なぜ電話や来客の応対で「お世話になります」と挨拶してはいけないのか
仕事の場で、何度となく使われる挨拶といえば、「お世話になっております」です。
社会人経験が長い方にとっては、あまりにも日常的に使っているので、改めて考えることがない言葉かもしれませんが、新人にとってはそうではありません。私が講師を務めた研修の場で、新入社員から「お世話になっていない方にも、『お世話になっております』と挨拶していいのですか?」と質問されました。
さて、改めて考える「お世話になっております」の意味や使い方とは?混同されがちな「お世話になっております」と「お世話になります」の使い分けについても、ご説明します。
「お世話になっております」とはどんな意味?
「お世話になっております」とは、どのような意味でしょうか。
相手に対して、「面倒をみていただき、ありがとうございます」が、本来の意味です。「相手への感謝の気持ち」を伝える言葉なので、さらっと流さず、感謝の心を込めて口にしましょう。
初対面で「お世話になっております」を使ってもいい?
では、「お世話になっております」は、どのような相手に対して使うのが適切でしょうか。
感謝を伝える言葉なので、今までに取引があり、面倒を見てもらっている相手に対して使います。ですので、初対面の相手には使いません。初対面の人には「初めまして」と挨拶しましょう。
新入社員にとっては、出会うお客様全員が「初めまして」の状態です。しかし、会社として取引がある相手には、初めて会ったお客様にも「いつもお世話になっております」と伝えてから「初めまして、私○○と申します」と名刺交換をしましょう。
電話の応対では、すぐに取引先かどうかわからない場合も少なくありません。ですので、どの相手にも「お世話になっております」と挨拶をします。
もし相手が個人として初対面であっても、担当者の変更があっただけで、会社とは既に取引がある場合は、「お世話になっております」を使います。
「お世話になっております」「お世話になります」の使い分け
「お世話になっております」と非常に似た言葉で、同じように仕事上でよく使う挨拶に「お世話になります」があります。使い分けは、以下のように覚えましょう。
●「お世話になっております」…【現在】面倒を見てもらっている相手に使う
例:「平素よりお世話になっております。◯○社の△△と申します」
「いつもお世話になっております」
●「お世話になります」は、【今後】面倒を見てもらう、初対面の相手に使う
例:「この度はお世話になります」
「新しく窓口を担当いたします××と申します。今後ともお世話になります」
電話や来客応対のときには、既にお世話になっているのか分からない事が多いものです。よって「お世話になっております」を使っておけば、失礼はないでしょう。
「お世話様です」は使わない方がいい
もう一つ、似た挨拶に「お世話様です」があります。こちらも、よく見聞きする言葉ではないでしょうか。
しかし、こちらは使い方に注意が必要です。
「お世話様です」は、感謝の言葉ではありますが、仕事上の評価やねぎらいの意味も含んでいますので、目上の人に対して使うと失礼に当たります。使わない方が無難でしょう。
まとめ
「お世話になっております」は、仕事の場においては、「こんにちは」と同じようによく使われる挨拶です。
電話でも来客でも、応対した相手が既に取引しているのか、それとも新規の方なのか判別がつかない場合もあります。そんな場合は、ひとまず「お世話になっております」と伝えれば、相手に不快な思いをさせることはありません。
しかし、「とりあえず言っておくだけ」にならず、その意味をしっかりと把握して、感情を込めて伝えることで、相手とのより良い関係をつくっていきたいですね。
研修トレーナー太田 章代
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太田章代の『ビジネスコミュニケーション術』