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【河内長野市】2ヶ月前の予約必須!観心寺文化財建物内で味わう創作精進料理「KU-RI」の旨すぎる魅力

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野の名刹、観心寺に行かれたことのある方は、観心寺バス停側の門の前に気になる看板が出ているのに気づかれたのではないでしょうか。創作精進料理「KU-RI」、しかも予約制と書かれています。

調べてみると、NHK「美の壷」、「婦人画報」をはじめ、観光情報誌など多数のメディアで取り上げられている予約の取れない名店であるとわかりました。

「すごい!」これは体験しなければということで、9月に予約を取ることができ、11月のある日、ようやく訪問することができました。

その昔、観心寺内に「子院(しいん)」という小さな寺院が多数あったそうで、KU-RIさんは、そのうちのひとつである旧槙本院(まきもといん)の庫裡(くり:僧侶が生活する場所であり、寺院の台所と言われている)を改装して、2016年に開業されました。

旧槙本院の庫裏は1647年に建築されており、平成の修復工事の時に、中世の資材を使用されていたのが発見されたそうです。同じ敷地内には、同時代に建てられた国の重要文化財に指定されている書院、大阪府指定文化財に指定されている持仏堂や中門があります。

予約していた日の数日前にお店から予約確認の電話があり、11時半と12時のどちらをスタート時間にするか聞かれました。

私は12時でお願いしたのですが、観心寺の紅葉を見学していて到着が予約時間ぎりぎりとなった私を、入口でKU-RIのオーナーであり、観心寺の住職さまの奥さま、永島和佳さんが待っていてくださいました。

12時の同じ時間に予約していたのは、女性グループの方たち。食事の前に、重要文化財である建物について、永島さん自らの案内と説明がありました。

天皇やその命令を伝える勅使が出入りする勅使門。いかに格式の高いお寺であるかが、これを見るだけでわかりますね。

屋根の下にちらりと見えるのは、天邪鬼(あまのじゃく)像。これはレプリカなのですが、盗難にあい、50年もの間行方知れずになっていたとか。それがネットオークションで手に入れた人の手によって令和2年9月に寄付され、元の場所に戻されたんだそうです。

欄間(らんま)ひとつとっても、場所場所によって造作が異なり、手の込んだ美しさに目が奪われ続けました。

僧侶が祈りをささげる場所、持仏堂との境の梅板のふすまです。これだけを見ても、歴史が感じられますね。

ベトナム製の螺鈿(らでん)の椅子やテーブルなどが並べられた部屋もありました。

歴史ある観心寺の建物は見ごたえ抜群。さすが高野山真言宗では、総本山、大本山に次ぐ、遺跡本山という高い格をもつ観心寺。建物の見学だけでも十分気持ちが満たされました。

こうして見学を終えると、いよいよ食事の時間。私の予約した前の11時30分からの人たちは、すでに食事をされている途中でした。床に直接座る席もありましたが、私は椅子式のカウンター席を案内されます。

このときに店内を見渡しました。伝統的な日本の建物なのに、どことなく北欧風の雰囲気があります。これも後ほど永島さんに質問してみました。すると次の回答をいただきます。

「お店のコンセプトは、国宝である観心寺金堂の特徴である折衷様(和様式と中国からの禅宗様のミックス)を取り入れています。つまり古いものを新しいセンスとミックスすること。日本文化をリスペクトしていた100年前に誕生した北欧のデザイナーのセンスと、450年前の日本のインテリアの折衷です。そのための北欧ビンテージの小物たちは、プロデュースしてくれた知人のアイデアで、開業にあたって揃えました。また提供する食事も、高野山に準じる精進料理と新しいセンスの折衷としています」(永島さん)

今からいただく料理に関しても、伝統的な高野山に準じる精進料理だけではなく、新しいセンスを加えた創作精進料理ということだったのですね。

店内はオープンキッチンになっていて、昔から使われていたへっついがあり、これを利用した蒸し料理が名物。その料理を担当するのは、住職の妹さんである松永有紀子さん。漢方養生指導士、ジャパンテーブルアーティスト、野菜ソムリエの肩書をお持ちです。

いよいよ食事が運ばれました。精進料理ということで、もちろん「なまぐさ」と言われる肉や魚は使わないのですが、本来野菜に位置づけられるものでも使用しないものがあります。これは禁葷食(きんくんしょく)と呼ばれる仏教思想によるもの。

「葷」(くん)と呼ばれる臭いの強い野菜類は、修行の妨げになるという理由で精進料理では使いません。より具体的には「ネギ、ラッキョウ、ニンニク、タマネギ、ニラ」の5品目で、これを五葷(ごくん)と呼んでいます。

参考画像:タイの精進カレー
参考画像:タイの精進カレー

ゆえに、日本やアジアの仏教国の精進料理のカテゴリーを、世界的に見て「オリエンタルベジタリアン」と認識されています。高野山精進料理を基本とするKU-RIさんの料理も、もちろん五葷は使いません。

