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アフガニスタンの現状と太陽光パネルと農業、それぞれが交差する未来の可能性

おりえ総合危機管理アドバイザー三沢おりえ/防犯・防災・護身術

入国も大変な中アフガニスタンより来日

世界で入国しやすいパスポートランキング(ビザなしで渡航が可能な国数)1位が日本です。

では最下位は?といいますと、それはアフガニスタン

アフガニスタンから日本への入国も、もちろんハードルは高く、社会的信頼性や来日の正当な理由など様々な条件が必要です。

そのような状況の中、アフガニスタンから空手の研修のため来日したアバシン(Abasin Shinwari)さん。アフガニスタンにおいて彼の空手の生徒は3000人、現地では空手がとても人気があるそうで有名な指導者だそうです。さらに彼は世界教育機構のスタッフでもあり、その他、国の大切な教育本の翻訳をはじめ、様々な事業にかかわっているそうです。

「アフガニスタンでは日本の空手の本がないので空手を学びに来た」と話すアバシンさん。発祥の地の空手を母国に正しく伝えるために日本の師範から空手の歴史を学び、技術の向上と空手の本の翻訳など研修を受け、空いた時間でアフガニスタンに貢献できる事業、特に太陽光発電など日本の事業形態や技術も知りたいとの事でした。

経済危機にあるともいわれているアフガニスタンの現状がどうなのか?私たちはニュースでしか知ることができません。そこでニュースでは知ることのできない質問も兼ねながら、滞在中の彼に密着取材させていただきました。

空手の研修で来日したアバシンさん
空手の研修で来日したアバシンさん

アフガニスタンでは空手師範としても3000人の弟子がいるアバシンさん。ネパールの来日選手達とともに世界硬式空手道連盟において連日特別研修を行っていました。

ちなみにアフガニスタンでは、イスラム教の戒律が厳しく女性は首都の一部以外では空手を習うことも禁止だそうです。

ニュースによるとアフガニスタン国内では、昨年より女性の大学教育が停止になっているはずなので、ここは聞きそびれてしまいましたが、限られた人しか習えないと言われている女性の空手なども、現状は練習できなくなっているのでは?と気になるところです。

NPO法人世界硬式空手道連盟、海外選手研修
NPO法人世界硬式空手道連盟、海外選手研修

アフガニスタンのリアルな現状を知る

質問にもいくつか答えていただきました。

ーーアフガニスタンの生活や食料事情は現在どうでしょうか?

アフガニスタンはドライフルーツやサフランなどのスパイス系が有名だと思います。私たちは宗教上食べれないものも多いのです(ハラルフードを除く)。実際の現状の話では食料があまり足りているとはいえません。難民の受け入れを申し出てくれる国もありますが、多くの国民は自分たちの神を信じ、プライドを持ち生活をしているので、この国を良くしていき、国の中で豊かに生きたいと考えています。アフガニスタンでは内戦が40年以上続き、現在の政府はタリバンが統治しています。

ーー弱い立場の人たち、女性や子供、高齢者などはどのような状況ですか?

やはり父親、男性達が守ってあげていますね。私は日本人の医師中村 哲さんに感銘を受けています。彼はアフガニスタンで水源と農地を開拓し、何十万人もの命を救って2019年に亡くなりました。そこで私自身も、彼の遺志を継いで子供たちや弱い人たちに手を差し伸べそして国を豊かにする活動もしています。今回の来日では空手を学びに来ましたが、中村さんの思いが続いて国が豊かになるような事業についても勉強できたらと思っています。

ーー今一番興味がある事業が太陽光発電と聞いたのですが、どうしてですか?

