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【富田林市】PLの塔が映えるスポットはここ!九郎五郎池の龍神伝承のおさらいと河内音頭との関係とは

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

富田林市内であれば、ほぼどこででも見られるのが、PL塔こと大平和祈念塔ですね。PL教団の敷地内にある塔の真正面をはじめ、寺内町の近くや石川河川敷など、市内の様々なところに、この塔が映えるスポットがあります。

そんな中、おそらくPLの塔が映える場所として5本の指に入りそうなところが、けあぱる(富田林市介護老人保健施設)の後ろにある九郎五郎(くろご)池ではないでしょうか。

塔の近くにあるためか、池の借景のように塔が建っており、さらに池面にPLの塔が映し出され、非常に美しいショットが撮れると思われるからです。

九郎五郎池の場所を確認すると、池は南北に細長く、池の西側にけあぱると富田林病院があります。池の北側には光丘パブリックゴルフ場があり、池の東から南にかけては大平和祈念塔を含めたPL教団の敷地となっています。

九郎五郎池はこの地域に多数存在するため池のひとつですが、もともと羽曳野丘陵の一部なので、池の周辺に高低差の起伏があります。かつ横にゴルフ場が整備されていることもあって、雑草や木々切り取られていて、池の周りが整備されています。

さらに縦長の形をしているのも、まるで大きな日本庭園のように、池そのものが非常に美しい姿をしています。

そんな九郎五郎池は、相当古くから存在していた池だったようで、龍神伝承が残っています。

図書館で借りてきた「富田林の民話・総集編」の101ページに「龍の女」という民話が紹介されていました。それを読むと次のようなことが書いてあります。

もともと大きな九郎五郎池だったものが黒五池となり、さらに黒子池とどんどん小さくなったそうなのですが、ここで旅の僧が「この場所を埋めないと龍が住み着く」と警告します。

村人たちはそう言われた場所の一部を埋めたものの、袋屋の茂右衛門が反対したので、完全には埋めなかったそうです。

しばらくしたある日、茂右衛門の店の前に「おたつ」という少女が立っていました。話を聞くと「身寄りもなく店で働きたい」というので、茂右衛門はおたつを雇います。

おたつは非常に気が利いていて、5年間休むことなく働きましたが、年々背も髪も伸びて美しい女性になったので、茂右衛門が恋をしておたつを嫁として迎えました。

ところが同じ店で働く娘たちが「おたつの髪から血が出てた」「生きてるみたいに髪の毛が動く」と、茂右衛門や番頭に告げ口をします。

しかしこれは娘たちが妬んでいるだけだと、茂右衛門と番頭とのふたりとも取り合いません。こうして仲の良い夫婦には、やがて子どもが生まれます。

ある日風呂上がりのおたつが部屋で赤子に乳をふくませたまま、「うつらうつら」と眠っていると、そこへ茂右衛門が入ってきました。その時、茂右衛門は、おたつのはだけた胸元に青いうろこのようなものが光っているのを見ます。

茂右衛門が「それ、なんや」と聞いたら、おたつは真っ青になります。するとその日から姿が見えなくなってしまいました。

おたつが居なくなってから、茂右衛門は赤ちゃんを抱いて探し回りますが見つりません。こうして最終的に九郎五郎池のところまで来ます。

茂右衛門は「なぜ急にいなくなったのか」と悲しそうに叫んでいると、池の水が波立ち渦を巻きあげると、そこにおたつが現れます。おたつが突然姿をくらましたのは「ウロコをみられたから」だと言いました。

けあぱると池の間に遊歩道があります
けあぱると池の間に遊歩道があります

おたつを見ると、下半身が龍の形をしていて「私は龍の化身」だといいます。

ただおたつは「もういっぺんだけ、赤子を抱かせてください」と茂右衛門に願います。茂右衛門は「いっぺんと言わず、家に帰って何回でも赤子を抱いてくれ」と必死に頼みます。

しかし、おたつは赤子にお乳をたっぷり飲ませると、涙を流しながら渦を巻いて池の中へと姿を消してしまったという話です。

「鶴の恩返し」に似たような、なんとなく悲しいお話ですが、考えてみれば粟ヶ池や狭山池にも龍神が住んでいるという伝承が残っていますね。

南河内地域は、農作物を育てるために多くのため池を作っています。水が少なくて貴重だからこそ、水の神様でもある龍神への信仰が強いのでしょう。

さらに調べるとこの「龍の女」の民話を基にした河内音頭があるという情報を得ました。

1934(昭和9)年の新譜として「河内音頭 黒ご池悲話」というタイトル。音頭を取っている人が大阪府南河内郡石川村青年団・北端八太郎で、合唱が石川村大ヶ塚処女会員連です。

「黒ご池」とは九郎五郎池のことで、「南河内郡石川村」は現在の富田林市の一部かと思いましたが、実は石川村は現在の河南町の一部です。余談ですがこの当時の河内音頭は、江州音頭に近いものなのだそうです。

ということで、九郎五郎池にまつわる伝承と河内音頭に関するエピソードを紹介しました。

実際に遊歩道を歩いてみると、ため池とは思えないほど美しい池なので、機会があればぜひ遊歩道を散策してみてください。

九郎五郎池
住所:大阪府富田林市向陽台1丁目4
アクセス:近鉄富田林駅、南海金剛駅からバス。向陽台ニ丁目バス停から徒歩3分 富田林市レインボーバス けあぱるバス停から徒歩1分

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奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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