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カナダで日本茶のオンラインショップをオープン!カナダ人経営者に聞く日本茶の魅力

日本茶ナビゲーター Tomoko日本茶インストラクター

前回に続き、今回もカナダの日本茶事情についてです。

今回はカナダで日本茶のオンラインショップを経営するカナダ人のテシエ・アヴェリさんにお話を伺いました。

今年2021年2月にオープンしたオンラインショップは九州産のお茶の専門店

どうして九州?いつから日本茶に興味があったの?など質問してみました。

日本で生まれ育ったのでやっぱり日本茶!

テシエさんは生まれも育ちも日本。カナダ国籍ですがお母様がフィリピン人なので家庭では和食の他に、洋食、フィリピン料理など、多国籍の家庭料理で育ち、日本茶は食後に飲むことが多かったそうです。

住んでいたのが九州だったこともあり、カナダでもこの九州のお茶のおいしさと素晴らしさを伝えたい!とカナダに渡ってから準備し、オンラインショップを開いたとのこと。

では、最初に日本茶に興味を持つようになったきっかけは何だったのでしょうか?

テシエさんのオンラインショップでは「かぶせ茶」も扱っています
テシエさんのオンラインショップでは「かぶせ茶」も扱っています

日本茶への興味

まだお若いテシエさん。日本茶にどのようにして興味を持つようになったのか、聞いてみました。

日本茶はいつも身近にあった存在で、実家でも急須でお茶を淹れて飲んでいました
白折(茎茶)、玄米茶、抹茶入り煎茶、深蒸し茶などがいつも自宅にありました。とはいえ、高校生くらいの頃まではペットボトルの緑茶を飲むことのほうが多かった気がします。
自分専用の急須を購入したり、日本茶の種類により興味を持つようになったのは大学生になってからです。お茶を淹れるときのリラックス効果をより実感できるようになったからかもしれません。

実は私も日本茶に興味を持つようになったのは、テシエさんと同じく大学生のころです。

子どものころは身近にある飲み物のひとつ、という位置付けでしたが、親戚宅で丁寧に淹れられた玉露を飲み、その凝縮されたうま味と甘味に驚き虜になったのでした。

もしかしたら20歳前後には味覚が十分に育ち、自分の好みがはっきりしてくる時期なのかもしれません。

大学3年生のときにイギリスに10ヶ月留学したのですが、そのときも急須と煎茶を持っていきました!
ちなみにイギリスの水は硬水なので日本茶との相性は悪そうですが、当時は気にならなかったように記憶しています。気になって調べてみたら、私が留学していたランカシャー地域は軟水〜中硬水だったようです。だからあまり違和感なく飲めたのか!と今になって納得しました。

イギリスでも軟水寄りの地域があるのですね。知りませんでした(日本はほとんどの地域が軟水ですが硬水寄りの地域もあります)。

硬水で煎茶などをいれると、苦味や渋味が強くなり、茶液の色も茶色っぽくなることが多いです。テシエさんの滞在先は硬水の影響はあまり受けなかったようで、ラッキーでしたね。

私も大学生のときにイギリスで1カ月ホームステイした際、簡単な茶道具を一式持って行き、ホストファミリーにお点前を披露し抹茶を点ててあげたり、ホストシスターに抹茶を点てる体験をさせてあげたりしていたのを思い出しました。

自分のリラックスのためと、日本文化の一つを紹介したいという気持ちで抹茶を持って行きましたが、今ではとても良い思い出です。

私の滞在先は硬水の地域でしたが、私が実験した限りでは抹茶は硬水の影響を受けにくい日本茶の一つなので、抹茶の味についてはそれほど悪くなかったと記憶しています。

今でも旅行に行く時は必ず急須と煎茶を持って行きます。場所が変わったり疲れが溜まった時でも、淹れたてのお茶を飲むと、まるで自宅にいるときのようにリラックスできるので、平穏な日常を送るために煎茶は欠かせない存在です。

素晴らしいですね!私も旅行には日本茶を持って行きますが、ティーバッグにしています(お茶屋さんの日本茶ティーバッグはおいしくて、いくつかお気に入りがあります)。

特に海外に滞在すると日本の味が恋しくなったりしますが、日本茶はそんなときも体と心をニュートラルにするのに役立っているような気がします(硬水の地域だとお茶の色や味は変わってしまいますがそれでも無いよりは良いと感じます)。外国で日本茶を飲むとほっとします。

香ばしくすっきりとした緑茶「釜炒り茶」をカナダのお菓子に合わせて
香ばしくすっきりとした緑茶「釜炒り茶」をカナダのお菓子に合わせて

カナダで日本茶のオンラインショップを始めようと思った理由

テシエさんの学生時代からの日本茶への興味は、その後ますます強いものになっていったそうです。

2019年6月に結婚を機にカナダに引っ越したことで、煎茶の良さを改めて実感したことが一番の理由です。
周りの友人の話を聞くうちに、高品質の煎茶を気軽に飲める場が少ないことに加え、美味しい淹れ方があまり知られていない事実を認識し、煎茶の良さがもっと広まったらいいなと考えていました
2020年4月からコロナによるロックダウンが始まり、必要最低限の外出しかできなくなったことで「何かやるなら今がチャンスだ!」と思い立ち、オンラインショップを始めました。

コロナ禍がオンラインショップ立ち上げのきっかけとなったのですね。

福岡で生まれ育ったので、輸入するお茶は絶対に九州産にしたいと決めていました。勉強やリサーチなどを行い、2021年2月にオンラインショップをオープンしました。
正直勢いで始めたところもあり、試行錯誤しつつも楽しみながらやっています!

