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お辞儀の角度と秒数でクレームが収まる?謝罪会見で深々とお辞儀をする理由

太田章代新人育成トレーナー

仕事をしていると、どうしても「謝罪をしなければならない」という場面があります。そんな時、謝る相手である顧客や取引先は、お辞儀の仕方からも、こちらの感情を読み取っているのです。

人は言葉だけでなく、服装や立ち方、声のトーンや表情などの「非言語コミュニケーション」からも感情を読み取っています。お辞儀は、「非言語コミュニケーション」のひとつです。

ここでは、謝罪の気持ちが最も相手に伝わるお辞儀の角度と秒数、そしてお辞儀の仕方をお伝えします。

謝罪会見で企業トップや芸能人は何秒頭を下げたか

お辞儀は挨拶と同時に自然におこなっているものです。謝罪の場においては、「申し訳ございません」と言って、お辞儀をします。丁寧にお辞儀をしたからといってクレームが収まるわけではありませんが、相手への印象が違うことに間違いはありません。

報道で、不祥事を起こした芸能人や企業の経営陣が謝罪をするところを見たことがあるでしょう。このような場合は、お辞儀ひとつで印象がガラッと変わってしまうため、事前にお辞儀の練習をしている場合もあります。

練習しなければ、企業の謝罪会見で経営陣数名が、まるでチアリーディングのように頭を下げる角度や、頭を上げるタイミングが揃うはずはないですよね。

私が調べたところ、謝罪のお辞儀には以下のような例がありました。

●かんぽ生命

保険の不適切販売問題で謝罪会見。

3人で「90度10秒」頭を下げた。

●セブン&アイ・ホールディングス

キャッシュレスサービス「7Pay」の不正利用問題で謝罪会見。

4人で「90度7秒」頭を下げた。

これらの例には、「お辞儀が長すぎるのではないか」「パフォーマンスに見える」「かえって引いた」などの声がありました。長すぎる、大げさに見えるなどのお辞儀は、「頭を下げておけばいいんだろう」という考えの表れと受け取られ、逆にマイナスイメージになってしまうことがあります。

余談ですが、謝罪会見ともなれば、報道陣が写真や動画を撮影し報道します。そのため、長めに頭を下げておかないと、カメラマンがシャッターチャンスを逃してしまう、といった事情もあるでしょう。

これに関係して、お笑いタレントの狩野英孝氏は、女性問題で謝罪会見をした後、「自分は迷惑をかけた方々に謝罪をしたかったが、マスコミは『お辞儀の秒数は何秒』しか取り上げなかった」と嘆いていました。何はともあれ、それくらいお辞儀の角度や秒数は注目されている、ということなのです。

お辞儀の時間が短ければ「反省が足りないのでは?」と言われ、長すぎても「大げさだ」と言われてしまいます。感じ方は人それぞれなので、万人に気持ちが伝わるお辞儀はコレというものはありません。ただ「長く頭を下げておけば印象が良いだろう」という考えは、相手に見透かされると思っておいた方がいいでしょう。

状況に応じて使い分ける「3つのお辞儀」

それでは、実際にお辞儀の仕方についてお伝えします。

私が登壇する研修の場では、「お辞儀の角度と、感謝やお詫びの気持ちは比例しています。思いが深ければ、角度も自然と深くなります」とお話ししています。しかし、これだけでは難しいので、目安となる角度も同時にお伝えしています。

お辞儀は深ければ深いほどいい、というわけではありません。たとえば、会社の廊下ですれ違っただけなのに、深々とお辞儀をされたら、相手が堅苦しく感じてしまいます。

お辞儀には、「会釈」「敬礼」「最敬礼」の3種類があります。TPOに合わせて、それぞれを使い分けましょう。

●会釈:廊下ですれ違った時など

上半身を15度傾ける。

●敬礼:出迎えや見送りなど一般的なお辞儀

上半身を30度傾ける。

●最敬礼:改まった感謝や謝罪など、最も丁寧なお辞儀

上半身を45度傾ける。

印象を下げる「NGなお辞儀」

お辞儀はすればいい、というわけではなく、逆に印象を下げてしまうお辞儀も存在します。たとえば、以下のようなお辞儀は避けましょう。

●顔を前に向けたまま頭を下げる

顔を上げて相手を見たままでお辞儀をするのではなく、急所である「脳天を相手に向ける」ことで、感謝や謝罪の気持ちを伝えます。

●お客様より先に頭を上げる

感謝や謝罪の気持ちを伝えるなら、お客様より「深い角度で、長く」お辞儀をしましょう。そうすることで、気持ちを伝えることができます。

●ペコペコと何度も頭を下げる

歩きながら何度もお辞儀をすると、軽薄な印象を与えてしまいます。お辞儀は「しっかりと1回」すれば、きちんと気持ちが伝わるものです。

謝罪の気持ちを伝える「45度4秒」のお辞儀

それでは、謝罪をする際、「お詫びの気持ちが伝わるお辞儀」とは、どのようなものでしょうか。「最も相手に気持ちを伝えるには」という観点で考えた結果、私としては、「申し訳ございません」という言葉とともに「45度頭を下げ、4秒止める」ことをお勧めします。

人によっては、「45度5秒止める」「90度7秒止める」など、色々な考えがあるでしょう。マナーで大切なことは、相手への思いやりの心ですから、「必ずこうすべき」という決まりはありません。

謝罪の気持ちをお辞儀で表したいなら、自身で「これが最も伝わる角度と秒数だ」と思えたものが正解だと言えるでしょう。

言うまでもないことですが、お詫びの際には、お辞儀の仕方だけでなく、神妙な表情や、落ち着いたカラーの整った衣服、静かな声のトーンなども重要です。

まとめ

謝罪において、大切なことは何よりも「心」です。

お辞儀の角度や秒数に過度にこだわることはありませんが、「どうしたら気持ちが伝わるのか」と考えれば、「適度に深く、長いお辞儀」だと言えるでしょう。

「ただのパフォーマンス」と思われないためにも、心から反省をし、失敗を繰り返さないようにしましょう。また、失敗を糧に、信用を取り戻せるよう、努力していきたいものです。

アイキャリア株式会社

研修トレーナー太田 章代

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太田章代の『ビジネスコミュニケーション術』

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新人育成トレーナー

愛知県岡崎市出身。損害保険会社の事務員から広告代理店の営業職に転職。入社2年目から6年連続売上トップ。32歳で統括本部長に抜擢。50人の部下を指導する。35歳代表取締役に就任。その後、2006年人材育成事業で独立。現在まで研修&講演に2,000本以上登壇。離職率の低下や、職場のコミュニケーション改善などで成果を上げる。独自の体験型講演が好評をいただき、講師評価98.7%でリピート率も高い。研修&講演を通して【働くを楽しむ】社会創りに貢献するという使命のもと、日本全国で精力的に活動中。

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