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【河内長野市】公民館の裏が遺跡現場!高向遺跡見学会で見た現場の様子と背景にある大掛かりな整理事業とは

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

この5月13日に、河内長野市教育委員会と大阪府文化財センターの共催で、高向(たこう)地区で遺跡見学会が行なわれたので、見学に行きました。

現在、高向地区での遺跡発掘作業が非常に積極的に行なわれているのですが、それには理由がありました。それは、河内長野市が推進する高向・上原土地区画整理事業があるからです。ではこの整理事業とはどういうものなのでしょうか?

土地区画整理事業とはどんなものかを調べると、日本の土地区画整理法(昭和29年法律第119号)によるもので、引用すると次のような事業です。

都市計画区域内の土地について公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るために行われる、土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業

ようするに、地図の真ん中あたりの茶色にふち取りした部分の土地を整備して活用しようというもののようで、ちょうど風の湯があるところあたりから南側でくろまろの郷の北側あたりが該当するようです。

真ん中に串を刺すように大阪外環状線があるので、利用しやすいのでしょうね。

将来の都市計画を記載し、2016年に改訂された河内長野市都市計画マスタープラン(外部リンク)によれば、高向・上原地区は「活力創造ゾーン」に位置付けられ、昨年12月22日に都市区画整理事業に戻づく地区計画の都市計画の決定を行ったとのこと。

さらに調べると2018年の段階で一括業務代行予定者を公募していたそうで、すでに清水建設、日本エスコン、住友商事のグループが担当する(外部リンク)と決まっています。

今年1月に河内長野市高向・上原土地区画整理組合が設立。年内に換地(かんち)設計という、整備前の土地をどういう街区に配置換えするかを設計します。

そうして来年2024年に仮換地を指定。その後に、いよいよ造成工事が始まり、3年後の2027年に事業完了を目指すとのこと。

河内長野市のHPから引用した画像によると、今回の遺跡発掘の見学会が行なわれた高向公民館の北側が広域集客型商業施設地区と書いてあるので、将来大きなショッピングセンターができるのでしょうか?

そのような大掛かりな計画を前に、どのような遺跡があるのかをしっかりと調査して行くことで、調査結果の内容によって今回のような見学会が実施されたわけですね。

先日発表会のあった富田林の喜志南遺跡・浮ヶ澤古墳も、発掘作業を終えてから宅地造成をしたようなので、同じようなことを上原・高向地域でも行うということなのでしょう。

前置きが長くなりましたが、当日の発掘見学会の様子をご紹介しましょう。河内長野駅からバスに乗り高向公民館前で降りました。

公民館の駐車場を抜けて北側に行くと、多くの人の姿があります。そこが見学できる発掘現場のようです。

現場ではただ遺跡現場を見るだけでなく、ゲーム感覚で楽しめる土器パズルがありました。

このパズルを実際にしてみましたが、とてもおもしろかったです。バラバラな破片を集めてひとつの土器にするのですが、中々破片が合わずに一苦労しました。

それに加えて、破片が一致すると中に磁石が入っているようで、しっかりとくっついていきます。担当の方の手助けもあって、試行錯誤の上、見事にひとつの土器が完成しました。

その他にも実際に出土した土器などが展示してあります。

中には実際に触れるものもありました。

土器の破片をよくよく見てみると、文様が見えます。この文様は昔の人が実際につけたもの。今となっては、ほんとうに貴重ですね。

土器に文様をつける道具を復元したものも置いてありました。

中国で作られたものも出土したようです。当時の中国などの大陸との交易で入ってきたのでしょうね。

さて年表や絵が描かれています。

後で解説もありましたが、高向のある場所は住むのにとても適している場所なんだそうで、かなり古くから住んでいる人がいたそうです。

これが高向庄と言われていた昔の絵図なんだそうですが、現在の墓の位置などが当時すでにあったらしく、これに描かれているそうです。

航空写真から発掘現場を紹介しています。今回は青い帯の部分を調査して、それを見学会場としています。

それにしても調査している場所がなぜ帯のようになっているのかといえば、ここに道路を敷くからだそうです。

青い部分とは別に、黄色い帯を調査する予定があるそうです。これを見ると、そこに新しい道路をつくることが一目瞭然です。

見つかった遺構が紹介されていて、掘立柱建物の跡が見つかっています。

こちらが実際の発掘現場です。土の表面に白いマーキングがところどころに見えますが、遺跡現場でよく見るものですね。

さて、説明が始まりました。最初は河内長野市教育委員会の担当者の方による高向地域の概要についての解説です。

次に大阪府文化財センターから現場の担当者の方による遺跡に関する具体的な説明が始まりました。結論を先に言うと、この方の遺跡に関する具体的な解説がとてもわかりやすかったです。

