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「叱れない上司」急増!部下を成長させる上司になるシンプルな習慣

太田章代新人育成トレーナー

最近「部下を叱れない上司」が増えており、危惧しています。部下の至らない点を指摘するのは、決して楽しいことではありません。しかし「叱れない上司」は、部下の育成という管理職としての仕事を、放棄しています。

私は研修の講師を務めていますが、ある企業から「叱れない上司が多いので、その代わりに社員に厳しく言ってほしい」という研修のご依頼がありました。私が厳しく叱ることはできますが、研修の場だけではなく上司が継続して指導しなければ、真の解決にはなりません。

そこで、今回の記事では、「なぜ部下を叱ることができないのか」「叱らないことで起こるデメリット」のほか、「部下のモチベーションを保つ叱り方」など上司の意識を変える方法もお伝えします。

「叱る」とはどういうことか

今回は「叱る」を「部下の改善すべき点を指摘し、成長を促すこと」と定義します。

つまり、上司が感情を出して怒ったり、「なぜミスしたんだ」「どうしてやらなかったんだ」と責め立てることではありません。感情的に叱責すると、部下は消極的になり、上司の顔色を伺いながら働くようになります。これでは、部下の成長は見込めません。

自分の感情のままに指摘をするのは、「叱る」とは異なります。

部下を叱れない上司の事情

「叱る」ことは、上司にとっても気が重いことです。

研修の場において、「部下を叱ることが苦手な人はいますか?」と尋ねると、80%ほどの方が挙手をします。理由としては、以下のようなものが考えられます。

・正しい叱り方が不明

・部下に悪く思われたくない

・叱るタイミングがわからない

・管理職としての役目を理解していない

・部下に対して関心を持っていない

・パワーハラスメントと判断されないか心配

「叱れない上司」の部下は成長が遅い

部下が不適切な行動をしていた場合、叱らずに見過ごしてしまうと、部下は自分の至らない点に気づけないままになってしまいます。上司が部下を叱らないことには、以下のような問題が発生します。

・部下が正しい行動に気づけない

・部下の成長のスピードが遅くなる

・部下の成長のチャンスを奪ってしまう

叱れない上司は、部下を不幸にしてしまい、会社の成長までも阻害してしまいます。私が最も危険だと感じるのが、この点です。

「部下を叱らない上司」が優しくて良い上司なのではありません。それは、「赤信号を渡っている人に、注意をしない人」と同じです。良い上司とは、「部下を叱って、成長させてくれる上司」のことなのです。

部下の成長のために「叱る」

繰り返しお伝えしている通り、部下を叱るのは「改善すべき点を指摘し、成長を促す」ためです。上司が部下の指導を怠れば、部下も仕事を怠ります。上司が熱心に部下を指導すれば、部下も熱心に仕事をするようになるのです。

部下は、手を抜いているつもりがなくても、「妥協」や「逃げ」はきっちりと指導しないと、知らず知らずのうちに部下は楽な方へと進んでしまいます。それでは、成果を出せない部下になってしまうのです。部下が自分で成果を出せるよう、改善すべき点を見逃さず、叱ることが必要です。

現代の多くの若年層は、学校や家庭でほとんど叱られる経験をしていません。ですから、初めの段階が大切です。社会に出た新入社員が、上司から全く叱られずに育ってしまうと、その後少し指導があっただけでも「パワーハラスメントではないか」「自分に対して厳しすぎる」と抗議をしたりする事もあります。また、叱られると仕事へのモチベーションを失ってしまうこともあります。

モチベーションを下げずに「叱る」方法

では、どのように叱ればいいのでしょうか。

たとえば、お客様に対し、まるで友達のような話し方で電話をする部下がいたとします。そばで聞いている上司がそのまま見過ごしてしまえば、部下は気付かず、知らないうちにお客様の気分を害してしまっているかもしれません。

モチベーションを下げないように叱るには、どうすればいいのでしょうか。

× 「△△さん、今のお客様との電話だけど、友達みたいな話し方をするのは良くないよ」

〇「△△さん、今のお客様との電話だけど、私には△△さんが友達と話しているように聞こえましたよ。お客様には、△△さんのような気さくな話し方が好きな人もいるとは思いますが、中には気さくな話し方が苦手という人もいますから、気をつけた方がいいですよ」

上記の×例は、部下の行動を否定してしまっていますし、なぜ良くないのかの理由を説明していません。それに対し〇例は、「私はこう思った」という私(I)を主語にした「Iメッセージ」にして伝えていますし、叱った理由も説明できています。

このように同じ内容を伝えるのでも、言い方によって相手の受ける印象は大きく異なります。叱るときは、「どう言えば相手が受け入れられるのか」を考えてから、言葉にするようにしましょう。

また「叱る」には、タイミングも大切になってきます。基本的には叱る行動が起こったその場で叱ります。内容によっては、他の社員がいる場所は避け、別室に呼んで周りに聞こえないように配慮します。

叱る前にまずは「認める」

「叱れる上司」になるためには、一朝一夕ではない、日頃からの信頼関係が大切です。

部下が「この人の言葉だから、素直に聞こう」と受け止められる関係があれば、叱った後も人間関係にヒビは入りません。そんな「叱りやすい関係」をつくるために、普段から部下を認めましょう。

「認めている部下だからこそ、叱ることができる」とも言えます。部下の存在そのものを「認め」、部下の心を開きます。信頼関係ができているからこそ、効果的に叱ることができるのです。良い点は認め、改善すべき点は叱ります。この循環で、部下との信頼が深まっていくのです。

「叱れる上司」になるためのシンプルな習慣

「叱れる上司」になるためには、部下との信頼関係が重要と一口で言っても、実際にどうしていいのか困ってしまいますね。そこで、以下の簡単な方法を試してみてください。

●部下に毎日1回声をかける

「部下に声をかける」とはいっても、業務上の報告・連絡・相談とは違います。単なる業務連絡とは異なる「部下を気にかけている声かけ」です。例えば、以下のような声かけがあります。

【例1】「〇〇さん、おはようございます。今日は、△△建設さんを訪問予定でしたね。自信を持ってプレゼンをお願いします」

【例2】部下の帰り際に「お疲れ様でした。今日は何か困ったことはありませんでしたか?」

このようなシンプルな言葉で良いのです。部下を気にかけていることが伝わる声かけを、毎日1回続けてみてください。徐々に関係が良くなっていきますよ。

まとめ

厳しいことを言いますが、「部下を叱る」ことができないようでは、管理職の資格はないと言えます。管理職として部下を叱ることは大切な役目で、すべては部下の成長のためです。愛を持って、部下をしっかりと叱ってみましょう。

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太田 章代

新人育成トレーナー

愛知県岡崎市出身。損害保険会社の事務員から広告代理店の営業職に転職。入社2年目から6年連続売上トップ。32歳で統括本部長に抜擢。50人の部下を指導する。35歳代表取締役に就任。その後、2006年人材育成事業で独立。現在まで研修&講演に2,000本以上登壇。離職率の低下や、職場のコミュニケーション改善などで成果を上げる。独自の体験型講演が好評をいただき、講師評価98.7%でリピート率も高い。研修&講演を通して【働くを楽しむ】社会創りに貢献するという使命のもと、日本全国で精力的に活動中。

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