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【香芝市】<かしばプラス+>中世から続く鹿島神社結鎮座の渡御行事を見学しました

にゃんこWebライター(香芝市・広陵町)

例年1月26日に、鹿島神社の宮座の伝統行事である「結鎮(けっちん)座の渡御(とぎょ)行事」が行われます。

この行事は「かしばプラス+」という「かしばが誇る、次代に伝えたいもの・こと」として「かしばのブランド」に認定されているものです。

中世から連綿と続けられている行事で、香芝市の無形民俗文化財とされており、宮座の組織や年中行事などを記した文書は貴重な資料として、奈良県の指定文化財として保管されています。

私は今回、「かしばプラス+」に認定されている行事がこのタイミングで行われるならぜひ見ておこう!と思い、見学させていただきました。

見学前に軽く資料は読んだものの、ほぼ何もわからない状態で見に行ったもので、とにかく周辺にいらっしゃったみなさんに教えてもらいつつ全体像をつかんでいき、再度資料を読んでこの記事をまとめました。

結鎮座の渡御行事とは?

鹿島神社を氏神とする地域には、宮座として「結鎮座」という組織があります。

宮座(みやざ)とは、地域の鎮守もしくは氏神である神社の祭祀に携わる村落内の特権的な組織及びそれを構成する資格者の集団。専任の神職を持たず、宮座の構成員が年番で神主役を務める当家(とうや)制を取る。(Wikipedia「宮座」

鹿島神社では神主がいない代わりに、地域の祭祀に携わることができる者(氏子の家の家長や年長者)で組織した宮座から、輪番の頭屋(とうや)を選出します。

1月26日に行われる渡御行事は、上十人衆(宮座のうちの年長者10名)が頭屋宅を出発し、神社に御神霊をお迎えに行き、再び頭屋宅で祭祀を行い、饗宴を行うという行事です。

1月26日の行事のようす

この行事を神社の祭祀と勘違いしていた私は、一般人でもこの行事を見に行けるのか心配になったので、行事が行われる前日に鹿島神社に問い合わせました。

「一般の人も見に来てくださってOKです」の回答をいただいたほかに、

「今年の頭屋は○○の裏にある、下田西の●●さんです」とまで教えていただきました。

ええっ、そんなことまでお気軽に聞いてよかったのか!?と驚きましたが、よくよく考えたら、頭屋さんのお家の場所がわからなければ見に行きようがないのですよね。

出発は朝の10時ごろとのことなので、その時間にひっそりと待機。

頭屋さん宅はばっちり、ひと目でわかりました。

待っていると装束を着た上十人衆のみなさんが続々とお家を出てこられました。

軽く数枚、記念撮影後、出発。

頭屋の方や頭屋さん宅のみなさんへのお祝いの言葉が飛び交っていました。

「頭屋になる」ということがここではめでたいこととされているのがうかがえます。

列についていっている間、「過去にだんなさんが頭屋をされたことがある」というご近所の方に、かみくだいたわかりやすい行事の概要について教えていただきました。

昔は列の後ろにもっとたくさんの地域の人がついてきていたことや、頭屋になる人は基本的にはその家の長男が多かったけれど、最近は次男三男がされるというケースも増えてきたことなどをお聴きできました。

さらに、頭屋を出した家は、祭祀後のお食事を準備するのに人手がいるという話も。このような話題になったのは、厨房を担う主婦としては興味深い話ゆえ。

私も一応主婦ですので、こういう話は興味津々です。

神社に到着。この後御神霊をお迎えする祭祀が行われました。

このあと再び頭屋の家に戻ります。

御神霊をお連れするのですね。

鹿島神社の宮司さんによると、「このあとの祭祀の方が儀式としてはより重要です」とのこと。

「渡御行事」なので神社まで歩いてきて終わりかと思っていた私。お恥ずかしい。

大急ぎでついていきました。

再び頭屋さん宅に戻りました。これからはお家の中で祭祀を行うとのこと。

えっ、私お邪魔していいの?と言いつつお邪魔。

(ご家族さんが快く受け入れてくださいました。ありがとうございます)

頭屋さん宅では祭殿が用意され、供物を備え、祭文が読み上げられました。

この時は私も「一般の方」として拝礼等をおこないました。

ここでの祭祀は20分ぐらい。

この後は、十人衆の皆さんやその他の皆さんで神様のお下がりをいただき、お食事が行われるとのこと。私は祭祀終了時点で失礼いたしました。

伝統行事も続けやすいように

このような一連の儀式が、(コロナ禍の年には中止になったものの)中世の時代から民間でずっと続いているのはすごいことですね。

この行事自体も香芝市の無形民俗文化財に指定されており、行事そのものから当時がうかがえる貴重なものとされていますが、実はそれだけではありませんでした。

この行事について、宮座が始まったころから続く行事として書き記している文書が残されています。

この文書には、代々の頭屋の名前はもちろん、座に入られた人々の名簿や、その年にはどんな供物が供えられたのか、神主役をされている茶色い装束の方が読み上げる祭文など、詳細な記録が残されています。

この文書が、当時の村落のようすがわかる貴重な資料として、奈良県の指定文化財となり、奈良国立博物館に所蔵されています。

この資料があったおかげで、今も行事が続けられているという一面もあります。

とはいえ、何もかも昔のままではありません。少しずつ違うところもあるようです。

それは、行列の際に悩まされるつらいことを改善するための、さまざまな工夫。

供物を入れて2人で担いで運んでおられた箱ですが、そこには三宝や食器、お供え物が入っていて、かなり重いそうです。信号待ちなどで歩かないときにも肩に載せっぱなしは負担が大きいため、支え棒が用意されました。

また、十人衆のおひとりの方で、供物の鏡餅を肩から布で支えて運んでおられた方に、鏡餅の重さを体感させていただきました。

めちゃ重っ!です。

これも相当肩が凝るようで、今年からは鏡餅を支えるお盆を追加したとのこと。

おかげで多少は肩の負担が軽くなったとお話しされていました。

このように、少しずつ改良されながらも伝統行事が続いているのですね。

祭祀が行われる伝統行事ってもっと堅苦しいのかと思いましたが、意外とそうでもなく。

合間合間にこぼれ話が聞ける程度に和やかな雰囲気がありました。

この記事で、「貴重な伝統行事が今も続けられているんだなぁ」「市の指定民俗文化財やかしばプラス+に認定されている行事ってこんな感じで行われているのかぁ」ということが伝われば幸いです。

参考:≪特殊神事 結鎮祭≫宮座渡御神事(鹿島神社公式サイト)

(1)鹿島社と結鎮座(香芝市公式サイト)

Kashiba+鹿島神社 結鎮座の渡御行事 #20

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Webライター(香芝市・広陵町)

高校生男子1人と中学生女子1人の子持ち(一番上は今春就職し独立)。本と歴史、古民家と食べることが好きなWebライターにゃんこです。グルメ記事の参考までに⇒胃袋の容量は男子高校生並。家族が食べるスイーツの担当はドラフト会議で決めます。香芝市と広陵町の”えぇとこ”を探して発信していきます。

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