アフガニスタンの土地は中村哲さんが水を引き農地を開拓する手伝いをしてくれました私たちはその感謝を忘れません。そこで、より良い作物を育て地域を発展させるには環境の良い農場、働く雇用、そしてそれには電気が必要です。日本ではその再生可能エネルギーと農業を組み合わせた技術があると聞いているので、とても興味があります。

そこでアバシンさんは彼の空手の師範であり、来日中の責任者でもあるNPO法人世界硬式空手道連盟の久高正光理事の紹介で、群馬県前橋市に本社があるファームドゥホールディングス株式会社にお伺いして、電気と野菜(食料)を同時に作るソーラーファームシステムを視察をさせていただくことになりました。

ファームドゥホールディングス株式会社 再生可能エネルギーと農業を組み合わせた技術
ファームドゥホールディングス株式会社 再生可能エネルギーと農業を組み合わせた技術

CO2削減、世界が注目するソーラーファームという新しい事業

今回伺ったファームドゥホールディングス株式会社では、ただ単に太陽光発電、ソーラーパネルでの発電システムを展開しているのではなく電気と野菜を同時につくる独自の「ソーラーファーム」という形態で 農家と地域の収入を倍増し、農産物直売・農業生産・再生エネルギー事業による社会貢献をして農業従事者を支援するという取り組みを行っているとの事でした。

こちらのソーラーファームシステムは日本だけではなく、すでにモンゴルをはじめ、チリやケニアでもその技術が取り入れられていてガイヤの夜明けなど各メディアでも取材を受けるなど、その活動や理念に世界から注目が集まっているようです。

実は今回、ファームドゥグループ代表の岩井雅之氏が、自らが案内して下さいました。

左から 岩井雅之社長、アバシンさん、久高正光理事

早速、ソーラーファームの仕組みや世界でどのように活用され始めているかなどの説明を受けてから、アバシンさんの質問タイムも始まりました。

どうすれば国に導入できるのか?場所や必要なものは何か?

自分たちの土地や環境でもソーラーファームが取り入れられるのか?

かなりの本気度がうかがえます。会議は長い時間行われたので書ききれませんが、岩井社長の言葉を少しまとめて書かせてもらいます。

〇企業としての取り組みと考え方

温暖化などの影響でCO2の削減が世界的に求められる中、電気は今後とも世界中だれもが生きていく上で使用しなければなりません。私たちの取り組みは太陽がある事で電気が作られ、他の発電システムよりもCO2の排出を抑えることができる。太陽があれば世界中のだれもが利用できるのです。そして電気を生み出そうとしているだけではなく、その下で作物を作り農業を発展させ雇用も生み、地域を応援する取り組みです。

〇世界中が対応でき、豊かになるために


現在、エネルギー需給と食料自給率問題は世界規模の課題と捉えています。だからこそ、ハウス栽培の形状は、すでに取り入れている国、モンゴルのような厳しい自然環境でも適用できるように対応して作っています。栽培システムは、養液水耕栽培、養液土耕栽培、一般土耕栽培など地域特性と経済条件から選定して組み合わせるので様々な環境に対応するのです。自然環境の厳しさを緩和し作物を作りやすくするということはもちろん、自分たちの使用する電気を作る、また売電することで太陽光発電による安定収入が得られますし、CO2も削減に貢献しながらその国や地域にあった栽培スタイルを構築することが可能です。

〇貴重な水を大切に使う

水耕栽培では水を循環させることで本来使用する水量の10分の1で農作物を育てることができ、水源の少ない国でも新鮮な野菜を育てることが可能になります。

会議の次に、実際のソーラーファームを視察させていただきました。

こちらは晴れた日のソーラーファームです。青空が透けて見えます。

そして、今回実際に伺った日は曇り、でもこの曇りの天気でも発電は十分に可能との事

「えっ!そうなんですか?」とアバシンさんと一緒に筆者の私も興味津々!!

