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【河内長野市】河内長野駅前にあるクスノキの隠れた歴史!駅前再開発に抵抗した人々の足跡を探る

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野駅に限らず、駅前のロータリーには観光案内ボード以外に、モニュメントやときには歴史的な史跡があることが多いもの。しかし普段は通勤通学などであわただしいので、何があるのかあまり気にせず通り過ぎることがほとんどではないでしょうか。

でも少し立ち止まってモニュメントや祠などを見て、さらにその経緯を調べると、今まで知らなかったその町の歴史を知るきっかけになります。

たとえば河内長野駅前にあるこちらの時計台。時計の上ではふたりの銅像がポーズをとっています。時計の下を見ると「希望に燃えて」と書いてありました。

そしてその下を見ると、この時計台を寄贈した団体組織の名前、河内長野ロータリークラブ、河内長野ライオンズクラブ、河内長野東ロータリークラブと書かれており、この3団体が寄贈した時計台のモニュメントでした。

子供たちが手を伸ばし飛び出そうとしている姿は、確かに希望にあふれているように見えます。

河内長野駅前で、そのモニュメント以上に存在感があるのがこちら。駅前ロータリーのビル群の中にひときわ大きな大木があります。周辺のビルを圧迫しているようにも見えますが、大木だけならそこまで気になりません。

ところがこの大木は、よく見ると、ご神木として祀られていました。

それがこちら。木にはしめ縄が付けられており、また手前に小さな祠が。つまりこの大木は、神聖なものであることを意味しています。

ちなみにこの大木は、クスノキです。クスノキは虫害や腐敗に強く、木から取れる精油には薬用効果があるそうです。

また虫除けにもなるので、厄を払う、厄を除けるに通じると言うことから、ご神木として太古から多くの神社に植えられたとか。そのほか煙害にも強いため、街路樹でもよく使われているそうです。

祀られている神々の名前が書かれている石碑が、大木の横にありました。4柱(はしら=日本の神々の単位)の神が祀られています。それぞれの神の名前から、どのような神様が祀られているのか確認しましょう。

まず左端の白龍大神とは、龍神または白蛇の神様。次に白玉大明神は、白狐(びゃっこ)を意味するらしく、ここから狐(きつね)つながりで、稲荷系の神様と推定されます。

そしてその右横に書かれている楠姫大神、楠姫大明神は、クスノキそのものが御神体。さらに楠姫神について、同じ神を祀っている別の地域の神社では、子宝、子授けの御利益があると紹介されていました。

引用:YAHOO!地図
引用:YAHOO!地図

この楠の神木を調べていくうちに、ある事実が分かりました。それは河内長野駅の再開発にもかかわること。河内長野駅は、1898(明治31)年に当時あった高野鉄道の長野駅として開業しました。

それから紆余曲折があり、最終的に現在の南海高野線と近鉄長野線のターミナル駅になったのは、1947(昭和22)年のことです。そして周囲の町と合併して河内長野市になったのを機に、1954(昭和29)年に河内長野駅となりました。

クスノキは、かつては複数本並んでいたそうで、駅前から西に向けて並木道になっていました。それは七つ辻交差点までの間の範囲。地域の人々はそのクスノキを守護神として崇め奉って(あがめたてまつって)いました。

その後、木造駅舎を鉄筋コンクリートに改築したことを皮切りに、1989(平成元)年、ノバティながの建設など、駅の西出口周辺の再開発が行われます。この際の計画では「クスノキの並木道をすべて伐採する」と決められました。

しかし、この計画に地元の皆さんが猛反発! 伐採の反対運動が展開されます。「木を切るなら私の首を切れ」とまで言い出す人がいたとか。

その結果の話し合いで、1本の巨木だけ残すことで和解します。こうして残った1本の木を神木として、しめ縄が張られ、祠が安置されました。現在も神の宿る神木として信仰の対象になっています。

クスノキの近くに来ると、マスクで感じにくいものの、今もどことなく上品な香りが漂っています。また5月から6月にかけては、小さな白い花が咲くとか。また木の周りが少し盛り土になっているのは、再開発前の地面の高さなんだそうです。

もし河内長野駅前を通るときがあったら、少し足を止めて、地元の人たちにこの上もなく愛されている、この神木をじっくりと眺めてみてはいかがでしょうか?

河内長野駅前のクスノキ
住所:大阪府河内長野市本町29
営業時間:24時間自由入場可能
定休日:無休
料金:無料
アクセス:南海・近鉄河内長野駅西出口すぐ

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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