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緑茶も紅茶も同じ葉っぱからできている!茶摘み後の楽しみは自家製「緑茶」「紅茶」作り

日本茶ナビゲーター Tomoko日本茶インストラクター

「えっ?緑茶も紅茶も同じ葉っぱからできてるの?」

茶摘みで摘んだ葉から緑茶と紅茶を作ったという話をしたらとても驚かれました。

普段お茶に馴染みのない方にはあまり知られていないことなのかもしれません。

今回は茶摘み体験のレポートとその後の楽しみ方をまとめてみました。

自宅でも簡単に緑茶と紅茶が作れるのです!

「八十八夜」と茶摘み

♪夏も近づく八十八夜♪と「茶摘みの歌」でもおなじみの「八十八夜」。

立春から数えて88日目のことを指し、昔から茶摘みや稲の種まきに良い時期とされています。

この時期に摘んだお茶を飲むと病気にならないとも言われ、新茶は縁起物でもありました。

今年(2021年)の八十八夜は5月1日でしたが、地域によっては八十八夜を待たずして茶摘みシーズンに入る場所もあります。今年は暖かいため例年より早くに茶摘みがスタートした場所も多かったようです。

そんな中、5月上旬に、生産者さんのお手伝いもかねて、茶摘みに行ってきました。

「足柄茶(あしがらちゃ)」の産地の一つ、神奈川県西部の山北町(やまきたまち)です。

神奈川県西部、山北町の茶畑から望む富士山
神奈川県西部、山北町の茶畑から望む富士山

神奈川県にも茶産地が?

神奈川県というと横浜など都会のイメージがあるかと思いますが、神奈川県にも茶産地があります。

都内や神奈川県東部(横浜・川崎)の方でも、あまり馴染みがないかもしれません。

実は私も、日本茶インストラクターになるまでは知りませんでした(すみません・・・)。

神奈川県西部は山地が多く自然も豊かで、お茶に限らず農作物も豊富です。

かながわブランド振興協議会によると「山北町、松田町、南足柄市、開成町、中井町、小田原市、湯河原町、真鶴町、秦野市、厚木市、愛川町、清川村、相模原市」で生産されたお茶を「足柄茶」と呼ぶそうです。

丹沢箱根山麓一帯の地域で生産される「足柄茶」は、関東大震災の災害復興策として生産が始まりました。その気候や風土がお茶の栽培に最適であるという調査団の報告に基づき、村をあげて茶の導入を決定しました。
霧深い気候と清らかな水に恵まれて育まれた足柄茶は、甘味・旨味・渋味のバランスがとれ、ふくよかな「香り」と深い「コク」があります。

足柄茶は大正時代から生産されているのですね。

その足柄茶の産地の一つ、山北町は山間にあり、政令指定都市である横浜市・川崎市の水源でもあります。空気もお水もきれいな場所です。

JR御殿場線の車窓からも見える雄大な富士山。山北町はハイキングを楽しむ方も多く訪れます。

電車に乗っているとじわじわと近づいてくる富士山にテンションが上がります
電車に乗っているとじわじわと近づいてくる富士山にテンションが上がります

茶畑へ!

JR山北駅周辺には茶畑はありません。もっと山間の地域へタクシーで向かいました。

農薬を極力減らしてお茶を栽培されている生産者さんの茶畑へ。

5月はじめの茶畑は新芽が揃い本当にきれいです!

太陽の光を浴びツヤツヤ光る鮮やかな黄緑色の新芽
太陽の光を浴びツヤツヤ光る鮮やかな黄緑色の新芽

茶畑から良い香りがしそう!と思われますが、実は香りはありません。摘んでいるとちょっと青い草木の香りがします。

そしてしばらく経つと、摘まれた部分や摘んだ葉っぱやから少しフローラルな良い香りがしてくることがあります。これは酸化発酵による香りの変化です。

2人で持つタイプの可搬式摘採機。重量もあり斜面での摘採はバランスをとるのが難しいです。
2人で持つタイプの可搬式摘採機。重量もあり斜面での摘採はバランスをとるのが難しいです。