岩井社長がファームでハウスの中を案内して下さっている途中、アバシンさんに質問しました。

岩井社長「ここは暗いですか?」

アバシンさん「いいえ明るいです」

岩井社長「実はソーラーパネル設置の下で野菜を育てると、光が入らず暗いのでは?というイメージをもたれる方が多いのですが、全くそんなことはありません。曇りの日でも室内にもしっかりと明るさは通ります。」

確かに明るくてとてもきれいな空間です。衛生環境もよく、収穫する野菜の高さは腰をかがまなくていいように考えられていて、身体の負担が少ないため。例えば高齢者や体の不自由な方も働きやすく作業や収穫ができるのだそうです。

ファームドゥ ソーラーファームは曇りでも中が明るい
ファームドゥ ソーラーファームは曇りでも中が明るい

すくすく青々と育っている美味しそうな野菜、その場で野菜をちぎって食べさせていただきました。もちろんシャキシャキの新鮮さです。

こちらが水の循環システム。中で水を回すことで本来の農業の10分の1の水量で野菜が育つそうで、水が貴重な国にとっては本当に助かる仕組みだと思います。

更に色々案内していただき、葉野菜だけではなく、トマトやバナナ、パッションフルーツ、そしてコーヒーまでハウス別に様々な野菜や果物が育っていました。(他にもありました)

いちご狩りのハウスでは、ちゃっかり私も大物を(たくさん)いただきました。甘くて美味しい!!

視察と質問を終え、最後にアバシンさんに感想を伺ってみました。

アバシンさん「このシステムは国を豊かにしてたくさんの雇用や食料を生むと思います。アフガニスタンに戻って、ぜひ政府の関係者や都市部近くの農場や工場、そして中村哲さんが開拓した農地などに声をかけてどのように勧めていくか話しあい、前向きに勧めていきたいと思います。」

国での導入を考えるかもしれないとの事で、もし今後アフガニスタンにソーラーファーム作られるとしたら、、、歴史的な瞬間に同行させてもらったのかもしれない!と改めて感じております。

アバシンさんは、今後アフガニスタンにいる空手の生徒たちが、より正確な知識を得るための空手の著者を書き、技術を向上させるために、出来れば日本へ1年ほど留学したいとの事でした。その時にはぜひソーラファームの技術も勉強したいとも熱く語りながら、また再会を約束して帰国されました。

まとめ

今回、私もニュースでしか耳にすることがなかったアフガニスタンの現状を知る事ができ、そして、アフガニスタンだけではなく今後世界的に起こると言われる、いえ、起こり始めている環境破壊と食糧問題についての新しい取り組みが日本からも発信されている事を知り、太陽光パネルについてもソーラーファームについても大変学びの多い取材でした。

ソーラーファームは世界も注目している仕組みで、CO2削減に貢献しながらも、上(屋根)で電気を生み、下で野菜を生むそして高齢者でも働きやすい環境であるということを知り、高齢化が進み、近年、農業をあきらめる、自分たちの世代でやめる人が多いと耳にする日本の農家さんにもぜひ知っていただきたい新しい事業形態だと感じました。

取材協力

ファームドゥホールディングス株式会社

NPO法人世界硬式空手道連盟

*太陽光パネルの環境問題について
太陽光パネルは廃棄問題などの環境汚染の声もありますが、基本的には25年使用できる期間を利用して廃棄がしっかり行われるようにその廃棄処理代は売り上げから積み立てという形をとるそうです。

総合危機管理アドバイザー三沢おりえ/防犯・防災・護身術

防犯・防災グッズ記事ランキング監修も手がける専門家。常識にとらわれない怖くない危機管理の考え方で講演会やメディア、セミナー、イベントなど幅広く活動。生活の中ですぐに取り入れられる対策や動き方、便利なグッズを提案。大学や企業向けに行う座学と実技のダイバーシティ系セミナーは防災、防犯だけでなくハラスメント対策など、身を守るために役立つと高いリピート率。 防犯整備士、危機管理士(自然災害・社会リスク)非常食研究家。 逃げるための護身術指導者、元硬式空手世界チャンピオン。 日本災害危機管理士機構、日本防犯設備士機構所属。

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