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【下北沢】レコード人気で再注目!ゆるレトロが居心地抜群の老舗ジャズ喫茶

なかくきくみこカフェライター

カフェライターなかくき くみこが実際に訪れた1,500軒以上のカフェのなかから、大人が心から満足できるような魅力的なカフェを紹介する連載「大人のための東京カフェ案内」。第14回目は、3代目オーナーが店を引き継いだ下北沢の老舗ジャズ喫茶を紹介します。

ゆるさが魅力の心地よい老舗ジャズ喫茶

ジャズ喫茶と聞くと、どんなお店をイメージするでしょうか。

レコードが奏でる音楽にお客さん全員が耳を傾ける店、音楽マニアが集まる場、おしゃべり禁止のルールがある店……などを思い浮かべるかもしれません。しかし、実はそのどれにも当てはまらないジャズ喫茶が下北沢にあるのです。

ジャズ喫茶は1960〜70年代に流行のピークを迎え、近年では東京全体でも数少ない業態となっていますが、最近はレコード人気の再燃によりまた注目を集め始めています。

初代オーナー奥田政子さんにより1953年に創業した「マサコ」は、モダンジャズ喫茶の先駆け的存在でした。一般的なジャズ喫茶は私語厳禁の店も少なくありませんが、政子さんがおしゃべり好きだったこともあり「マサコ」は会話OK。なので当時から音楽好き以外のお客さんも気軽に入れる雰囲気だったそうです。

現オーナーであるmoeさんも、そんな「マサコ」が好きでよく通っていた一人。「高校生の時、友達と偶然見つけたことをきっかけに通い始めました。それまでもジャズは好きでしたがスタンダードなものしか知らなくて」。当時のmoeさんは「ジャズってこんなに幅広いものなんだな」と胸を躍らせたそう。

大学生になったmoeさんはそこから10年間ほど同店で働いていましたが、下北沢の再開発に伴い2009年に56年続いた歴史に幕を下ろすことに……。その閉店には多くの人が悲しみ、オーナーやスタッフから信頼のあったmoeさんは跡を継ぐよう強く望まれたそうです。

「受け継ぎたい気持ちはありましたが、「マサコ」以外でほとんど働いたこともなかったし、私に経営ができるのか不安で」。大好きな店を守りたい想いと、やったことがないことに一人で向き合う不安。

悩んだ末moeさんは、店のレコードやスピーカー、家具、ランプに至るまで大量の荷物をいったん引き取り、そこから11年の月日をかけて老舗珈琲店やカレー店で修行をしながらオープンに向け準備しました。そして満を辞して2020年春に開いたのが、現在の「マサコ」なのです。

moeさんはオープン準備期間中に加入したバンド「民謡クルセイダーズ」に現在も所属し、人気音楽フェスに出演するなどミュージシャンとしても活躍しながら、スタッフとともに店を切り盛りしています。

人を介すからこそ、心に寄り添う音楽とカテゴリーを超えて出合う

旧「マサコ」時代から重低音を響かせるヴィンテージスピーカー「JBL4343B」と大量のレコード
旧「マサコ」時代から重低音を響かせるヴィンテージスピーカー「JBL4343B」と大量のレコード

「天候や時間帯によって、人って聴きたくなる音楽が変わったりしますよね。人を介すことで、サブスクだと出合えない音楽に出合えることがあります」と、moeさんは話します。

音楽をかける際は、店内に並べられた大量のレコードの中から、なるべく偏らないようその時の雰囲気に合う一枚を選んでいます。人が選ぶからこそ、年代やジャンルに縛られない選曲ができるのだそう。「自分の中と音楽の世界を行ったり来たりする時間を過ごしてもらいたいので、お客さんにはあまり話しかけないようにしています」という細やかな気遣いも。

さてここからは、moeさんが「マサコ」を引き継ぐタイミングで力を入れたという、料理やドリンクメニューの一部を紹介していきます。

旧「マサコ」時代から人気の「あんトースト」

旧「マサコ」から引き継いだコーヒーカップも現役で活躍
旧「マサコ」から引き継いだコーヒーカップも現役で活躍

同店の一番人気商品は、じゅわっとバターが染み込んだトーストに大粒のあんこをのせた「あんトースト」(550円)。こちらは旧「マサコ」時代から親しまれていたメニューで、現在は生クリームを添えています。

老舗「但馬屋珈琲店」に勤めながらネルドリップの技術を磨いた
老舗「但馬屋珈琲店」に勤めながらネルドリップの技術を磨いた

コーヒーはオリジナルブレンドや、エチオピアやコロンビアなどのシングルオリジン、デカフェなどから選べ、ネルドリップやペーパードリップで一杯ずつ抽出。

「ブレンド」(650円)で使用しているのは、味わいに定評のある初台の自家焙煎コーヒー店「G☆P COFFEE ROASTER」が手がけるオリジナルブレンドです。グァテマラやニカラグアなどで構成されており、冷めても甘さが持続するため、音楽を聴きながらゆっくり楽しみたい時にもピッタリ。

食事メニューのイチオシは、「チキンソテー」(単品1,450円、ドリンクと注文で1,050円)。

生姜や長ネギ、ニンニクなどを入れたスープを使いじっくり低温で茹でた鶏肉を、フライパンでジュッと焼いて仕上げているため、お肉が驚くほどジューシーで柔らか! タルタルソースの絶妙な酸味が食欲をそそる、大満足の一品です。

同店では陽が入る明るい時間帯も、夕方の黄昏時も、陽が落ちた後の大人の時間帯もレコードの美しい音と共に、心地よい空気が流れています。

音楽を聴くことがメインの目的でなくても、レトロな喫茶店の雰囲気やコーヒーを楽しみたい人も歓迎してくれる「マサコ」。ホッと一息つきたくなったらぜひ訪れてみて。

【店舗情報】
店名/ジャズ喫茶マサコ
住所/東京都世田谷区北沢2-31-2 大久ビル 2F
公式サイト/https://www.instagram.com/jazzkissamasako/(外部サイト)
アクセス/京王井の頭線、小田急小田原線 下北沢駅より徒歩3分
定休日/木曜
営業時間/平日・土曜12時〜22時(L.O.21時)、日曜12時〜19時30分(L.O.19時)

※新型コロナウイルス感染症対策により店舗の休業や営業時間の変更など、掲載内容と異なる場合があります。訪問される前に最新情報をご確認されることをおすすめします。

本連載では、今後も都内にある魅力的なカフェを紹介していきます。ご興味のある方はプロフィールからフォローをして頂けるとうれしいです。

カフェライター

カフェ専門のライターとして、雑誌やWEBで取材記事を執筆。都内を中心に1,600軒以上のカフェを訪問。各メディアにおいて空間・おいしさ・居心地の三拍子揃った「大人が心地よく過ごせるカフェ」を主に紹介している。プライベートでは中学生男児の母で東京郊外在住、身長147cm、性格はのんびり屋。日々のカフェ巡りはinstagramで更新中。仕事実績:リンネル、タイムアウト東京、偏愛東京、CafeSnap、るるぶ&more.、レッツエンジョイ東京、書籍や雑誌にて取材協力、ラジオ出演、新聞掲載、他

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