ショートフィルム

私は日本を誇りに思いたい 右翼女性活動家はなぜ沖縄へ通うのか

新田義貴

映画監督、ジャーナリスト

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「私たちの国でなぜ米軍が兵器を持って走り回っているのか?」

沖縄県北部にある米軍北部訓練場。オスプレイが離着陸を繰り返すヘリパッドのゲート前。戦闘帽に黒の上着、作業パンツに編み上げブーツという一見強面な服装に身を包んだ小柄な女性が、拡声器を片手に演説を行っていた。

女性の名前は仲村之菊(みどり)、40歳。千葉県を拠点とする民族派右翼団体「花瑛塾(かえいじゅく)」の塾長だ。仲村が「語りかけ」と呼ぶこの基地前演説。日本国内の米軍基地の7割が沖縄に集中していることの不平等さを指摘し、辺野古や高江での新たな基地建設を糾弾する。こうした思いを基地で働く沖縄の人々に伝え、連帯を呼びかけるのだ。この3年半で272日間沖縄に滞在し、語りかけは40回以上に及ぶ。

なぜ右翼である仲村がここまで沖縄に固執するのか?

仲村は東京・浅草で育った。幼い頃からサッカーやスノーボードで活躍するスポーツ女子だったが、高校に入るといわゆる“不良”の世界に入り、19歳で2児の母となる。

「学業に熱心に取り組んで来なかった自分が子供に何を伝えられるのか?」

悩んだ仲村は世界中の児童書を読み漁る。そして、自分が日本の歴史をほとんど知らないことに気づく。歴史を学び始めると今度は、歴史と主体的に関わる政治にも興味が湧いてきた。そして、街頭で行われる様々な政治団体の演説会を聞きに行くようになる。そのなかで仲村の心に最も響いたのがある大手右翼団体の主張だった。彼らは北方領土返還や憲法改正など政治的スローガンを掲げる一方で、「家族を大切に」、「先輩を敬え」など、日本人としてごく当たり前の道徳を説いていた。2年間演説会に通った後に正式に入会。トラックの運転手などをしてひとりで子供を育てながら20年近く活動を続けた。

しかし会の中核メンバーとして認められるようになると、その方針に疑問を持つようになってきた。その最大の課題が沖縄だった。伝統的に沖縄の米軍基地に関しては左翼が反基地運動を行い、右翼は保守の立場から国防のための米軍基地を容認するケースが少なくない。さらに近年は“ネット右翼”と呼ばれる人々が沖縄の基地反対派を罵倒し差別的な言葉を浴びせることも多い。しかし仲村は違った。日本の国土になぜ米軍が我が物顔で軍事基地を置いているのか?そして新たな基地建設で沖縄の自然を破壊しているのか?やがて仲村は単身沖縄を訪れ、反基地運動を行うようになる。2016年、このことが問題となり会を除名処分となる。そして、同じく除名処分となった仲間と共に新たな政治団体「花瑛塾」を起ち上げた。

花瑛塾はメンバーおよ30名。平均年齢22歳の若い右翼団体だ。神道信仰と神道精神を基本に、米軍基地問題や北方領土、憲法改正など既存の右翼団体とは一線を画す主張を世の中に発し続けている。仲村の千葉県内の自宅が塾の集会所も兼ねている。メンバーは発達障害や引きこもり、元犯罪者など様々な事情を抱える若者たちだ。右翼としての政治理念よりも、「まずは見える範囲の人を幸せにする」が仲村の信念だ。こうした若者たちの相談に乗りながら、木工職人として爬虫類などのペット用ケージを作り、注文販売して生計を立てている。ケージを作るようになったのは、仲村自身が大の生き物好きで、かつてはカメやトカゲを自宅で飼育していた経験からだ。2人の息子はすでに成人しているが、長男は大学を中退し社会になじめず、今は仲村の元に戻り家具作りを手伝っている。

仲村がいま最も力を入れているのが沖縄本島北部にある米軍北部訓練場返還跡地の廃棄物の問題だ。通称「やんばるの森」と呼ばれる広大な地域を米軍は1950年代からジャングル訓練センターとして使用してきた。2016年、その北部訓練場7500haのうち4000haが日本政府に返還されたが、その返還跡地から次々と米軍が残していった廃棄物が見つかっているのだ。
※詳しくは「闘うチョウ研究者 米軍基地から沖縄の森の生き物を守る」参照
https://creators.yahoo.co.jp/nittayoshitaka/0200023174
仲村は廃棄物を見つけ米軍と日本政府を告発し続けている沖縄の友人でチョウ類研究家の宮城秋乃に協力する形で、防衛省へ質問状を送るなど日本政府への抗議を続けている。こうした仲村の姿勢の根本にあるのは、右翼思想の原点にある「郷土愛」である。「自分の家の庭を汚されて怒らない人いない」仲村はこう信じて活動を続ける。

仲村は沖縄の基地問題にコミットしつつ、アジアへの慰霊の旅も続けている。近年は香港や台湾の政治活動家とも連帯し、その活動は広がり続けている。

「私は日本を誇りに思う。そして美しいと思う。日本を美しいと思うからこそ沖縄とこれからどのように共に歩んでいけばいいのか真剣に考えるのです。」

本当に国を思うとは何か?
様々な活動を行いながらも仲村が問いかけている根本は、右や左といったイデオロギーを超えた「隣にいる人を幸せにしたい」という一途な思いだ。小さな体を戦闘服に包み、仲村は今日も“愛する人々”のために“巨大な敵”に立ち向かっていく。

クレジット

監督・撮影・編集 新田義貴
撮影助手     知花あかり
音楽協力     ヨシコライン
制作著作     ユーラシアビジョン

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