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【富田林市】十日戎のお参りは寺内町で!富栄戎神社の戎まつりは11日まで。神社誕生の由来にも迫る

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

富田林市内に限らず関西から西日本にかけて、1月9日から11日に「えべっさん」こと十日戎(とおかえびす)のお祭りが行われます。これはえびす神のお祭りのこと。十日えびすとなれば、大阪市内の今宮戎などが有名ですが、市内にもいくつか戎神社があります。

そのうちのひとつが、あの寺内町にあるというのはご存じでしたか?それは富栄戎神社(とみさかええびすじんじゃ)という神社。大きな社殿があるわけでは無いので、普段は伝統建築物のはざまで目立たないかもしれません。

しかし、1月9日から11日の「戎まつり(十日えびす)」のときだけは別で、神社の周辺には露店がいくつか並び、参拝客の姿が多く見られます。ということで9日に実際に行ってきました。

さて、十日えびすについて簡単におさらいしましょう。日本にいる八百万(やおよろず)の神々は、旧暦の十月(神無月)に出雲に行くのです。しかし、えびす神だけは、出雲に行かず留守を守るとか。

留守番をしてくれるえびす神に対しての感謝の気持ちから、民衆の間に、1年の無事、五穀豊穣、大漁、商売繁盛を祈願する考えが生まれました。

それが、えびす講という信仰です。商人や漁師たちが中心として、えびす講を作り、えびすの神を祀ります。

えびす講は元々全国にある習わしですが、江戸時代に商業の中心地として栄えた大阪など関西地域がとくに盛んとなり、新年から10日後に行われるお祭りとして発展しました。

1月10日がお祭りとなった理由は、えびす神の誕生日、あるいは、えびす神が稼ぎに出かける日などの諸説があるようです。

ところで十日戎は、大阪市内で事代主(ことしろぬし)を「えびす神」として祀る今宮戎神社や、兵庫県で蛭子(ひるこ)を「えびす神」として祀る西宮神社のように、主に神社でえびす神を祀っているところでの祭礼というのが一般的です。

ところが富栄戎神社はそれらの神社とは少し違います。寺内町の商売人によって作られたえびす講が、えびす神を祀ったものが、今の富栄戎神社の源流です。

かつて寺内町の地下には「底に黄金の水が湧く」と言われ、明治の全盛期には、10もの造り酒屋がありました。

酒造業の同業者によって、江戸時代、寺内町にえびす講が誕生。寺内町内の堺町(堺筋)の東端にえびす神を祀ります。

美具久留御魂神社
美具久留御魂神社

このような経緯から明確な創建年やご祭神は不詳とのこと。事代主系あるいは蛭子系の区別もなく「えびす神」として祀られています。

その後1890(明治23)年に、新しく道路を作るために、御霊を喜志にある美具久留御魂神社(みぐくるみたまじんじゃ)に預けました。

戦後になって、石川から寺内町への入り口にあたる山中田坂(やまちゅうだざか)の上に御霊が戻り、富栄戎神社(とみさかええびすじんじゃ)となりました。ところが、皮肉なことに、そのころから富田林にあった酒造メーカーは次々と廃業。

万里春酒造の建物は現在も社名が残ったまま健在
万里春酒造の建物は現在も社名が残ったまま健在

最後まで残っていた万里春(ばんりのはる)酒造も、1983(昭和58年)ごろには廃業となってしまい、富田林の酒造メーカーは消滅します。

しかし、酒造メーカーのえびす講からはじまった、富栄戎神社は現在も健在。万里春酒造の建物すぐ近く、じないまち展望広場の隣にあります。

戎まつりの間はすぐ横にある、じないまち展望広場も活用されています。

実際に注文したうどんとラーメン
実際に注文したうどんとラーメン

地元の皆さんの協力により、うどんやラーメンが各300円とリーズナブルに提供され、広場にある椅子で食事が楽しめます。

そのほか、神社の境内ではおみくじなどが、周辺は焼鳥やおでん、ゲームなどの数軒の出店、熊手などの吉兆飾りの露店がでています。

なお、この戎まつりは朝9時からスタートし、10日は20時、11日は12時まで行われます。

電車で遠くまで行って参拝する、有名なえびす神社の十日戎も楽しいですが、かつての寺内町の町衆が祀ったえびす神で行われるお祭りは、普段着姿で気軽に立ち寄れて、おすすめです。

富栄戎神社
住所:大阪府富田林市富田林町28-21
アクセス:近鉄富田林駅から徒歩10分

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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