ちなみにこちらは、先ほどの図で黄色い帯だったところです。今ちょうど調査中ということで、全体を覆っているわけですね。

さて説明を聞きながら遺跡現場を見ると、たくさん穴が開いています。土の色の違いなどを見ながら、どこが遺構なのかを発掘していくのだそうです。

解説によれば、高向の遺跡は非常に浅いところにあるそうです。それは洪水などがほとんどなかったために地層があまりできなかったこと、また長い間生活に利用されていたからで、ひとつの時代とは限らない遺構が見つかるそうです。

実際にどうやって発掘作業を行うのか、実演しながら説明してくださいました。

実際に掘る方法も、遺跡の場合は独特の方法で進めていくそうです。そのために、使用しているシャベルも改造しているとのこと。

こちらの地面をよく見ると、真ん中近くだけ少し黒っぽいですが、この色合いの違いから、その場所に遺跡の痕跡があるかどうかを見分けるそうです。

穴を掘るにしても慎重に行うという解説をしてくださいました。

こうやって改めて見ると、土器の破片があるような場所の土の色は明らかに違いますね。

解説によれば、これは当時のゴミ捨て場ではないかということでした。

遺跡の解説はより奥側のほうに代わりました。

この辺りには掘立柱の跡が多数見つかり、どのような建物が建っていたかわかったそうです。

建物の絵をもって説明してくださいました。ほんとうにわかりやすいですね。

ここで、なぜ掘立柱と呼ばれているのか詳しく説明してくださいました。画像のように柱を穴の中に入れてそこに土を埋めて固定するからだそうです。

ただ、礎石を使ったタイプの建物と比べると、長く使うとどうしても柱の木が腐食するので、この方法で建築された建物は定期的に建て替えが必要とのことでした。

例えば伊勢神宮などで行われている式年遷宮もそういうこと、つまり建て替えの必要性があった時代の伝統の名残りではという話もありました。

高向遺跡は、飛鳥時代のものや平安時代のものなど、いろんな時代のものがあるそうですが、この溝は比較的新しいものなんだそうです。

一通り説明の後、質疑応答の時間となりました。見学した方々は考古学に精通している人も多かったようで、鋭い質問を次々とぶつけて行きました。それに対して解説者の方が丁寧に説明してくださったので、より遺跡のことが理解できました。

ということで遺跡見学会は終わりました。この後、この地域は残念ながら埋め戻されます。

そしてアスファルトの道路が敷かれ、ここからは推測ですが、おそらく将来的にはこの地域に建てられる計画がある大型商業施設に向かう車が通る道路になっていくのでしょう。

今回の高向遺跡とは直接関係がありませんが、ちょうど現在、歴史発見2023を開催中です。6月25日までとありますが、これは前期の大阪府立狭山池博物館の話です。

そのあと後期展示(6月28日~7月23日まで)があり、会場が河内長野市のふるさと歴史学習館(外部リンク)になります。

さらに6月10日には、河内長野市教育委員会文化財保護課の小谷徳洋氏の講演「日野観音寺遺跡と中世日野の様相」が行われます。いずれも無料なので興味のある方は、ぜひ見に行ってみましょう。

都市計画と文化財の遺跡発掘は一見真逆的なのに、計画を実施する前にしっかりと調査し、必要であれば発掘するという考えは今回の見学会に参加して素晴らしい気がしました。

これからどんどん発掘調査が行われるようなので、また同様の見学会が行われる可能性も高いですし、もしかしたら浮ヶ澤古墳クラスの発見があるかもしれません。これからますます高向地区に注目したいと思います。

高向公民館(高向遺跡)
住所:大阪府河内長野市高向515-3
アクセス:南海・近鉄河内長野駅からバス 高向公民館前バス停下車すぐ

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奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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