Yahoo!ニュース

【河内長野市】高橋名人達磨一門の神髄をこの河内長野で味わう。麺坊万作南花台本店さんの本格手打ちそば

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

ラーメン屋には家系などの流派があるように、そば業界にもさまざまな流派があるようです。有名なところでは藪系、更科系などがありますが、そういった中でも、そば通が一目置く流派があります。それが達磨(だるま)一門(外部リンク)です。

これは、高橋名人こと高橋邦弘氏を師匠に仰ぐ弟子たちの店の集まり。高橋名人のもとで修業を積んで、その技術を認められたツワモノのそば職人の店ばかりがグループに属しています。

驚いたことに、この河内長野市内に、そば通垂涎(すいえん)の達磨一門に属するそば屋さんがあることを知りました!

それは麺坊万作さん。南花台にある本店と、ノバティ長野にお店を構えていらっしゃいます。これは行かなければと、年越しそばの時期に取材をお願いしたのですが、年末は予約で手いっぱいとのこと。

そして、新そばが本当においしいのは、1・2月の頃とのお話でしたので、2月早々に本店にお話を伺いにお邪魔しました。

麺坊万作ノバティながの店さんの 天ざる 税込み1350円
麺坊万作ノバティながの店さんの 天ざる 税込み1350円

麺坊万作さんは、1986(昭和61)年創業の南花台本店と、2年後の1988(昭和63)年開業の河内長野駅前のノバティながの店があります。

いずれの店もいわゆる「うま味調味料(化調)」を一切使わないのが、麺坊万作さんの大きな特徴。しかし、達磨一門の味である二八そばを味わえるのは南花台本店だけです。

麺坊万作さんの南花台本店は、南花台3丁目と4丁目の間くらいのところにあります。南花台3丁目南バス停から歩いて3分ほどで店の前に行けます。

UR南花台団地の一部跡地を利用した、サッカースタジアムと公園等になる予定の場所が、交差点を隔てたところにあるという好立地。周囲には、味に定評のあるパン屋さんやお米屋さんなどが立ち並ぶ一角です。

事前の情報では、昨年の3月にリニューアルされたとか。確かに、1年近くたった今でも真新しい雰囲気の外観です。

今回はお昼の営業時間後に、店主さんにお話をお伺いすることになっています。しかし、食べないことには話にならないと、営業時間中にお邪魔して、先におそばをいただくことにしました。

店内の様子です。こちらはオープンキッチンのカウンター席です。

テーブル席です。今回は、テーブル席に座らせていただきました。

こちらは小上がりの座敷席です。お子さま用の椅子も用意されていますね。ご家族連れにピッタリのお席です。

天井も撮影しました。河内長野産のブランド河内材を使った高い天井は、とても温かみがあります。

さて、いただいたのは、天二八(税込1600円)です。ツルリとしたのど越し、合わせるそばつゆとみごとに調和のとれた旨味。また天ぷらとそばつゆとの相性も抜群です。気が付けば、あっという間に平らげてしまいました。

こちらは同行者が注文した万作セット(税込み:1030円)です。そば以外にもうどんや丼物メニューがあるので、アレルギーなどの理由でどうしてもそばが苦手な人と一緒に食事をするときでも安心ですね。

蕎麦湯が来ました。お茶の後にいただきましたが、そばの香りが立ち上り、この寒い時期にはほっとする温かさ。

食事を済ませた後、いったんお勘定を済ませて外に出て、ランチ営業終了後のお約束の時間に改めて訪問。お話をお伺いしたのが、高橋名人の元で修行を積まれた二代目で現店主の中野宏茂(ひろしげ)さんです。

創業当初から地域の人たちに愛され、味に定評のある万作さんですが、当初は自店での機械打ちのそばを提供しており、店内で手打ちするそばはありませんでした。

ひとつの転機が訪れたのは、大学生4年生だった中野店主が将来店を継ぐことを考え、その前に就職活動をしようかというときのこと。

天野酒:西條酒造
天野酒:西條酒造

それは、高橋名人との運命の出会いでした。天野酒さんで行われた蕎麦会のイベントのために、高橋名人が河内長野に来たのだそうです。

その蕎麦会に出席して感銘を受け、弟子入りを志願した中野店主。高橋名人のところで修業できる人数は限定されていて、欠員ができると新たに弟子になれるという狭き門であったのですが、たまたまそのタイミングに当たったという運命としか思えない流れに。

1994(平成6)年、修行のために、当時高橋名人が店を構えていた山梨に向かいました。

「師匠の元にある弟子用のベッドが空くと、入門が許されるんですよ」と中野店主。修行中に先代の体調が思わしくなくなり、急きょ河内長野に戻ったそうですが、その間で学んだことは、今振り返ってもとても大きかったとか。

大阪市内に店を構える同じ達磨一門、著名そば店であるなにわ翁さんより2年兄弟子でもあるそうです。

修行中のエピソードとして、休みのたびに毎週のように東京のそば店の食べ歩きをして回ったという中野店主。そうしているうちに、達磨一門に所属する店のそばは、他と比べて別格だとも感じたそうです。

