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【富田林市】オーダー後に焙煎してくれるコーヒー豆のスペシャリスト!寺内町の珈琲豆の蔵「平蔵」さん

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

「食後に頂くこれは、胸の中を爽やかにしてくれる」幕末に幕府の役人としてヨーロッパに向かう船上にいた渋沢栄一が、毎日楽しみにしていたのがコーヒーだったとか。

その当時は貴重品であったコーヒー、今では気軽に買える缶コーヒーから、コンビニ、バリスタに淹れてもらう本格的なもので、さまざまなレベルやタイプのコーヒーが楽しめる時代になっています。

そんなコーヒーですが、オーダーを受けてから焙煎するという、特別なコーヒー豆を販売しているお店が寺内町にあります。その名前も珈琲豆の蔵「平蔵」さん。

私はこれまで何度か通って自宅用にコーヒー豆を購入していましたが、今回思い切って取材を申し込むと、気軽に応じてくださいました。

平蔵さんがオープンしたのは、2013(平成25)年の1月20日。もともと同じ寺内町にある「手仕事と雑貨 23番地.」さんが営業していた場所でしたが、23番地さんが移転したため、その後に入居されました。

イタリアレストランのオアジ(oasi)さんなど、複数のお店がほぼ同時にオープンしたそうで、寺内町の古民家に店がいっきに増えたころのことです。

店内に入ると古民家の中に大きな焙煎機があります。現在はコーヒー豆販売専門として、12〜3種類の豆を常備し、お客さまからオーダーいただいたコーヒー豆をその場で焙煎してくれます。また、コーヒー豆購入や淹れ方などのアドバイスも行ってくれます。

「個人差があるからコーヒーのおすすめは言えません」と平蔵さん。もしおすすめを聞かれたら、まずその人の好みを聞くそうで、酸味、コク、味の濃さなどの好みを伺ったうえで、その人にあったコーヒー豆を選んでくれます。

さて、改めて平蔵さんの過去の経歴をお伺いすると、驚きました。店に鎮座する焙煎機の存在やスペシャリストとしての豆の選定のすごさなどから、てっきりどこかのコーヒー会社に勤めていた人か、どこかのカフェで修業を積んだ人だと思っていました。

ところが、実際には脱サラとのこと。異業種からの参入で、一からコーヒー専門店を始めたそうです。

その理由を聞くと、もともと平蔵さんがコーヒー好きというのもあったそうで、脱サラするときに何ができるのだろうかと考え、当初は食事も出すカフェ営業を検討したそうです。

しかし、いろいろ検討していくうちあることに気づきます。「料理を出すカフェは、体力がいる。だが、ドリンクだけなら老後もできなくはないから、長く続けられる」と。

その矢先、理想とした焙煎済みのコーヒー豆の仕入れ先が意外にないこと、また大阪市内昭和町にある「うさぎとぼく」というお店が、焙煎機を使ってコーヒーを出しているのを知ります。このお店は、某グルメサイトで大阪カフェナンバーワンにも選ばれた名店。

「よし、うちも焙煎機を置いてみよう」と、店内に焙煎機を置いたコーヒー専門店を目指すことになりました。

そこにあった理由のひとつが、コーヒー豆の回転率の問題。つまり店を回していくために、一度に大量の豆を仕入れることになるのですが、焙煎済みのコーヒー豆の状態が良いまま、すべて処理できないのでは?となったのです。

焙煎を終えたコーヒー豆は、豆の状態であれば粉状にしたものよりは味が保てるとはいえ、それでも期限に限りがあります。平蔵さんは「劣化したコーヒー豆は出したくない。仕入れのロスなどを考えたら、多少高くても焙煎機を置いた方が効率的」と考えました。

つまり必要な分だけ焙煎する。焙煎前の生豆はけっこう長持ちするということで、この方法で行うことになりました。そしてメーカーとの運命の出会いが!

あるきっかけで、京都伏見にあるダイイチデンシさんで自動焙煎機を開発していることを知りました。ちょうどダイイチデンシさんでは新しい焙煎機「NOVOMARKⅡ」を開発したところ。この焙煎機は一般のカフェ向けに製造した新タイプだったのです。

平蔵さんはすぐさまこの会社と交渉し、メーカーを説得のうえ第1号機として購入しました。新製品発表と同じタイミングで契約したというのですから、思い切った決断と熱意、交渉力!

