症や地震、台風など大変なことも多いけれど、助け合うためにも楽しいひとときを提供したいという思いが込められているそう。新商品開発では、久寿餅製造で長年大切にしてきた「食感へのこだわり」をもとに、オシャレなイメージの全く新しい商品を目指しました。

 住吉社員の小林龍さんが「心躍る食感」には至っていないと悔しさを滲ませた一方、アドバイザーの松田さんや中達さんは「新しい食感として売り出せるかもしれない」と期待を込めます。

松竹梅チームの試作品。
松竹梅チームの試作品。

「住吉は参拝客のよりどころとして、お土産として買って帰ってもらってワクワクしていただきたいという思いで続けてきた。今回、それぞれのチームが同じ思いでプランを考えてくれたことが何より嬉しかった。」

 最後はイエローロケッツチームのメンバーでもある住吉社長の森さんによる講評の際、笑顔を見せながら語ってくれました。加えて「今後は今回参加したメンバー以外の社員も巻き込んでいきたい」と今回のプロジェクトに手応えを感じた印象でした。

住吉代表取締役社長・森 明弘さん
住吉代表取締役社長・森 明弘さん

 住吉の新商品開発の第1段階はこれにて終了となりますが、今後の展開に今から期待が高まります。

地元での共創でプロジェクトを経験して

 最後に、新型コロナ禍という時代においても、地域住民同士のつながりにより新たな価値を生み出すこのような活動が今後の様々な場所での広がっていくことを期待して、新たな試みに挑戦した本プロジェクト参加メンバーからのコメントを紹介します。
(写真撮影時のみマスクを外しています。)

「イエローロケッツ」チームのみなさん。
「イエローロケッツ」チームのみなさん。

・横尾 和敏さん(住吉:製造部門)
 リモート会議など、私にとってはじめてのことだらけだったので、ほぼ全てが勉強になっています。

・森 明弘さん(住吉:代表)
 外部の方が参加してくれたおかげで、客観的な意見を拾うことができました。今まで社員が製品の開発に関わる事がなかっただけに、新規事業に取り組むスキルが学べました。

・新垣 康治さん(大師ONE博:NEC玉川プロボノ倶楽部)
 共創でプロジェクトを進める事ができたことがよかったです。住吉メンバーのいいものを作っていきたいという姿勢に心から協力していきたいと感じました。

・工藤 通子さん(住吉:販売部門)
 現在の生活の中ではなかなか出会わない分野の方々と交流でき、社内でも新たな才能が開花する子を見ることができて、こういう形がない限り、知らないで終わるはずだったので、このプロジェクトが立ち上がった事がよかったです。

・田辺 瑞季さん(住吉:販売部門)
 社会人としてのチーム活動のやり方を知れてよかったです。

・浅香 晋介さん(大師ONE博:NEC玉川プロボノ倶楽部)
 価値観、バックグラウンドが異なるメンバーで、一つのものを作る過程に参加できたこと、日頃自分が仕事で携わらない方面の人と意見を交わせたことがよかったです。

「松竹梅」チームのみなさん。
「松竹梅」チームのみなさん。

・梅元 冬樹さん(住吉:製造部門)
 プロジェクトメンバーによる商品開発に対する熱い思いを感じられたことや、いろんな人の考え方やあらゆる角度から視点を、感じられたことがよかった!お菓子やお菓子に限らず、現在市場で売られているものから流行りを感じ取り、それを開発した人たちの思いを普段でも気にするようになりました!

・梅野 陽子さん(大師ONE博:デザインプロデューサー)
 ブランドビジョンを出すための武器の洗い出しでは、工場見学をはじめ、スタッフお一人お一人の想いを知ることができ、あらためて、住吉の人材のすばらしさを感じ、お客様への思いに感銘を受けました。

・松崎 正義さん(大師ONE博:コンサルタント)
 友人の地元であり、且つ川崎大師を盛り上げるきっかけとなれるようなプロジェクトに参加ができ光栄でした。

・加藤 奏さん(大師ONE博:NEC玉川プロボノ倶楽部)
 試作品1つ目までこぎつけることができてよかったです。

・小林 龍さん(住吉:販売部門)
 他会社の方々との交流は、自身のスキルアップに繋がりました。

・竹野 和弥さん(住吉:販売部門)
 他社の人の意見を聞けるのは貴重な体験で、自分たちだけでは出なかった意見を出せたのはよかったと思います。

川崎大師 山門前 住吉
 住所:〒210-0816 神奈川県川崎市川崎区大師町4−47
 電話:044-288-4437
 公式HP:https://kuzumochi.com/
 アクセス:京急大師線川崎大師駅より徒歩5分

大師ONE博
 大師地区を拠点に活動する地域団体
 「大師のまちなかで、大人もこどももわんぱくできる、ぼくらの万博を創る」をコンセプトに
 地域を盛り上げる
 Facebookページ:https://www.facebook.com/daishionepark/

*写真提供:「Hack-Oプロジェクト」より

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