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生産者は3児のママ!松江の茶畑と茶工場を守りたいと奮闘中【島根県松江市】

日本茶ナビゲーター Tomoko日本茶インストラクター

お茶は農作物。自然の中で栽培するため、天候にも左右されます。

今回は7月の豪雨で被災し、それがきっかけで現在クラウドファンディングに挑戦中の島根県松江市の生産者、錦峰園製茶場の野津さんを取材しました。

なんと3児のママでもある、茶工場も運営する生産者さん(跡継ぎ)なのです!

野津さんのお人柄そのもののほっとする味のお茶と若い後継者として奮闘する姿を取材させていただきました。

松江は抹茶文化の街

島根県松江市は出雲茶の産地。

松江は藩主であった松平不昧公(ふまいこう)が茶の湯や禅を学んでおり、抹茶文化の歴史のある地域です。そのため、古くから続く和菓子屋さんも多く抹茶は身近な存在だとか。

生産量は少ないながら松江には茶畑もあります。

「中海」が見える松江の茶畑(撮影:錦峰園製茶場 野津さん)
「中海」が見える松江の茶畑(撮影:錦峰園製茶場 野津さん)

乗用型摘採機での茶摘みの様子(撮影:錦峰園製茶場 野津さん)
乗用型摘採機での茶摘みの様子(撮影:錦峰園製茶場 野津さん)

松江の茶農家、錦峰園製茶場の野津さんを知ったのはインスタグラムがきっかけです。

いつも茶畑や稲作の写真、ご家族の笑顔を拝見しほっこり癒されていましたが、7月に投稿された写真に驚きご連絡をしたことから様々なお話をうかがいました。

その写真には川が氾濫して押し寄せる水と浸水の様子が写っていました。

災害にも負けず

幸いにも命には関わる災害ではなかったとのことにほっとしたのもつかの間、農機具が浸水で被害を受け使えなくなったり、数年前に改植して新しい品種を植えた茶畑が崩れてしまったり、茶畑へ行くための道も土砂崩れで通行止めになったり、様々な被害が・・・。

その後、行政で対応してもらえたり地域の人々と協力し合ってカバーできる部分はあったそうですが、農機具の故障は自己負担で買い替えが必要になったそうです。

イノシシによる被害も

以前、神奈川県の山間の茶産地「山北町」の茶畑を取材させていただいた際も、イノシシによる被害を聞いていましたが(記事はこちら)、イノシシが茶畑に穴を掘るだけではなく、木の根や石まで掘り返してしまい、それが土砂崩れの原因ともなり得るというお話でした。

「茶畑を守ることは森林を守ることにもなる」と聞いていますが、高齢化や後継者不足で農作物を育てる人が減り耕作放棄地が増えるとイノシシや鹿などが増え、その場所も森林もどんどん荒れていってしまいます。

松江でもやはり同じような問題があり、野津さんも危機感を募らせているとのこと。若い担い手でもある野津さんを応援したいです。

農水省の調査によると、現在は国内の食料自給率が37%(令和2年度、カロリーベース)しかありません。

農業など第一次産業は人の生活に密接に関わるものなのに、これまで日本ではあまりないがしろにされてきたように感じます。しかし、コロナ禍でその大切さに気付く人が増えてきているようです。

厳しい中でも今まで通り真摯に向き合う生産者さんには頭が下がります。感謝しかありません。

子育てしながら農業を

生まれ育った松江の自然が好き!子どもたちのためにも地域のためにもこの環境を守りたい!」と奮闘している野津さん。

野津さん(右)とお子さんたち(撮影:野津さん)
野津さん(右)とお子さんたち(撮影:野津さん)

なんと、子育てしながら、お茶だけではなくお米も栽培しているのです。ほんわかした印象ですが、とってもパワフル!

茶畑は茶摘みの時に摘めばよいというものではなく、年間を通して草取りや枝を整えたりと作業がたくさんあります。それに加えて稲作もですから、休む暇がありません。

2人で持つタイプの「可搬式摘採機」での茶摘みの様子。これ、重いんです!ご家族みんなで作業されています。
2人で持つタイプの「可搬式摘採機」での茶摘みの様子。これ、重いんです!ご家族みんなで作業されています。

雪に覆われた茶畑
雪に覆われた茶畑

冬はこのように茶畑にも雪が積もるので、寒さにも耐えるよう工夫が必要だそうです。

また、野津さんの錦峰園製茶場には製茶工場があり、地域の方々がお家の分だけ育てた茶葉を製茶したりもしているそうです。

来年の茶摘みの時期までには修理を終えていないと、野津さんの生産する茶葉も、地域の方々が自宅用に育てた茶葉も、お茶にすることができなくなってしまいます。

そこで、新たに「クラウドファンディング」に挑戦することにしたとのこと!