こうして平蔵さんは、焙煎機を手に入れ、コーヒー豆焙煎に特化した店としてオープン。コーヒー豆販売とカフェ営業も行うようになりました。

ここで焙煎と共に重要となってくるのがコーヒーの淹れ方。開業前にメーカーの指導を受けたのですが、このとき考えたのは「世間と同じじゃダメ」ということ。一時的な流行やブームに乗って同じ方向に行くのではなく、昔ながらの正統派の淹れ方にこだわるということ。

コーヒーを淹れる時に、お湯の温度で味が変わることはよく知られていますが「コーヒードリッパーも、メーカーによって味が変わるんです」と平蔵さん。信じがたいですが、メーカーによってあっさり味になったり、コクのある味になったりするそうです。

こうして寺内町で店を始めた平蔵さんですが、最初の2年ばかりは営業を行いながら、あることをしていったそうです。

「焙煎するごとに毎回、季節のデータをとりました。日本は四季があるので、温度や湿度などによって焙煎の設定を変える必要があります。そうしないと味が大きく変わりますから」と静かに語る平蔵さん。

開業2年たってようやく季節のデータが揃い、ようやく温度による焙煎の調整がスムーズにできるようになったそうです。

また今のように2月のような厳冬期、余りにも気温が低いと焙煎に影響が出てうまくできないので、そんな日は店を臨時休業するとか。コーヒー豆へのこだわりは半端ではありません。

そんなコーヒーのスペシャリストの平蔵さんですが、オープン当時はSNSもなく不安だったそうで、当時はスペシャルティ・コーヒーブームの頃だったのも気がかりだったとか。

「どんな達人でも最初は素人だ!」と平蔵さんはそう自らを奮い立たせながら、日々を過ごしたそうです。「うちには焙煎機という機械職人がいる、これはコーヒー職人を雇うよりも安い」とも言い聞かせたとか。

こうして開業して10年目に入った平蔵さんは、今ではスペシャリストとして、こう胸を張ります。「100点を目指そうとすれば80点は機械がしてくれる。残り20点を調整次第で点数を稼ぐのが僕の仕事です」と。

扱っている豆は多種多様で、東南アジアやオセアニアなど、他の店で普段見ることのないような国のものがあります。これについて平蔵さんは「大手メーカーで仕入れると同じ国になり、味が同じになってしまう。そんなものをうちで仕入れる意味はないのです」とのこと。

どこまでもオリジナルにこだわる平蔵さん、目下の悩みは豆の価格があがっていることだそうで、開業当初の10年程前と比べて、1.2〜1.5倍になっているそうです。

それでも機械があるから、ロスが少ないのでずいぶん助かっているとか。

購入の流れですが、豆の注文をしてから15〜20分くらいで焙煎が終わり、焙煎したてのコーヒー豆を手に入れられます。

そうして購入したコーヒー豆の保存方法についても教えてもらいました。空気の入らない密閉状態なら常温でも1,2週間は持つとのこと。タッパーに入れるなどしてできるだけ密閉し、温度差の少ない状態にすると良いそうです。

店の上を眺めると、ロフトになっていました。かつてはここでコーヒーが飲めたとか。

2021年4月、カフェ営業をしていたころ
2021年4月、カフェ営業をしていたころ

2022年2月現在は、コロナ禍の影響などがあり、カフェ営業を休止しています。将来的に復活するかもしれないとのこと。飲める場所はここの他、店の奥の中庭にもあり、昨年はここでおいしいコーヒーをいただきました。

買ってきた平蔵さんの豆を使って淹れてみました
買ってきた平蔵さんの豆を使って淹れてみました

「寺内町はイベントのときだけ人が集まり、新規のお客様が来ます。そこでどれだけ良さを理解してもらえるか?その結果、そのお客様がリピーターとして目的客になるかが勝負ですね」

と平蔵さんが言っていたのを思い出しながら、家で買ったばかりのコーヒーを淹れてみました。

コーヒーを淹れながら、私もコーヒーが好きな平蔵さんのリピーターのひとりとして、これからも良いコーヒー豆、珍しい豆を平蔵さんで買い、美味しいコーヒーを自宅で飲もうと思いました。

珈琲豆の蔵 平蔵(外部リンク)
住所:大阪府富田林市富田林町23-39 
電話:090-5461-9150
営業時間:10:00~18:00(L.O.)
定休日:火曜日、水曜日 (祝日は営業)
※臨時休業の可能性あり
アクセス:近鉄富田林駅から徒歩7分
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奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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