1人用のせいろを開けると、とたんに白い湯気が立ち上がりました。

蒸しの度合いが相当強いのか、驚くほど柔らかくなった野菜は、そのままでも素材の味がよくわかります。そして備え付けの胡麻だれにつけてと味わうと、さらにうまみが増しました。10数種類はあろうかという季節のお野菜も、あっという間に食べて終えてしまいます。

高野山の精進料理は、「五法」「五味」「五色」を基本としています。そして修行僧が食べる質素な料理と異なり、全国から参拝に来られる方に「ようこそ、お越しくださいました」とお出しする振る舞い料理なのだそうです。

そのため、料理の品数も多く、見た目も豪華。KU-RIさんの料理も、もちろんその流れを汲んでいます。

  • 五法・・・「生(切る)」、「煮る」、「焼く」、「蒸す」、「揚げる」の調理法。
  • 五味・・・「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」
  • 五色・・・「赤」、「黄」、「青(緑)」、「白」、「黒」 

この料理は、「揚げる」になりますね。ホタテと牡蠣のフライに見立てたものです。

「焼く」のカテゴリーの料理。鶏肉に模した大豆ミートと茄子の油淋鶏です。

「煮る」は、大根などのお野菜にトマトソースをかけたもの。

これは、白和えとそら豆の焼いたもの。

「生」のカテゴリーのサラダです。画像ではわかりにくいですが、紫キャベツの下にも数種類の野菜が入っていました。この上にかかっている人参ドレッシングがとても美味しかったので、お土産に買って帰り、家でも楽しみました。

ご飯ものは、「あずき茶粥」でした。観心寺で昔から節分の日に厄除けとして食べられていたもので、御祈祷清浄塩である「北斗の塩」と境内で採られて作られた梅干しが添えられていました。

デザートは、観心寺名物の梅どら。ドリンクはコーヒーなども選べましたが、抹茶ラテにしてみました。

今回他のどの料理もよかったのですが、その中でも特筆すべきはこの精進カキフライです。牡蠣は使えないので牡蠣に見立てて作られた疑似料理。味わってみると本当に牡蠣を食べているかのような触感。ここまでの再現率に見事としかいいようがありません。

これは非常に気になったので、永島さんに「精進料理のレシピは誰かに習われたものなのか、それともオリジナルで工夫されたものか」、そう聞いてみました。すると全てはオリジナルではないけど、料理長といろいろ考えてやっているとのこと。

器に刻まれていたのは、観心寺にゆかりの深い楠木氏の菊水紋
器に刻まれていたのは、観心寺にゆかりの深い楠木氏の菊水紋

精進料理ですから、ボリュームも少なく、あっさりとした料理のオンパレードかなという事前予測は大きく裏切られました。バラエティに富んだ味わい、そしてお腹も心も満足満足の結果となりました。

そんなKU-RIさんですが、永島さんにあえて直球質問をしました。それは2か月前の予約とされている理由です。すると「夕方の情報番組で、各チャンネルすべてで取り上げていただき、予約が2ヶ月先まで埋まってしまったことから」とのこと。

確かにいろんなメディアがKU-RIさんを取り上げたくなる理由は、痛いほどわかりました。

開業前、旧槙本院を単なる文化財の公開とするだけでなく、もっと活用できないだろうかと考えてKU-RIを開業したという永島さん。

開業以来、オーナーの永島さんをはじめ、シェフである住職の妹さん、加えて住職の弟さんの奥さまも運営に参加しており、義理の三姉妹が、天井からぶら下がる3つの照明のように、力を合わせてお店を切り盛りされているのです。

参考画像:河内長野日野地区
参考画像:河内長野日野地区

あともうひとつ気になったことがありました。市内には取れたての野菜の直売所が数多くあります。松永料理長の技術もさることながら、やはり素材も大事。この野菜は地元河内長野のものか聞いてみました。

全ての野菜は河内長野産ではありませんが、河内長野産の野菜は、日野にあるカワバタファームさんと契約されているそうです。

食事を終えて満足したところで、名残惜しいですが席を立つことにしました。今年の10月、開業5周年を迎えられたKU-RIさん。最後に今後の展開について、永島さんに思うところを聞いたところ、次のような回答を頂きました。

「ますます多くの方々にKU-RIを楽しんで頂いて、お寺にお参りに来て頂きたいと思っています。ただ、開店曜日とご利用いただける人数が限られているため、今後はいろんな形でKU-RIの名前が広がることを考えていきます」

予約から実際の食事までは2か月先になりますが、それだけ待っても良かったと思えるKU-RIさんの創作精進料理。ぜひ多くの方に体験してほしいなぁと思いました。

次回の電話での予約は、3月分が1月11日(火)9時より受付です。2月のWEB予約は、12/1 〜/15 日まで受付中。多数応募の場合は抽選になり、12/17日以降に発表をもってご連絡させていただくということです。WEB予約フォーム (外部リンク)

創作精進料理 観心寺庫裏「KU-RI」(外部リンク)
住所:大阪府河内長野市寺元475
電話番号:050-3746-8600
営業日:月・火・水曜日(それ以外は団体の貸切予約日)
営業時間:11:30~15:00(1日限定20食:完全予約制)
アクセス:南海・近鉄河内長野駅からバス 観心寺バス停から徒歩3分

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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