【南アルプス市】人・物・文化・歴史の交差点〜時代は変われど地域の役割は変わらずに〜
今回は、かつて全国的にも話題になった、南アルプス市寺部地区の「南アルプス完熟農園」跡地に建設が進んでいる、南アルプス市新産業拠点整備事業(ヒカレヤマナシ・コストコ)建設に伴う遺跡の発掘調査報告会へ参加してきました。
会場は、南アルプス市若草地区の若草生涯学習センター。筆者の地元になります。自宅近くでの開催は嬉しい。
立派なホールがあって満員御礼の状況でした。それだけ市民の関心が高いといことでしょう。
報告は南アルプス市教育委員会 文化財課課長補佐の田中氏。熱のこもった発表でした。
発掘調査の様子をスライドで。
発掘ってしっかり測量して行うものなのですね。調査のですから当然と言えば当然ですが、手間を考えるととても大変な作業ということが分かります。
遺跡には、各時代の竪穴住居址300軒以上、方形周溝墓、その他墓、建物跡、井戸、区画溝、道状遺構、粘土採掘溝等々があったそうです。
弥生時代後期から近代に至るまで、2000年間人がそこに居た痕跡があるということは、とても凄いことだと思います。
カマドにも時代によって特徴があるようで。
時代の移り変わりで様々なカマドがありました。
建物跡にも色々。
重なり合う住居。実際に隣り合わせだったわけではなく、時代によって別々に建てられていたとのこと。
人が暮らしていたのですからお墓も当然。
人骨も。
井戸も当時の様子が窺える状態で発掘されています。
当時では珍しい大型の住居跡も発掘されています。どんな人物が暮らしていたのでしょう。
以前ご紹介した記事でも触れました、八田牧と関連づけられそうな馬の歯も出土。
現在の南アルプス市には碁盤の目状の区画整理された跡が残っており、今回の遺跡もそれに沿う形で発掘されているようです。昔の都市計画まで垣間見えるとは。
今回の発掘は、時間や天候による制約、その他様々な困難があったと思われます。しかし、発掘調査に当たった方々の情熱と頑張りが、今回の報告会に繋がったと言えるでしょう。
報告の後は、ふるさと文化伝承館館長の中山氏と山梨県考古学協会会長の新津氏のこれまた分かりやすい解説があって、予定の時間が過ぎてましたが、もう少しお話が聞きたかったです。
会場には実際に出土した品が展示されていました。
様々な時代の土器等。
文字が書かれている土器。その当時の人間が、何の目的で書いているのか?どんな気持ちだったのか?相変わらず想像することが楽しくてたまりません。
こちらも以前ご紹介した記事にもありましたモモ核(種)。
発掘作業に関する解説も展示されていました。ただでさえ多忙な文化財課の皆さんですが、このような市民目線の関心を高めようとする姿勢には、いつも頭が下がる思いです。
実際の現場の様子です。
中部横断道南アルプスICの正面。西に櫛形山全体が拝めます。
通りから敷地内に残る遺構が一部確認できますが、平日は工事が進んでいるので見学することは難しいと思われます。工事の進捗によりこの遺構もじきに見られなくなると思いますが、工事の妨害になるような行動は無いようにお願いいたします。
同地域は、東海地域から長野方面との中間点に位置し、古くは2000年以上前から人の営みがあって行き来があり、物が集まり広がって、文化が交わり伝わって、時代が変われど同じ地域で人が栄えてきたという事実があります。そして現代では、新しくヒカレヤマナシによる地域交流エリアと大型スーパーのコストコの出店により、歴史が繰り返されようとしています。それは単なる偶然ではなく、地域の利点を生かした必然の流れなのではないでしょうか?来年春の開業を楽しみに待ちたいと思います。
【南アルプス市新産業拠点整備事業(ヒカレヤマナシ・コストコ)建設に伴う遺跡の発掘調査報告会】※終了しました
場所:若草生涯学習センター 山梨県南アルプス市寺部725-1
日時:令和6年1月14日(日)13:30〜15:00
問合せ:南アルプス市教育委員会 文化財課 TEL 055-282-7269
【国の重要文化財205点 全点一挙展示】
場所:南アルプス市ふるさと文化伝承館 南アルプス市野牛島2727
期間:令和6年1月末まで!
開館時間: 9:30〜16:30
入館無料
休館日:毎週木曜日(この日が祝日の場合は翌日休館)年末年始
問合せ:TEL 055-282-7408 FAX 055-285-7113