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【川崎市】家庭の生ゴミは資源。生ごみたい肥を市内の畑へ。エコワリング川崎のイベントで循環の仕組を体験

なかじまひろこライター兼地域クリエイターズ(川崎市)

本日1月29日、第10回生ごみリサイクル交流会がエポック中原で開催されました。定員80名は満席で、市民の関心の高さがうかがえます。※新型コロナウィルス感染症拡大の影響もあり、期日前に締め切りとさせていただいたとのことです。第2部は、武蔵小杉東急スクエアとヨネッティー王禅寺のコミュニティガーデンで生ごみたい肥を持ち寄り、野菜を育てて食べるフードサイクルに取り組む「エコワリング川崎」の実践報告でした。

「エコワリング川崎」とは、家庭の生ごみを減量するため、各家庭でコンポストを利用して生ごみたい肥を作り、花や野菜を育てるために活用したり、市内の有機農業をしている畑へ寄付してもらう取り組みです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。→「【川崎市中原区】エコワリングって何?武蔵小杉の駅ビルの野菜畑から市役所に問い合わせてみました

エコワリング事業の推進と市民への周知活動として、昨年11月27日(土)に共助型フードサイクルイベント「エコワリング農園体験デーin福祉交流農園」が開催されました。内容はコンポスト講座と野菜の収穫体験です。参加者は、午前、午後と各回10組(1組5名)、参加費用は1組1500円でした。私が参加した午後の部は、お子さん連れの若いご夫婦から年配の方、コンポスト未経験から、既に何年もコンポストでたい肥づくりを実践している方など様々でした。

また、テントでは無農薬野菜や野菜の加工品も販売されていました。どの野菜も葉っぱが生き生き新鮮で、大変立派です。畑の土づくりの大切さがひと目でわかります。

健康な土壌で育った栄養豊富な旬の新鮮野菜が販売されていました。こういう野菜を毎日食べられたら、病気知らずで元気に過ごせそうです
健康な土壌で育った栄養豊富な旬の新鮮野菜が販売されていました。こういう野菜を毎日食べられたら、病気知らずで元気に過ごせそうです

イベントの内容は、1.エコワリング事業の説明 2.LFCコンポスト講座 3.コンポストでできたたい肥を畑にまいてみよう 4.野菜(大根)の収穫体験 でした。

LFCコンポスト講座は、地球の環境問題からLFCコンポストの使い方まで、充実した内容でした。絵を使ったわかりやすい説明で、子どもたちも集中して聞いていました。今、地球の健康は損なわれ、生物の多様性も無くなりつつあります。2020年8月にWWFから出された地球の診断書によると、今後5年間の人間の活動で地球の寿命が変わる大切な時期だそうです。環境に対して、今自分ができることをしていかなければ、と危機感を覚えました。

ローカルフードサイクリング株式会社の代表たいら由以子さん。自然の仕組みを図でわかりやすく説明してくれました。LFCコンポストは地面の灰色のバッグ型。長テーブルに、その他のコンポスト容器を展示しています
ローカルフードサイクリング株式会社の代表たいら由以子さん。自然の仕組みを図でわかりやすく説明してくれました。LFCコンポストは地面の灰色のバッグ型。長テーブルに、その他のコンポスト容器を展示しています

昭和の高度成長時代に普及した化学肥料は、土壌に住んでいる小さな生き物や微生物たちを劇的に減少させてしまいました。その結果、土壌は栄養状態が悪くなり、病んでしまいました。「昔の野菜は味が濃かった」とよく聞きますが、その理由は土にあったのだ、と腑に落ちました。

生ごみたい肥は微生物活動で分解され、土に施すと土壌の健康を回復していきます。健康な畑には栄養豊富な農作物が育ち、食べると健康になります。調理した野菜の皮などを、また生ごみたい肥にして畑にまき、野菜を育てる循環の仕組みは、取り組む人が増えるほど持続可能性が高まります。また、生ごみの約80%は水分なので焼却コストが約1兆円かかるそうです。

生ごみをコンポストでたい肥化して畑に寄付することで、コスト削減になると同時に、焼却やそれにかかるしくみで出るCO2の削減にも繋がるので、SDGsの目標達成にも貢献できます。

コンポストとは、微生物の力で生ごみを分解して、たい肥を作る容器のことです。

コンポストは色々な種類があります。長机の上には電動以外のコンポストの展示があり、スタッフの方に説明をしてもらえました。
コンポストは色々な種類があります。長机の上には電動以外のコンポストの展示があり、スタッフの方に説明をしてもらえました。

