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糖尿病と認知症は関係あるの?【いまさら聞けない糖尿病について、理学療法士が解説します】

ぴぴ田舎の民間病院で働く理学療法士

ここまで、糖尿病の三大合併症である

糖尿病網膜症

糖尿病腎症

糖尿病神経障害

そして近年関係があると言われている糖尿病とがん

について解説してきましたが、最近ではがんに加えて認知症も糖尿病の合併症の仲間であると報告されることが増えてきています。

本記事では糖尿病と認知症について解説していきます。

なぜ糖尿病の方が認知症になりやすいのか

インスリン抵抗性による影響

一般的には血糖値を下げる役割として知られているインスリンは、脳においても重要な働きがあります。

①脳細胞へのエネルギー供給の調整

脳細胞は糖分をエネルギー源としています。インスリンが血液中の糖分をエネルギーに変換する役割を担っているため、脳細胞へ糖分を供給するために必要なホルモンと言えます。

②アミロイドβを分解

アミロイドβはアルツハイマー病の原因とされている物質です。インスリンは、アミロイドβというタンパク質を分解し、脳細胞への蓄積を防ぐ働きがあります。

どうやらインスリンと脳には深い関係がありそうですね。

糖尿病の患者さんはインスリンが効きづらい状態(インスリン抵抗性)であるため、インスリンの分泌量そのものが増えても、脳まで行き渡ることができなくなってしまいます。

これにより、

  • 脳細胞がエネルギーを取り込みにくい
  • アルツハイマー病の原因となるアミロイドβが蓄積する

という状態になり、認知症につながると考えられます。

高血糖による影響

高血糖が続くと、血管内は動脈硬化を起こしやすい状態となります。

脳血管の動脈硬化により、酸素や栄養が届かなくなり、アミロイドβが蓄積しやすい状態となるため、認知症のリスクも高まります。

実際にHbA1c(ヘモグロビン エーワンシー:血糖値の平均をあらわす指標)が上昇すると、計算能力が低下すると言われています。

低血糖による影響

脳のエネルギー源は糖分なので、低血糖発作をおこすと、脳がダメージを受けます。

低血糖発作をおこしたことのある糖尿病の方は、起こしたことのない方と比べて、認知症リスクが約2倍になるといわれています。

実際にどれくらいの関連があるのか

糖尿病患者さんは認知症になりやすい傾向にあるということがなんとなくわかったところで、実際のデータもあるので引用させていただきます。

九州大学医学部によると、糖尿病ではない方と比較したときの

・アルツハイマー型認知症の方が糖尿病を有している割合は、2.1倍

・血管性認知症の方が糖尿病を有している割合は1.8倍

と報告されています。

※このデータは認知症患者さんの原因疾患を調べたときに、糖尿病も関わりがあるとわかったという報告です
※このデータは認知症患者さんの原因疾患を調べたときに、糖尿病も関わりがあるとわかったという報告です

糖尿病患者さんが認知症を合併することによる困りごと

糖尿病患者さんは、食事の管理や適切な内服・注射が必要となりますが、認知機能が低下するとそれらの管理が難しくなり、糖尿病の悪化につながることがあります。

まとめ

本記事では糖尿病と認知症の関係について解説してきました。

糖尿病になる

認知症のリスクが高くなる

認知症になると糖尿病の管理ができない

糖尿病の悪化

という負のループが始まってしまうことがおわかりいただけたでしょうか。

軽い運動や食事療法ももちろん大切となりますが、ご家族や介護サービスの利用で適切に血糖値を管理することも大切です。

日頃から食生活や運動習慣の見直しを行い、血糖コントロールを意識した生活を心がけていただけたらうれしいです。

田舎の民間病院で働く理学療法士

地域の高齢者のリハビリや在宅復帰に関わり10年以上理学療法として勤務しています。リハビリ目線でのお役立ちTips、病気・怪我に関する情報を執筆していきます。田舎在住の二児のママです。

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