勢いとはいえ、勇気がありますね!

初めてテシエさんから個別相談の依頼をいただき、日本茶のこういうことに疑問を持っている、という質問リストがメールで届いたときは、外国の方ならではの目線や日本に長く住んでいた経験からくる独特で繊細な質問内容に驚きました。

テシエさんは、外から見る日本茶、内から見る日本茶、そのどちらも理解できる方なのだと感じました。

お茶のある風景
お茶のある風景

カナダで日本茶を購入するのはどんな人?

テシエさんのオンラインショップ(外部リンク)には、日本人でも一般的にはあまり知られていないような九州のお茶も含まれています。

では、カナダで日本茶を購入するのは、どういった方々なのでしょうか?

今のところ、私のオンラインショップの客層は、もともと日本文化に興味がある方、過去に日本に滞在したことのある方、カナダ在住の日本人も、健康に関心のある方、が多いです
だんだんリピーターのお客さんもつくようになり、「ここの釜炒り茶は今までで飲んだお茶の中で一番美味しい!」と言ってくださり、オープンして本当によかったと思っています。

外国でお客様に喜ばれる日本茶のオンラインショップ、素晴らしいです。

テシエさんご自身が本当に日本茶が大好きで、日本人の私でも気づかないくらいより細かい部分まで理解しようと努力し勉強している姿勢が、オンラインショップのサイトからも伝わってきます。

オンラインショップで人気がある茶葉  

では、テシエさんのオンラインショップではどんなお茶が人気なのでしょうか?

「釜炒り茶」が人気です
ややスモーキーでさっぱりした味わいがカナダ人の味覚にマッチしやすいようで、日本茶の初心者にはまずこれを!とお勧めできるお茶です
「キャンプファイヤーのような味がして好き」という方もいました。もしかしたらアウトドア派には好まれやすいのかもしれません。

釜炒り茶は日本でも生産が日本茶全体の中の1%未満という希少な緑茶です(釜炒り茶についてはこちらの記事をご覧ください)。

私も以前から、釜炒り茶の味と香りは外国人受けすると思っていましたが、テシエさんの個別相談をするに当たり、日本茶の代表的な茶種を硬水ではどう味や色や香りが変化するか改めて実験してみたところ、釜炒り茶は硬水の影響をあまり受けない茶種の一つでした。それも人気の理由の一つかもしれません。

ちなみに、トロントの水道水はやや硬水だそうですが、硬水を軟水に変える機械も普及していて、テシエさんのお宅を含め半分くらいの家庭で使われているそうです。

その次には、つゆひかりのかぶせ茶が人気です。シングルオリジンであること、またフローラルで上品な味わいが好評です。  

コーヒーの流れからの「シングルオリジン(単一農園・単一品種)」は海外でもとても人気ですね。日本でもここ10年ぐらいでかなり浸透してきました。

お茶を選ぶ際の選択肢が増えて、味や香りの違いといった多様性を楽しめるものだと思います。

今は品揃えが少ないですが、今後どんどん九州らしいお茶を取り揃えていきたいと考えています!!

今後もオンラインショップのラインナップが楽しみです!

以前、アメリカにお住まいの方にも伺ったことがありますが、シングルオリジンであることと、さらにオーガニックであれば、欧米ではものすごく付加価値が高いとのことでした。

これからの海外での日本茶の評価や広がりも楽しみです。

テシエさん、2回に渡り取材にご協力いただき、ありがとうございました!

テシエさんと猫のウィンストンくん。オンラインでのレッスンや個別相談にも時々登場してくれて和みます。
テシエさんと猫のウィンストンくん。オンラインでのレッスンや個別相談にも時々登場してくれて和みます。

テシエさんのインスタ(外部リンク)

ウィンストンくんのインスタ(外部リンク)・・・私はこちらを見ていつも癒されています。

日本茶インストラクター

【お茶の世界の扉を開く日本茶ナビゲーター】 日本茶専門店で7年勤務、茶道歴25年の経験を活かし、大手百貨店や外国の大学等でのワークショップで国内外2,000名以上の方に日本茶の魅力を伝える。美味しい日本茶とそれにまつわる伝統工芸品を後世にも繋いでいきたい、日本茶への愛と想いで日本茶情報を発信中。日本茶の商品開発やカフェ・飲食店での日本茶コーディネートや淹れ方指導。NPO法人日本茶インストラクター協会認定日本茶インストラクター(2004年取得)。

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