生産者さんはこのように機械で新芽の上の部分だけを刈り取ります。

お手伝いの傍ら手摘みで少し摘ませていただきました。

「一芯二葉(いっしんによう)」という摘み方で、真ん中の芽とその下の2つの葉っぱの下で折るようにして摘みます。爪を立てたりすると茎の部分に傷がつくので、気を付けながら摘んでいきます。

芯が右に寄っているためちょっとわかりにくいですがこれが「一芯二葉」で摘んだ新芽
芯が右に寄っているためちょっとわかりにくいですがこれが「一芯二葉」で摘んだ新芽

竹でできたかごをお借りしてそこに摘んだ新芽を入れていきます。竹のかごなら新芽が傷みません。
竹でできたかごをお借りしてそこに摘んだ新芽を入れていきます。竹のかごなら新芽が傷みません。

生産者さんのお手伝い

さて、生産者さんのお手伝いですが、機械は慣れている方でないと上手く摘めないため、その機械が入る前に新芽に硬い葉や別の物が紛れこまないよう掃除しておく作業をお手伝いしました。

木々に囲まれたこの地域、新芽の中に、他の木々の落ち葉、「ヘクソカズラ」という臭い植物の弦(新芽にまきついていて見分けがつかない時も!)、新芽の間から伸びてきたワラビの芽、虫など、機械で摘む前に取り除かなくてはいけないものがたくさんあります。

これを手作業でせっせと取り除くのですが、これがなかなか大変で時間も労力もかかります。

しかも斜面での作業。足腰にも負担がかかります(慣れない私は何度か転びました)。

写真では分かりにくいですが、なかなかの斜面です。慣れていないと滑ったり転んだりします。生産者さんによるとこちらの斜面はまだましな方だそうです。
写真では分かりにくいですが、なかなかの斜面です。慣れていないと滑ったり転んだりします。生産者さんによるとこちらの斜面はまだましな方だそうです。

生産者さんは一年中茶畑を管理して、茶摘みの時期は沢山の作業があり、本当に頭が下がります。

毎回思いますが、心してお茶を飲まねば・・・。

作業の途中でも見える美しい富士山。頑張ろう!と前向きな気持ちになります。
作業の途中でも見える美しい富士山。頑張ろう!と前向きな気持ちになります。

茶摘みの後のお楽しみ

茶摘みの後はお楽しみが待っています!

毎年のように茶摘みをしていますが、何が一番好きかというと「新茶の天ぷら」です。新芽を見ると勝手にワクワクしてしまいます。

家に着くころには少し萎れてしまっていましたが、天ぷらにするには問題なし!
家に着くころには少し萎れてしまっていましたが、天ぷらにするには問題なし!

葉っぱが薄いのですぐ揚がります。引き上げるのが遅くなりちょっと揚げすぎたものも・・・
葉っぱが薄いのですぐ揚がります。引き上げるのが遅くなりちょっと揚げすぎたものも・・・

新芽を摘んで、生の葉を天ぷらにするだけなのですが、香りがよくほろ苦くてとってもおいしいのです。

天ぷらも、私の場合は衣は小麦粉・塩一つまみ・お水のみ。塩を少しだけつけて食べます。

茶畑まで行かなくても、敷地内や近くにお茶の木があったらぜひ試してみてください。

そして摘んだらできるだけ早く天ぷらにしてくださいね。爽やかな香り、絶品です!

電子レンジで「緑茶」を作る!

摘んだその日のうちに作りたいものがもう一つ。

「緑茶(煎茶)」です。

緑茶は摘んだ生の葉をできるだけ早く熱処理して酸化発酵を止めます。

生の葉をそのままにしておくと蒸れて傷んで生臭くなったり、酸化発酵が進み烏龍茶や紅茶に近い色や香りになってしまったりするので、緑茶の場合は鮮度が命!

