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オートバイのあれこれ『バイク界のカモシカ』

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。

今朝は『バイク界のカモシカ』をテーマにお話ししようと思います。

このテーマにピンと来る人は、おそらくオフロードファンではないかと思います。

1985年(昭和60年)、ヤマハから〈ヒマラヤカモシカ〉を指す単語が車名に当てられたオフロードバイクが誕生しました。

SEROW(セロー)』です。

▲“ユルい”オフロードバイク・セロー
▲“ユルい”オフロードバイク・セロー

セローが登場した85年というと、レーサーレプリカブーム真っ只中の頃。

当時は“速さ”“ハイスペック”が何よりも重要視され、オンロードモデルだけでなくオフロードモデルにおいても、モトクロッサー(レーサーマシン)ばりの運動性能を持っているバイクほど良しとされていた時代でした。

▲1984年式『DT200R』。レーサーレプリカ的な高性能がウリだった(画像引用元:ヤマハ発動機)
▲1984年式『DT200R』。レーサーレプリカ的な高性能がウリだった(画像引用元:ヤマハ発動機)

しかしヤマハは、セローを「競わない楽しみ」というコンセプトでもって開発。

いわば、当時のトレンドとは正反対の方向性でセローを作ったのでした。

パワーよりも扱いやすさを重視したエンジン、足つき性に優れるコンパクト&ソフトな車体、転んでも起こしやすい&壊れづらい外装設計が採用され、ルックスこそ他のオフロードモデルとさほど変わりませんが、実際のキャラクターとしてセローは独自の路線だったと言えます。

このセローの特性はまさしく、温和な性格と柔軟なひづめを持つヒマラヤカモシカそのものでした。

レプリカブーム下でセローは発売直後こそあまり売れなかったものの、89年のモデルチェンジ以降、その売れ行きはグングン伸びていくこととなります。

▲セルスターターが装備された89年式(画像引用元:ヤマハ発動機)
▲セルスターターが装備された89年式(画像引用元:ヤマハ発動機)

89年にセルスターターが搭載されたことが高評価を得て、オフロードビギナーなどから支持を集めたのです。

実はオフロードビギナーにとって、オフ車のキックスターターは悩みのタネでした。

ただでさえ足つきの悪い車体にまたがり、場合によっては滑りやすい泥の上やデコボコの岩場でキックを踏まなければならず、かなり労力の要ることだったのです。

一方シート高が低くて足つきが良く、またセルボタン一つでエンジンを始動できるセローは、特に初・中級者からイージーに乗れると好評を得て、やがてヤマハの人気モデルになりました。

以降、山の中をトコトコ楽しむ「マウンテントレール」という遊び方も広く認知されるようになり、セローは結果的に2020年まで販売が続くロングセラーモデルとなったのでした。

▲2020年式の最終モデル。ロングセラーとなった
▲2020年式の最終モデル。ロングセラーとなった

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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