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【富田林市】伝統建築独特のデザイン、虫籠窓を知っていますか?寺内町で27日まで無料特別展示しています

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

虫籠窓(むしこまど)と聞いて、何のことかすぐにわかる人はどのくらいいるでしょうか。答えをいえば、トップ画像のような窓のことを言います。これは窓枠に目の細かい縦格子が等間隔に並ぶようにつくられたもの。

この格子を虫籠格子(むしこごうし)といい、虫籠をイメージすることからこの名前が付けられたのだそうです。

この虫籠格子のデザインを採用した窓、虫籠窓は江戸時代から登場し始めたとかで、町家の中二階に主につけられています。二階建て民家が建て始められる大正時代やガラス窓が普及する昭和の頃までは、主流だったとか。

このように、虫籠窓は町屋建築の中二階(厨子二階)に多く見られるものです。虫籠窓以外にも虫小窓とか、竹を編んで作られる蒸子(むしこ)にも似ているということで、蒸子籠とも呼ばれることも。

時代劇で登場するような建物も、建物の上の部分をよく見ると虫籠窓になっているものが多いはず。

例えば寺内町を歩いているとわかりますが、いろんな形をした虫籠窓の存在に気づきます。

今回、ここで虫籠窓を取り上げたのは寺内町でイベントがあるからです。寺内町センター(旧杉山家住宅前)では、2月27日まで、無料で虫籠窓を知り楽しむ展示を行っています。

さっそく見てきました。寺内町センターの1階の奥の展示室には、いろんな虫籠窓が展示されています。

ただし建物の中二階部分の窓枠ですから、現物ではなくあくまでレプリカ。それでも展示室に入れば、今まで気づかないような虫籠窓の種類の多さに驚きました。

学芸員の金坂(かねさか)さんによると、展示しているのは上記に書いた通り本物の虫籠窓ではありません。ほんものを縮小しただけにしか見えないレプリカは、学芸員さんたちの努力と労力で作り上げ、この展示会を開催することができたんだとか。

実際のものを撮影しコピーしたりしたものを厚紙などに貼って切ることで、よりリアリティに富んだものに仕上げたとのこと。その努力には頭が下がります。

歴史を改めてみてみると、江戸時代初期に、小さな楕円形をした虫籠窓が町家にとりつけられはじめたとか。京都や大坂(大阪)、奈良から始まってどんどん西日本方面に広がっていったそうです。ちなみに今回の展示では、寺内町以外の西日本各地の虫籠窓も展示していました。

話しが前後しましたが、虫籠窓が作られた目的は、通風や採光のためです。また、設置された中二階には物置や使用人の部屋があったとか。

また江戸時代の町家が中二階建てだったのは諸説ありますが、民家が高い建物の場合、町人が武士を見下ろすことにつながり無礼だからと。窓も虫籠のように縦格子を付けたという説もありますが、定かではありません。

虫籠窓は時代とともに形が変わったそうで、楕円形だったものが、明治時代になると矩形(長方形)に変わったとか。つまり虫籠窓の形状を見ると、その建物が江戸以前のものか明治以降のものかもわかりますね。

今回の特別展示では、寺内町以外の各地の虫籠窓を紹介しています。特にこちらの「宝珠」は、三重県亀山市の東海道・関宿に残る虫籠窓だそうで、1865(慶応元)年に建築された建物につけられたとか。

その建物は亀山市の有形文化財「旅籠玉屋」です。

虫籠窓の縦格子は、角材を芯に綱を巻きつけて土を盛りつけたもの。そのため開閉はできません。その代わり最小限の光と風が入ってきます。もし中二階から外の世界を見ると、上の画像のように見えることになります。

虫籠窓は大正、昭和以降に衰退し、しっかりとした二階、ガラス窓の住宅に置き換わりました。ところが金坂さんは意外なことを言います。「このデザインを現在でも取り入れることはあるようです」とのこと。

新しい建物でも虫籠窓を意識したものがある
新しい建物でも虫籠窓を意識したものがある

たとえば注文住宅の場合、依頼主が自由に家を設計できますが、そこに虫籠窓を取り入れる人もいるそうです。かつてのような目的ではなく、そのデザイン性が受けているからとかで、個性豊かな住宅のアイテムとして今なお虫籠窓は健在なのです。

もし今からマイホームを考えているのなら、虫窓籠もデザインアイテムのひとつに検討しても面白そうですね。

一通り、虫籠窓の説明と展示物をみました。金坂さんは「美術作品のように楽しんでください」とおっしゃっていました。ということで、会場を出た後に実際に寺内町の虫籠窓を見てみることにしました。

今までは町の雰囲気や主に一階部分の木造建築にばかり目が行きがちでしたが、今回は中二階の虫籠窓ばかりに注目して街を歩いてみました。

例えばこちらにあります。説明からして明治以降のものでしょうか?

と思えば、こちらは楕円形に近い虫籠窓なので江戸時代のような気がします。

こちらも古そうですね。非常に小さな虫籠窓。入ってくる光も少なそうです。

と思えば、こちらは窓の中が外になっています。庭になっているのでしょうか?こうやってみていると、いろんなスタイル、デザインががあって見飽きません。

虫籠窓からガラス窓に置き換わったということだったのですが、ガラスを入れながら、虫籠窓の雰囲気を残した建物もありました。

さて、無性に虫籠窓が気になったので、寺内町以外の場所にはないかと過去撮影した画像を見ると、続々出てきましたので参考までに紹介します。

奈良県橿原市の今井町
奈良県橿原市の今井町

こちらは富田林と同じ、寺内町が残る奈良県橿原市の今井町の虫籠窓。

山口県の柳井
山口県の柳井

こちらは山口県柳井市にある古い街並みにある建物です。こちらは少し形は違いますが、虫窓籠の雰囲気がありますね。

羽曳野市にある虫籠窓
羽曳野市にある虫籠窓

また富田林の近くにありました。こちらは羽曳野市にある民家の虫籠窓です。

河内長野市にある虫籠窓
河内長野市にある虫籠窓

これは河内長野市にあるものです。酒蔵の建物の中二階にあった虫窓籠です。

このように今まであまり気にしていなかった虫窓籠、改めてその個性豊かなデザインに、目からうろこの想いです。

寺内町センターでは無料で27日まで虫籠窓の特別展示を行っています。機会あればぜひご覧いただき、今までとは違う寺内町の見方を楽しんでみてはいかがでしょうか?

虫籠窓特別展示(寺内町センター)
住所:大阪府富田林市富田林町15−4 
電話番号:0721-23-6117
営業時間:10:00~17:00
定休日:月曜日
アクセス:近鉄富田林駅西口から徒歩8分

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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