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ホヤの最高に美味い食べ方とは?  ~ほやほや屋店主・佐藤文行の挑戦~ 

太田信吾

映画監督・俳優・演出家

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世界貿易機関(WTO)が韓国による東北8県の水産物の禁輸措置を容認してからまもなく3カ月、旬を迎えた東北を代表する海産物「ホヤ」が大量廃棄に今もあえいでいる。捨てられ続ける状況に歯止めをかけようと立ち上がったのは宮城県塩釜市の飲食店オーナー、佐藤文行さん(59)。「これをヒーローにしないでどうするの」とその味に魅せられ、食の力で現状を打破しようとする活動に密着した。

塩味の強く、独特の風味を持つホヤは宮城・岩手を中心とした東北地方では日常的に食べられている海産物。「ホヤほど健康に効果的で多様な料理に活用出来る食材はない!」と佐藤さんは断言するが、東北以外では馴染みが薄い。国内生産量の7割が韓国へ輸出されていた。
しかし、福島原発事故で事態は一変した。食品の放射能汚染を懸念する韓国が東北8県の水産物の禁輸措置に出る。今年4月にはWTOが禁輸措置を容認する最終判断を下した結果、今も大量のホヤが行き場をなくし続けている。16年からの過去3年間で焼却処分された量は1万4000トン以上。政府はホヤ生産者たちに他の海産物への転作を奨励しているが、佐藤さんは「なんで食文化をなくようなことをするのか」と憤る。

佐藤さんは2017年に32年務め続けたかまぼこ製造会社の経営を息子に譲った。きっかけとなったのは漁協関係者からの「ホヤをかまぼこに使えないか」という相談。社内でホヤに関する新規事業部の立ち上げが頓挫したが思いを捨てきれず、ホヤ料理専門店を開くと決めと決めたからだ。
開店当初から困難に見舞われた。県外の知名度はなく、県内では珍しくないホヤ料理の店ということで、1年間は客が全く来なかったのだ。だが輸送や料理法さえ整えば、ホヤの大量廃棄を解決できるという考えから、諦めずに店を続けた。苦労の末、旬で一番美味しい状態の「梅雨ボヤ」を大量に仕入れ、すぐにむいて冷凍する保存法たどり着いた。この方法で鮮度と匂いの問題をクリア。今では20種類以上のメニューが並び、ホヤの味を求めて県内外から人が訪れる人気店へと成長した。

生産者や販売者・県が一緒になってホヤを盛り上げる「ほやまつり」の目玉は来場者の投票で新メニューのグランプリを決める「レシピコンテスト」。「ホヤの魅力を伝える良い機会かもしれない」と佐藤さんも自信作で挑んだ。持ち込んだメニューは片栗粉をまぶして揚げるだけの「ほや唐揚げ」。もともとホヤは塩味が強く味付けいらずだが、大事なコンテストで簡単な調理法のメニューを選んだのはある思いを込めたからだ。
「美味しいんだからもっと食べてよ」。
コンテストを通じて、簡単で美味しい食べ方を知ってもらう。それが全国各地でホヤ食を定着させる近道だ、と考えた末の選択だった。
迎えた当日、佐藤さんの心からの叫び「鶏から喰ってる場合じゃねぇぞ!」を合言葉にした横断幕が張られた移動式販売カーには、長蛇の列ができた。客足は途切れることがなく、800食がまたたく間に完売。「酒のつまみには最高」「鶏から揚げよりも食べやすい」と唐揚げを口にした人々の顔がほころんだ。「ほや唐揚げ」は会場でもひときわ人気だったこともあり、グランプリに当たる金賞に輝いた。

コンテストを機に、佐藤さんのホヤには注文が殺到しているが、新しい悩みも生まれている。
「年間使用するほやを梅雨時に一気に仕入れなければいけない。そのお金を工面できるかどうか」。
注文が増加したが、「ホヤの仕入れ」という例のない出資に銀行側が渋っているからだ。可能性を秘めていながら、お金の工面が追いついておらず、協力者を募っている。

クレジット

ディレクター・撮影・編集:太田信吾 
プロデューサー:吉田宏徳 
進行管理:伊藤義子 
撮影:鈴木宏侑
車両:横山泰信
通訳:Mina Choi
資料映像出典:YTN NEWS 

<撮影協力>塩釜市魚市場/そば・うどん萩/フィッシャーマンジャパンの皆様/ほやほや屋の皆様/ほやほや学会の皆様/宮城県漁業協同組合/宮城県水産技術総合センター/青木雄勝/渥美貴幸/岡明彦/小林徳光/岸建太朗/武田侑也/イ・イルハ/田山圭子/西川正純

<Special Thanks>
宮城県女川町の皆様/特定非営利活動法人アスヘノキボウ

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