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【富田林市】秋なのに、なぜひな祭り?寺内町では「後(のち)のひなまつり」実施中。菊の花もきれいです!

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

一般的にひな祭りといえば、3月3日の桃の節句ですね。富田林の寺内町でも、3月は町中でひな人形が飾られていました。

しかし知る人ぞ知る話ですが、関西地方を中心に、秋にもひな人形を飾る風習があったそうです。

これは江戸時代のころに行われていた風習で、旧暦の重陽の節句9月9日に行われる「後のひなまつり(菊びな)」と呼ばれるもの。不老長寿の花との異名を持つ菊の花とひな人形を飾る習慣です。

貞享、元禄年間(1684~1704)年頃に始まったといわれ、四時堂其諺(しじどうきげん)が著した滑稽雑談(こっけいぞうだん)の正徳年間(1711~1716)年について、次のような記述があります。

今また九月九日に賞す児女多し、俳諧これを名付けて後の雛とす

しかし3月のひな祭りのように一般に定着せず、いつしか廃れました。近年になって重陽の節句と同時に復古活動が行われるようになり、寺内町でも取り上げられるようになったようです。

今年の旧暦9月9日を調べると10月4日なのでもう過ぎてしまいましたが、イベントは8日土曜日で二十四節気のひとつ寒露(かんろ)の日に行われます。

いわゆる「じないまち四季物語」の秋版ですね。

メインの日は8日ですが、先行してすでにひな人形を飾っているところがいくつかあるので、実際どういう状況なのか、先日のお昼に寺内町で見てきました。

最初はこちら、旧杉山家住宅です。歌人、石上露子(いそのかみつゆこ)の生家でもある寺内町の中核施設ですね。

おひな様は、お座敷の手前側に飾ってありました。重要文化財に指定された伝統的な建物には、ひな人形がぴったりですね。

ひな人形をじっくりと見てみましょう。重陽の節句に関することなので、おひな様の横には菊の花が飾られています。

桃の節句の場合は、三人官女とか五人囃子といった、いわゆる内裏雛以外にもいろいろ飾られますが、後のひなまつりでは内裏雛だけを飾るようです。

参考:桃の節句の時の雛飾り
参考:桃の節句の時の雛飾り

その理由は、横に置いていた説明書きにありました。内裏雛以外のものを飾る「ひな段飾り」の風習が始まる前から行われていたからなのだそうです。

また人形の虫干しを兼ねて行われていたとも。

桃の節句の時の雛飾り
桃の節句の時の雛飾り

横に飾られている菊がありますが、この菊には綿が乗せられています。これは木綿よりも古くから存在した真綿(まわた)。動物性で蚕(かいこ)から取れる絹の綿です。

さて、この真綿がなぜ菊の花の上にかぶせられているのでしょうか?

これについても説明に書いてあるのですが、「着せ綿(きせわた)」というそうで、平安時代から行われていた風習です。重陽の節句前後から菊にかぶせて置くと、夜露がたまります。その露を含んだ真綿で、手や顔をぬぐうと、長寿を保ち老化防止になると信じられていました。

つまりお肌がきれいになるんですね!

寒露の期間は、草木に冷たい露(つゆ)が降りる時期という意味があります。急激に冷え込むことで発生する夜露も、菊の上に載せられた真綿にしみ込めば、縁起の良いものになるんですね。

日露戦争を描いた絵
日露戦争を描いた絵

余談ですが、旧杉山家住宅の前にある寺内町センターでは、10月8日から10日までの3日間、石上露子忌に関するイベント「露子と戦争」展が行われています。

画像は日露戦争の模様を描いたもので、この時代に活躍した露子の作品や露子愛用の着物なども展示するそうです。さらに9日13時30分から15時30分までは「石上露子と戦争」というタイトルで、奥村和子氏による講演会が旧杉山家住宅で行われるとのこと。

こちらも気になりますね。

さて、後のひなまつりに話を戻しましょう。こちらは石川の様子が一望できるじないまち展望広場です。

こちらにも、ひな人形が飾られていました。

次にじないまち交流館、ここにもひな人形が飾られています。

こちらにひな人形が飾られていました。

建物の内部は杉山家住宅と違って近代的ですが、内裏雛の前に来ると歴史を感じるから不思議ですね。

こちらの菊には、ピンクの真綿がかけられていました。

次に田中家住宅です。こちらも古い建物が公開されている国の登録有形文化財。

入口の土間から奥の間を見ると床の間に飾られていました。

こちらも内裏雛と菊の花が飾られています。

仲村家住宅
仲村家住宅

以上は10日まで飾られていますが、8日の当日のみ公開している場所を紹介しましょう。

ひとつは仲村家住宅です。

興正寺別院
興正寺別院

もうひとつは興正寺別院です。取材時はまだ飾られていませんが、当日どう飾られるのか楽しみですね。

さて、富田林駅前にあるとんだばやしきらめきファクトリーでも、秋のひなまつりが飾られています。

建物の外からガラス越しに見られます。

きらめきファクトリーの人に特別にお願いして、わかりやすい角度から撮影しました。

さて、後のひな祭りと同時開催の特別企画がきらめきファクトリーで行われます。じないまち和楽というもので、8日と9日の午前10時から午後6時まで開催されます。

内容は、音、茶、華をテーマにしたもので、次の催しが行われます。興味深いものばかりですね。

  • 音楽「葉山たけしセッションライブ」(8日16時から)入場無料
  • 茶楽「教授によるお点前とお話」(8・9両日 13時から)入場無料
  • 茶楽「野点茶会」(8・9両日 13時30分から)参加費:400円・茶菓子付き 50セット限定
  • 華楽「生け花展示」(8・9両日)入場無料 

※このほか予約制の生け花教室もあるそうです。

ということで、寺内町で行われる「後のひなまつり」を紹介しました。「ひな祭りは3月3日だけのもの」という常識が覆られそうな秋のひな祭り。

かつて関西地方を中心として行われた伝統的な行事を、伝統的な建物が残る町並みの中で、じっくりと歩きながら味わってみてください。

富田林寺内町
住所:大阪府富田林市富田林町
アクセス:近鉄富田林駅、富田林西口駅から徒歩圏内

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奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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