こうして、高橋名人の元で手打ちそばの技術を学んだ中野店主は、23歳の時に二代目となり、南花台本店のメニューに、二八そばを追加しました。

「師匠は本当に合理的で完璧な人。隙が無いといいますか、すべての作業に意味があるんです。自分が店を持ってから、師匠の凄さをあらためて感じました」と中野店主。偉大な師匠のことを熱く語られていました。

また現在も高橋名人や達磨一門の仲間たちとの交流があり、現在は大分に店を構える高橋名人の元に定期的に集合して、情報交換を行っているそうです。

左のお盆は、花かつお(右上)、うるめ(左上)、さば(右下)、めじかかつお(左下)
左のお盆は、花かつお(右上)、うるめ(左上)、さば(右下)、めじかかつお(左下)

次に、麺坊万作さんの味の秘訣についてお話を伺いました。そば店で味のかなめとなる出汁についてですが、中野店主は厨房から画像のものを持ってきてくれました。左側に複数の削り節、右には北海道産昆布と2年ものの本節です。

万作さんの特徴として、2種類の出汁が用意されているとか。それは先代が編み出した関西出汁と、中野店主が高橋名人から学んだ関東出汁です。

ノバティ店や南花台本店の通常メニューでは関西出汁、本店の二八の手打ちのときだけは関東出汁と、使い分けているそうです。いわばそばに合わせて二重の手間をかけているわけで、なかなかそこまでしている店はとても少ないのだとか。

そば業界ではいちばん人気の茨城・常盤産のそばの実
そば業界ではいちばん人気の茨城・常盤産のそばの実

次にそばの話をお伺いすることに。ここでは実際に新そばの実を見せてもらいました。まだ緑色のそばの実ですが、この色がやがて茶色に変わっていくとのこと。

そばの実は、かつて保存食として修験道の行者やチベットで重宝されていて、生のままでも食べられるそうです。

左が茨城・常磐産、右が福井・丸岡産
左が茨城・常磐産、右が福井・丸岡産

「北海道では8月から、本州では11月がそば収穫の最盛期。一般的に、新そばのシーズンは年末までのイメージがあるかもしれません。しかし、実は春先まで状態が良く、収穫から1・2か月経って味が落ち着いた、年初から2月ごろまでのものが最高の味なんです」

と、中野店主は熱く語ります。

福井・丸岡産はやや小粒
福井・丸岡産はやや小粒

2種類の産地のそばの実をブレンドして使っているのですが、その理由として産地を絞ってしまうと、もし不作になってしまうと入手に影響が出るからだとか。また、手打ちするときの気候などに合わせて、より良い状態にブレンドして使っているのだそうです。

こちらは手打ちそば用の石臼です。この石臼は25年以上前のもので、蟻巣(ありす)石を使用しています。見た目50センチ以上はある、とても大きなものでした。

蟻巣石の特徴として、名前の通り構造が蟻の巣状になっているのが特徴。これは熱を持ちにくく、蕎麦の風味を壊さずに甘皮までしっかりとひいてくれるとのこと。現在、蟻巣石は採取が困難ともいわれており、貴重品となっています。

ここで、ひとつ素人ながらの疑問が頭に浮かびました。手打ちそばのメニューには、二八そばしかありません。「十割そばは打たないのですか?」

中野店主は腕を組み、静かに口を開きます。「レギュラーで十割は打ちません。それは十割よりも二八の方が食感が良くて美味しいと思っているからです」

言われてみて初めて、今まで食べたそばを振り返り、確かにそんな気がしました。

以前、あるそば屋さんが打つそばで、十割と二八の両方をいただいたときのこと。もちろんどちらもおいしかったのですが、十割には口当たりに若干の抵抗があるのに対し、二八はツルリと喉の奥にストレートに入った食感の良さがあることを思い出しました。

ただし、十割そばを全く打たないということではなく、はいわゆる限定商品として出すことがあるそうです。麺坊万作南花台本店では、「限定メニュー」が、下に記したように月に3回あるのですが、月末にある限定メニューの時に、十割そばを出しているそうです。

  • 月初:赤米とデザートの日
  • 中日:うどんで季節ものの日
  • 月末:ざると季節ものの日

つまみを肴に日本酒を楽しみ、〆にそばを食べるというスタイルが手打ちそば店での楽しみではありますが、麺坊万作さんの南花台本店では意外にもお酒を飲む人が少ないとか。

それは車で来る人が多いからで、また高橋名人直伝の手打ちそばを目当てに来るグルメ系のお客さまも、大変多いそうです。

最後に今後の夢や目標を中野店主にお伺いしました。すると意外にも「特にない」とのこと。「むしろ毎日できるだけ、変わらないものを作り続けたい」とおっしゃいました。

もし時が経ち、お客様がご無沙汰していても、かつてとブレることなく変わらない万作さんの二八そばの味を出し続けるということ。簡単なようで意外に難しい、そば職人・中野店主のこだわりを強く感じました。

麺坊万作南花台本店(外部リンク)
住所:大阪府河内長野市南花台4丁目13-2
電話番号:0721-63-6020
営業時間:11:00〜15:00 17:00〜20:00
※2022年2月6日現在、まん延防止等重点措置のため営業時間が変わります。
定休日:月曜(祝日は営業)
アクセス:南海三日市駅からバス南花台3丁目南バス停から徒歩3分
Instagram

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

奥河内から情報発信の最近の記事