でも職人でもないのに緑茶なんかできるの?と思いますよね。

確かに、本格的な手揉み茶や製茶工場はもう専門の方しかできない世界です。

でも、設備がなくても、摘んだ茶葉の量が少なくても、それなりのものができるのです!

以前何度か電子レンジを使った緑茶の作り方にチャレンジしたことがあるので、今回もやってみました。ホットプレートなどを使う方法もありますが、電子レンジの方が簡単です(ネットで作り方を検索すると沢山出てきます)。

私の場合はかなり適当ですがこのようにして作りました(電子レンジの機種や茶葉の量により調節した方が良い場合もあります)。

電子レンジで手もみ茶作り

①耐熱皿に生の葉を並べて、600wで1分ほど加熱

生の葉
生の葉

レンジで1分。水分が出てきています。ちょっと青い蒸した葉っぱの香りです。
レンジで1分。水分が出てきています。ちょっと青い蒸した葉っぱの香りです。

②取り出してキッチンペーパーで葉とお皿の水分を取り除き、まな板などの上でこすりあわせるようにして揉む(熱いのでやけどに注意)

揉むとこんな感じに。熱いのでお子様がお手伝いされる場合はちょっと冷ましてから揉んだほうが良いです。
揉むとこんな感じに。熱いのでお子様がお手伝いされる場合はちょっと冷ましてから揉んだほうが良いです。

③また耐熱皿に載せて、600wで1分加熱し、取り出して揉む。これを6~8回くらい繰り返し、茎の部分の水分がなくなったら完成(焦げないように注意)

3回目
3回目

5回目。少しずつ緑茶の香りに近づいてきますが、茎の水分がなかなか乾燥しません。
5回目。少しずつ緑茶の香りに近づいてきますが、茎の水分がなかなか乾燥しません。

8回目。ようやく茎も乾燥しました。葉っぱ部分は薄く柔らかいので粉々に砕けてしまいました・・・。
8回目。ようやく茎も乾燥しました。葉っぱ部分は薄く柔らかいので粉々に砕けてしまいました・・・。

早速、急須で淹れて飲んでみました。

フレッシュで爽やかな香り、ほんのり甘く美味しいお茶です。

採れたて、できたての手揉み茶。フレッシュな香りは格別です!
採れたて、できたての手揉み茶。フレッシュな香りは格別です!

自家製なので長期保存はできませんが、とても美味しくできて大満足でした。

今回は「一芯二葉」で摘んだため、茎の部分が少なくて済みましたが、もっと下まで摘んでいたら乾燥させるのは大変になると思います。

また、大量に摘むと電子レンジで加工するのにも時間がかかります。茶摘みは楽しくてつい沢山摘みたくなりますが、天ぷらや手揉み茶など自宅で利用できる程度の量に留めておくのがよいです。

こうして自分でやってみると、沢山あった葉っぱも、加工して水分を飛ばすとほんの少しの量にしかならないことがよくわかります。改めて「心してお茶を飲まねば」と思いました。

萎れさせた葉っぱで「紅茶」作り!

次の日は約一日萎れさせた葉を使い、紅茶を作ってみました。紅茶のために残りの葉を萎れさせていたのです。葉っぱからはフローラルな香りが増していました。

緑茶は熱で酸化発酵を止める「不発酵茶」ですが、紅茶は「発酵茶」なのでしっかり酸化発酵させなければなりません。しかし、どうやって??

研修で2度紅茶を作ったことがありますが、それは製茶の機械を使った本格的なもので、自宅で作るのは今回が初めて。

上手くできるか不安でしたが、簡単にできる作り方を少し我流でアレンジしつつチャレンジ!