LFCコンポストは、1.5カ月~2ヵ月、1日300~400gの生ごみをバッグの中の基材に混ぜ、その後3週間熟成してたい肥を作ります。発酵中のたい肥の展示や、量別の生ごみなど豊富な展示や、丁寧な質疑応答もあったので、初めてでも簡単に取り組めそうだと思えたのではないでしょうか。

その他、長テーブルの上に段ボールタイプやバケツ型など様々なコンポスト容器の展示があり、質問もできたので、参加者は色々な種類のコンポストを知ることができました。

発酵中のたい肥の展示。手をいれると温かさを感じられます
発酵中のたい肥の展示。手をいれると温かさを感じられます

段ボールコンポストに1日に入れられる生ごみの量。野田琺瑯のMサイズ深型の容器いっぱいくらい。生ごみは、ひとくち大に切ってコンポストへ投入。このままキッチンバサミを縦にいれて、ザクザクと切ればOKです
段ボールコンポストに1日に入れられる生ごみの量。野田琺瑯のMサイズ深型の容器いっぱいくらい。生ごみは、ひとくち大に切ってコンポストへ投入。このままキッチンバサミを縦にいれて、ザクザクと切ればOKです

説明のあとは生ごみたい肥を畑にまきました。生ごみの影も形もなく、ニオイもありません。

生ごみがこんなたい肥になるなんて。自然の菌や発酵の力の素晴らしさを感じました
生ごみがこんなたい肥になるなんて。自然の菌や発酵の力の素晴らしさを感じました

生ごみたい肥は耕運機で混ぜて3週間熟成させると、栄養豊富な畑になるそうです。

手前が耕作中の畑。たい肥を混ぜて熟成させます
手前が耕作中の畑。たい肥を混ぜて熟成させます

そのあとの野菜の収穫体験では、立派な大根を収穫しました。

無農薬でも虫食いがなく、生き生きときれいな大根の葉でした。葉はこまかく刻んで炒めてかつおぶしと醤油で味付けし、全ておいしくいただきました。
無農薬でも虫食いがなく、生き生きときれいな大根の葉でした。葉はこまかく刻んで炒めてかつおぶしと醤油で味付けし、全ておいしくいただきました。

川崎市環境局生活環境部減量推進課の安川宏太さんにお話を伺いました。

Q 川崎市の生ごみリサイクルの取り組みと、エコワリング川崎事業を始めたきっかけを教えてください。

A. 川崎市では平成14年から生ごみリサイクルを推進し、川崎市民へ生ごみ処理のコンポスト購入時の助成金制度を設けていました。しかしマンションなど集合住宅にお住まいの方が多く、作った生ごみたい肥を活用する先がない等の現状がありました。そこで生ごみの減量化から資源化へ舵を切り、生ごみたい肥の出口戦略として、エコワリング事業がはじまりました。

Q 作ったたい肥はどこに持っていけば良いのですか?

A 現在は市内9か所に生ごみたい肥を受け入れてくれる協力農園があります。これらの農園は、以前から生ごみたい肥リサイクルに取り組まれている農園です。今後もっと受け入れ先を拡大できればと思っています。

Q コンポストの助成金についておしえてください

A 助成金の申請枠230万円は、5月までの申請で一度予算が無くなってしまったため、再度予算を獲得した10月から、上限2万円を1万円に減額し、生ごみコンポスト化容器・密閉容器については、年間4基まで申請可能としました。

Q 川崎市民へのメッセージがあればお願いします

A コロナ禍で在宅時間の増加に伴い、出前やテイクアウトで家庭の生ごみも増加しています。今までコンポストを利用していたのは高齢の方が多かったので、今回のような、生ごみたい肥で作った野菜を収穫する、という資源循環を体験できるイベントをきっかけに、若い世代が興味を持っていただけると嬉しいです。エコワリング事業はTwitterやインスタグラムなどのSNSで情報発信をしているので、是非ご覧ください。

百聞は一見に如かずで、講座で現状の問題と生ごみたい肥の役割を理解した上で、実際に畑にたい肥をまき野菜を収穫する体験できたので、生ごみは資源として再利用し循環できることが実感できました。家族で参加できると、家族みんなで意識が高まり協力して取り組んでいけるので、このような体験型のイベントが今後も開催されると、エコワリングの参加者が増えていくだろうと感じました。

info : エコワリング川崎 (インスタグラム)

ローカルフードサイクリング株式会社 (LFCコンポスト)

生きている地球レポート

ライター兼地域クリエイターズ(川崎市)

おいしいものとお得な情報が大好きな主婦です。結婚してから川崎に住んで18年になります。コロナ禍で頑張っている地元のお店や地元民に人気のスポットなどをご紹介します。

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