お子さんたちに手伝ってもらいながら夜な夜な写真を加工したり、載せる文章を考えたり、稲刈りで忙しい中頑張っておられた野津さん。私は陰ながらインスタでの報告を見たり、メッセージでのやりとりで応援していました。

ほっとする味!松江のお茶

クラウドファンディングとは別に、先月、個人的な応援企画として野津さんのお茶を取り寄せ、日本茶レッスンで生徒さんと一緒に味わいました。

日本茶レッスンで使い自宅でも飲んでいる煎茶2種類。ほっとする香りで昔ながらの素朴な味わい。
日本茶レッスンで使い自宅でも飲んでいる煎茶2種類。ほっとする香りで昔ながらの素朴な味わい。

どの茶葉にするか選ぶ際に野津さんに特徴をお聞きしたところ、

大きな産地である静岡や鹿児島と同じ肥料を使ったり被覆(覆いをかけて栽培する方法)をしたりしても気候が違うため同じようなお茶はできません。
以前は国内で主流となっている深蒸し茶にした方が良いのか悩んだ時期もありました。
でも私たちのお茶を飲んだ人が「昔懐かしいいいかんじがするね」とか「渋味があるから甘い和菓子によく合うね」と言ってくださるので、この「松江のお茶らしさ」を大切に生産していきたいと思っています。

とおっしゃっていました。

煎茶「秀峰」昔ながらの普通蒸し煎茶。ほっとする香りと味わいです。
煎茶「秀峰」昔ながらの普通蒸し煎茶。ほっとする香りと味わいです。

その土地その土地の気候や風土でお茶の味は変わります。

日本はそれほど大きな国ではありませんが、北から南までたくさんの茶産地があり、それぞれ違った特徴を持ち、また生産者さんの努力もあり、様々なお茶が丁寧に心を込めて作られています。

世界的に見ると日本茶の生産量は微々たるものですが、これだけのバラエティー、多種多様な香りと味が味わえる国も珍しいのではと思います

お茶も「みんな違って、みんないい」。

お湯の温度が高いと苦味や渋味が出やすく、お湯の温度が低いとうま味や甘味が引き出しやすくなります。高温の時は浸出時間(待つ時間)を短くしてすっきりとした味に、低温の時は浸出時間を長めに取りまろやかな味に、とお茶のいれ方で工夫できます。

もしちょっと渋味が強いと感じたら、お湯の温度を少し下げ、浸出時間(待つ時間)を短めにするとそれほど気になることはありません。

いつもそんな風にしながら、産地ごと、生産者さんごとの違いや特徴を楽しみつつおいしくいただいています。

島根県らしさ満載のお茶「五縁むすび」

野津さんの生産するお茶には、島根県らしさが詰まったお茶もあります。

それがこちらの「五縁むすび」。

パッケージにおみくじが付いていて子どもが大喜び!
パッケージにおみくじが付いていて子どもが大喜び!

島根県の「出雲大社」にちなみ作られたこちらのお茶は、なんと島根県の特産が5つも入っているのです。

  • 錦峰園製茶場のほうじ番茶(低カフェイン)
  • 隠岐の黒大豆
  • 出雲の大麦
  • 米子の杜仲の葉
  • 合鴨農法の玄米

島根県のお土産にぴったりですね!

しかも、低カフェインで低刺激なので、ご家族みんなで楽しめるお茶です。

私も家族と飲んでみました。

麦茶+ほうじ茶+玄米茶のような香ばしく軽やかな味!家族みんなのお気に入りです!
麦茶+ほうじ茶+玄米茶のような香ばしく軽やかな味!家族みんなのお気に入りです!

ティーバッグに入っていて、急須などを使ってもおいしいし、麦茶のようにやかんでたくさん作って飲んでもおいしいです。

麦茶、ほうじ茶、玄米茶を合わせたような香ばしくて軽やかなお茶で、苦味や渋味は全くなく、食事中に飲んだり、お煎餅など気軽なお菓子に合わせたり、様々に楽しめます。

ほっとるす味でとてもおすすめです。

野津さんのお茶について

野津さんのお茶やお茶の生産については、クラウドファンディングのサイトや錦峰園製茶場のホームページにも写真などで詳しく説明があります。

野津さんのクラウドファンディングのページ(CAMPFIRE)(外部リンク)

錦峰園製茶場のホームページ(外部リンク)

野津さんのインスタ(外部リンク)

野津さんご家族の笑顔の写真がとても印象的でした。

これからも松江でお茶とお米の生産、そして子育てする姿をインスタの写真を見ながら応援しています!

日本茶インストラクター

【お茶の世界の扉を開く日本茶ナビゲーター】 日本茶専門店で7年勤務、茶道歴25年の経験を活かし、大手百貨店や外国の大学等でのワークショップで国内外2,000名以上の方に日本茶の魅力を伝える。美味しい日本茶とそれにまつわる伝統工芸品を後世にも繋いでいきたい、日本茶への愛と想いで日本茶情報を発信中。日本茶の商品開発やカフェ・飲食店での日本茶コーディネートや淹れ方指導。NPO法人日本茶インストラクター協会認定日本茶インストラクター(2004年取得)。

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