自家製簡単「紅茶」作り

①萎れさせた生の葉っぱをまな板の上で30分ほど揉む(傷をつけて酸化発酵を促すため)

摘んでから1日経過した萎れた葉っぱ。フローラルな良い香りがします。この香りが紅茶の香りにつながります。
摘んでから1日経過した萎れた葉っぱ。フローラルな良い香りがします。この香りが紅茶の香りにつながります。

揉むこと30分。水分が表面に出てきます。
揉むこと30分。水分が表面に出てきます。

②揉んだ葉をジップロックに入れて6時間ほど放置(酸化発酵を進める)

6時間経過した葉っぱは茶色くなり酸化発酵が進んでいます
6時間経過した葉っぱは茶色くなり酸化発酵が進んでいます

③ジップロックから取り出して天板に並べて120程度に熱したオーブンで乾燥させる(載せすぎたためなかなか乾燥せず、何度も様子を見ながら茎の部分が乾くまで加熱)

オーブンに入れる前。こんなに載せなければよかった・・・。この量なら2回に分けて加熱することをお勧めします。
オーブンに入れる前。こんなに載せなければよかった・・・。この量なら2回に分けて加熱することをお勧めします。

オーブンから出したときはまだ熱く、茎の部分は水分が残っていて柔らかいですが、しばらくこのまま乾燥させると乾いて全体が黒っぽい色になりました
オーブンから出したときはまだ熱く、茎の部分は水分が残っていて柔らかいですが、しばらくこのまま乾燥させると乾いて全体が黒っぽい色になりました

粗熱を取り常温で乾燥させると、黒っぽくなり、見た目はひじきかワカメのように(笑)。

でも熱湯で淹れて飲んでみると、ちゃんと紅茶の味です。

見た目はひじき・香りは紅茶!色は薄めですが優しいやわらかい紅茶の味です。
見た目はひじき・香りは紅茶!色は薄めですが優しいやわらかい紅茶の味です。

「やぶきた」という緑茶用の品種で紅茶用の品種に比べるとタンニンが少な目のため、優しい味わい。アイスティーにしても美味しく飲めました。

紅茶に向く品種としては、紅茶のために品種改良された「べにふうき」や「べにひかり」などがあります。

こちらの品種を使うと、より紅茶らしい仕上がりになると思われます。

※「べにふうき」については以前の記事にも詳細があります。

同じ葉っぱからできた緑茶と紅茶

このように、茶摘みで摘んだ同じ葉っぱからできた緑茶と紅茶。

家族でティータイムにも楽しめて、飲むたびに茶摘みの体験や茶畑の風景を思い出します。

自家製緑茶、生の茶葉、自家製紅茶
自家製緑茶、生の茶葉、自家製紅茶

初めてでも失敗せずにできました。機会がありましたらぜひチャレンジしてみてくださいね!
初めてでも失敗せずにできました。機会がありましたらぜひチャレンジしてみてくださいね!

茶摘み体験について

コロナ禍のため、通常ならいろいろな産地の観光農園などでできる茶摘み体験はかなり制限され、今年は中止しているところもあるようです。

体験できる場所でも人数制限や感染対策など万全にしているとのこと。

また、新茶シーズンでなくても茶摘み体験ができる場所もあるそうです。※静岡県観光公式ブログにも情報があります。

もし機会がありましたら、お友達やご家族と楽しく茶摘み体験をしてみてくださいね。お子さんの自由研究にしたり体験学習にもなります(我が子も自習ノートにまとめて提出していました)。

体験場所によっては、茶摘み娘の衣装で茶摘みができたり、その場でお茶の葉の天ぷらを食べられたり、手揉み茶も体験できたりと楽しめますよ。

お茶がぐっと身近に感じられること間違いなしです!

日本茶インストラクター

【お茶の世界の扉を開く日本茶ナビゲーター】 日本茶専門店で7年勤務、茶道歴25年の経験を活かし、大手百貨店や外国の大学等でのワークショップで国内外2,000名以上の方に日本茶の魅力を伝える。美味しい日本茶とそれにまつわる伝統工芸品を後世にも繋いでいきたい、日本茶への愛と想いで日本茶情報を発信中。日本茶の商品開発やカフェ・飲食店での日本茶コーディネートや淹れ方指導。NPO法人日本茶インストラクター協会認定日本茶インストラクター(2004年取得)。

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