ショートフィルム

いつの間にか、知らない人が家に住みついている  落合正幸 映画監督/脚本家

落合正幸

映像作家

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「いつの間にか、知らない人が家に住みついている」

実際は一人で生活しているのに、そう訴える人が増えている。
それは「幻の同居人(Phantom Boarders)」と呼ばれる精神科領域の症状で、一人暮らしをする高齢女性に多くみられることから、孤独がもたらす精神的な異変ではないかと見られている。だが、孤立する時間を人間に強いるこの時代、孤独感を抱えながら過ごす人は多いはず。誰にも無縁とは言えない話になってはいないか。
『世にも奇妙な物語』、『催眠(1999 年)』などを監督してきた筆者が、精神科医・春日武彦さんに、人の心が生み出す「幻の同居人」について聞いた。
 
仕舞ったはずの大切なものが見当たらない。消えたと焦った後に、覚えのないところから出てくる。それは、単に思い違いなのだが、孤立生活者にとっては「誰かが家に入って、物を動かしたのではないか」という、警戒心にもなる。更に、疑心暗鬼となった心は、家の中に多くの異変を発見し、作ってしまう。
自ら落とし込んだ恐怖だが、そこから逃れようと懸命になる。そして、不可解な出来事を理解しようと説明を求め出す。やがて、結論に辿り着く。
「いつの間にか、家の中に誰かが住んでいる」
これが、幻の同居人を仕立て上げてしまう原因と流れだそうだ。

その、見たことのない住人は何処にいるのかと訊ねると、多くの人は天井裏を指すそうだ。天井裏とは、そこに空間がある事を知りながら、見たことのない場所。
そして、春日さんは精神科医の目から、天井裏が、家のすべてを見られる場所であることに意味があると考える。つまり、家中で起きる不可解な出来事を、合理的に説明するために行き着くのが「天井裏に住む人」なのだ。

ドラマの女性は、そんな見知らぬ住人を恐れながら、その住人のために食事を用意したり、布団を敷いたりする。これは、どのような心理状態なのか。春日さんによれば、天井に人が住んでいると心の中で確定すると、次のステップに移り、その、存在しない同居人に対して親しみを感じ出すのだという。一人暮らしの孤独は、不思議ではあるが癒され、むしろ、希望の湧く共同生活が始まるのだそうだ。

すべては孤立した人の、想像力の暴走が創り出す人物。
そして、その妄想の存在に血が通い出す。そんな幻の同居人を、私たちは怖いと感じる。だが、客観視できるだろうか。孤独から始まると考えれば、条件に合う人は多くいるだろう。誰も、自分はこうならないと言い切れるだろうか。
幻の同居人、それは、誰の家にも住みつくかもしれない。
誰の前にも現れるかもしれない。

孤独でない人はいない。まして、今日、家族と住んでいても、家庭内の孤独を体験している人は多い。あなたは、孤独を充分に制御できているだろうか。
会話のない日常に、人の想像力は暴走する。それが今回、印象深いテーマ。独り、山小屋で一夜を過ごす一番の恐怖は、勝手に喋り出す自分の意識、だそうだ。
『影を踏まれた女』同様、恐怖とは、自らの内面にも潜むものとの戦いでもある。人の怖いとは何か。まだまだ、紐解く材料はありそうだ。
人それぞれが、今、この瞬間にも創り出し、想念の中に生まれている。

『影を踏まれた女』(以下のリンクからご覧になれます)
「あなたの想い込みが 怪異を引き寄せる そんな経験ないですか? 落合正幸 映画監督/脚本家」
https://creators.yahoo.co.jp/ochiaimasayuki/0200037497

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