Yahoo!ニュース

【河内長野市】河内長野市滝畑に残る貴重な茅葺民家。昭和初期のひな人形とのコラボしています

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市内でもっとも南西にある滝畑地区。この地域と言えば、滝畑ダムや岩湧山の存在が有名ですね。しかし、滝畑ダム湖畔の西側に、この地区の歴史を今に伝承する施設があるのをご存じでしたか?

おおよその滝畑地域の範囲を青色で示しました。旧高向村に属しているなかでも、非常に大きな場所で、見た目では河内長野市全体の3割近くを占めているようにも見えます。

他の地域と違い、滝畑ダムが建設されたことにより滝畑地区にあった集落の一部が水没します。その中でも貴重と思われるものなどは山の上に移築されました。ちなみに滝畑ダムより南側はほぼ山岳地帯です。

その移築されたものの中に、茅葺の建物があります。それが河内長野市立滝畑ふるさと文化財の森センターの敷地内にある梶谷家住宅で、河内長野市の指定文化財です。

説明版にあるように、建物自体が大阪府下の他の地域では見られない、滝畑独特の形式の民家だそうです。水没する集落にあった梶谷さんの家を、滝畑ダム建設に合わせてこの地に移築し、18世紀中ごろの姿に復元したとか。

無料で見学できる上に、靴を脱いで部屋の中も見ることができますので、当時の滝畑地区の古民家の様子を見るのにはまたとない場所です。

前置きが少し長くなりましたが、滝畑独特の茅葺の家の中で、3月31日まで雛人形が飾られています。※3月17日追記:4月8日金曜日まで展示されることになりました。

伝統的な古民家と3月の季節だからこその雛人形との相性は本当に良く、いつも以上に癒される空間になっていました。

雛人形はふたつ飾ってあります。ちょうど滝畑ふるさと文化財の森センターの担当者の方とお話ができたので聞いてみたところ、これは市在住者の方からの寄贈とのこと。昭和初期のころの雛人形とのことで、とても貴重なものでした。

富田林寺内町で飾られている御殿飾り
富田林寺内町で飾られている御殿飾り

以前、富田林の寺内町で見た御殿飾りとはスタイルが違うので、気になって質問をしたところ、次のように教えていただきました。

関西では御殿飾りの方が主流でしたが、関東式の段飾りがデパートで売り出されたことの影響で、関西にも段飾りが広まったということのようです。

内裏雛の男女が関東と関西では逆になっているとかで、滝畑で飾られているのは関西式にしている(左、向かって右に男雛を飾っている)そうです。

とはいえ、並んでいるふたつの雛人形を見比べると微妙に違いがあります。まずこちらの向かって右側の内裏雛ですが、背後の金屏風との間に几帳(きちょう)があります。

几帳とは、平安時代の寝殿造りでの室内調度の可動式の間仕切り・目隠しの役目をはたしていたもの。雛飾りで几帳があるのを初めて見た気がします。

もうひとつの飾りの内裏雛などはよく見るものですが、変わったところで三人官女は全員立っています。ふつうは真ん中の人形は座ることが多いので不思議ですね。

五人囃子以下の配列を見ても、向かって右側の雛人形はこういう配列になっていて、五人囃子よりも上段に右大臣と左大臣が並んでいます。

もう片方は、よく見かけるスタイルに近いですね。同じ河内長野市内に伝わって寄贈を受けた雛人形ひとつをとっても、それぞれに個性があるのはこういう機会でないとなかなか見られないものです。

せっかくなので茅葺の家の方にも注目しましょう。天井もよく見かける木造住宅と違って屋根の部分がむき出しになっています。

こちらは箪笥と座布団です。いずれも時代劇などに出てきそうな雰囲気がありますね。

角火鉢(かくひばち)が置いてあります。中に灰が入っていて、灰が飛ぶために蓋がしてありました。

こちらは古い神札のようですが、面白いことに金毘羅さまの神札のようです。

素人目に見ると山に囲まれた滝畑なのに、どちらかと言えば海の仕事をしている人からの信仰を受けている神様のイメージが強い金毘羅を祀っているのには、なにか意味があるのかなと不思議に思いました。またいつか意味がわかればご紹介しましょう。

今回の展示は、雛人形と茅葺の家とのコラボレーションでしたが、古民家の雰囲気がさらによく感じられて、ここまで来た甲斐があったと思いました。

係の方に確認したところ、畳の部屋はダメですが、縁側なら食事や休憩もOKなのだそうです。ということで、私は実際にこの縁側で、河内長野駅構内にあるコンビニで購入してきたおにぎりを。お天気も良く、とても心地よいランチタイムになりました。

最後に茅葺の家のある滝畑ふるさと文化財の森センターへの行き方です。バスで河内長野駅から滝畑ダム行きのバスに乗り、センターと同名の名前のバス停で降りて徒歩8分くらい。

車やバイクの場合は、バス停から上にある滝畑簡易郵便局や滝畑コミュニティセンターの駐車場に車を停めて、そこから徒歩で行くことができます。自転車の場合は、茅葺の家の隣の資料館の前広場に止めることができるようです。
※2022.3.17 追記:滝畑ふるさと文化財さんより連絡があり、上記記事を訂正します。コミュニティセンターではなく直接茅葺民家前の広間前の駐車ができるとのことなので、コミュニティセンターを使わないでほしいとのことでした。

滝畑簡易郵便局ある所からさらに上がっていきます。標識がありますが少し見えにくいので注意しましょう。

また茅葺の家の手前にこちらの建物、研修宿泊施設(旧青少年活動センター)があり、管理事務所もありますが、茅葺の家はここから入れず、まっすぐ進んだところに入り口があります。

こちらが入口です。右手正面に建物がありますが、ここは無人となっており、用事がある時にインターフォンを押せば、下の事務所の人がすぐに出てくださいます。

こちらが入り口を入ったところの広場です。休憩できるベンチがいくつかありました。

入り口の正面にあったお寺の鐘です。茅葺の家と同様に、滝畑ダムにより水没する前の集落にあった貴重なもの、寺の鐘楼や石碑などもこの敷地内にありました。

このほか茅葺の家の横には資料館があり、滝畑の民俗文化についての展示、茅場のことや後醍醐天皇から拝領した菊花の紋、そのほか滝畑ダムができる前の滝畑の水を利用して建設された水力発電の資料など、貴重なものがわかりやすく展示されています。

入場料も無料で受付の必要もなく、自由に見学できるので、3月中に滝畑に行く予定があれば、ぜひ茅葺の家と雛人形のコラボを見に行ってみましょう。

梶谷家住宅(河内長野市指定文化財)
住所:河内長野市滝畑483-3 滝畑ふるさと文化財の森センター内
電話番号:0721-63-0201
営業時間:10:00~16:00(12月から3月)
      9:00~17:00(4月から11月)
定休日:月曜日、祝日の翌日、年末年始
アクセス:南海・近鉄河内長野駅からバス 滝畑ふるさと文化財の森センターバス停から徒歩8分

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

奥河内から情報発信の最近の記事