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【富田林市】粟ヶ池はなぜ「公園」ではなく「共園」なのか? 意外な事実が分かりました

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

富田林市の北側、近鉄喜志駅の南側には、粟ヶ池(あわがいけ)があります。市民会館隣の市民の憩いの場。近鉄長野線でも富田林駅方面から古市方面に移動している最中に、右手を見ると粟ヶ池が見えます。

この周りは、ご存じのとおり粟ヶ池共園。なぜここが『公園』ではなく『共園』なんでしょう? とても気になって、調べてみました。

まずは粟ヶ池の概要をおさらいしましょう。池の周りの堤の長さは710メートル、満水のときの面積は6.6ヘクタールに及びます。これは富田林ではもちろん、南河内地域全体を見ても、有数の規模を誇る灌漑(かんがい)用のため池。

池の形が長方形をしているのが特徴で、その四方を堤防で囲ってあります。

池の北側には、1975(昭和50)年に富田林市市民会館(レインボーホール)が作られました。そして2019(令和元)年、利便性を考えて、池の真ん中を横断するように粟ヶ池大橋が架けられます。橋ができたのは、まだそんなに時間が経っていません。

粟ヶ池自体の歴史は、想像以上にとても古いんだそうです。あの古事記の仁徳天皇の段に「丸爾(まるに)池を作る」という記述があるのだとか。

日本書紀でも、仁徳天皇や推古天皇を紹介する記述の中に「和珥池(わに)を作る」と登場し、この和珥池が喜志村(富田林市喜志)にあったものではないかという資料も存在しています。

また、その時代の別の古い資料にも「和珥池附粟ヶ池」という記述があるのが確認されており、現在の粟ヶ池ではないかとされています。しかしながら、現時点では、粟ヶ池がそうだとは明確には確証されていません。

2005年と2010年に大阪府が行った発掘調査では、13世紀に古い堤に変わって新たに東西の堤防が築かれたということが判明しており、少なくとも相当古くからこの場所にため池があったことだけはうかがえます。

かつての粟ヶ池は今よりももっと大きかったそうですが、1990(平成2年)に、池の北東部と南端が埋め立てられました。そこに、粟ヶ池共園が整備されます。

スマホの画面では見えにくいので一部拡大しました。
スマホの画面では見えにくいので一部拡大しました。

では、公園ではなく共園と使っている事例が他にないか検索してみました。それが次の結果です。なんと検索上位は、すべて富田林市の粟ヶ池共園が出てき来ました。つまりそれほど『共園』という表記を使っているのが珍しいということ。

当初は、富田林市市民会館と公園が共存している意味ではないかと、予想しました。

でも本当にそれが正しいのでしょうか? 公園とホールが一体となっている場所は、全国にいくらでもあります。こうなるとどんどん気になりましたが、いくら調べても情報が出てきませんでした。

それならばと、富田林市役所関係部署の方に質問したところ、お忙しい中、担当者の方が調べてくださいました。

それによると、今から26年前、1995(平成7)年に大阪府が発行したパンフレットがあるとのこと。そこに共園という名前を付けた理由について、書かれていました。以下引用します。

「共園は、府民の共に快適環境づくりに取り組む姿勢に支えられ"都市と農業との共生"  "自然と人間との共生"  "内(ため池)と外(周辺地域)との共生"をめざした"共生(ともいき)する快適空間"を創造するもので人々にアメニティレクリエーションの園、自然豊かな園、コミュニティの園を提供することをめざした空間を意味します」

つまり、共園とは『都市と農業』『自然と人間』『ため池と周辺地域』の共生を目指した快適空間のこと。単なる公園ではなく、富田林を象徴する意味も込められていました。

このコンセプトで整備された粟ヶ池共園、改めて行って眺めると、また違った顔を見せてくれるかもしれません。

粟ヶ池共園
住所:大阪府富田林市粟ケ池町2丁目
営業時間:8:00~21:00
定休日:無休
料金:無料
アクセス:近鉄喜志駅から徒歩11分

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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