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オートバイのあれこれ『ヤマハ製イタリアン?TRX850』

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。

今宵は『ヤマハ製イタリアン?TRX850』をテーマにお話ししようと思います。

皆さんは、『TRX850』というオートバイを知っているでしょうか。

▲TRX850(1995)
▲TRX850(1995)

TRX850は、ヤマハが1995年(平成7年)にリリースしたオートバイです。

イタリアンバイクのようなトラスフレームに、パラツイン(並列2気筒)エンジンとカウルを載せたTRXは、当時流行していたネイキッドモデルのスタイルとは真逆をいくキャラクターで、強い個性を放っていました。

なぜネイキッドブーム期にヤマハがこのようなバイクを作ったのかというと、当時ドゥカティといった海外の2気筒マシンがレースで活躍しており、また91年にリリースした同じくパラツインエンジンの『TDM850』が日本でもそこそこの販売実績を残していて、ヤマハのエンジニアたちが“2気筒の可能性”に興味を抱いたからです。

▲TDM850(1991/画像引用元:ヤマハ発動機)
▲TDM850(1991/画像引用元:ヤマハ発動機)

TRXの最大の見どころは、エンジンのクランクシャフトに270度クランクが採用されていることでした。

これは元々、パリダカ(パリ・ダカールラリー)に参戦するレーサーマシン『テネレ』の開発の中で生まれた技術で、砂漠の上でもガンガン加速するトラクション性能の高さが強みでした。

▲パリダカラリー参戦マシン『YZE750テネレ』(画像引用元:ヤマハ発動機)
▲パリダカラリー参戦マシン『YZE750テネレ』(画像引用元:ヤマハ発動機)

ヤマハは4気筒では味わえないこの独特なトラクションを一般ライダーが楽しめるようにと、TRXへ270度クランクを落とし込んだのです。

フレームについては、パラツインエンジンならではのスリムさを台無しにしないこと、そしてレプリカモデルほどの高剛性はTRXに不要だったことから、外観的にも遊び心のあるトラスフレームが選ばれたのでした。

TRXはヤマハの独創性が発揮された趣深いオートバイでしたが、当時はやはりネイキッドブームであり、また同時期に人気を博していたドゥカティ『900SS』と雰囲気がよく似ていて「ドゥカティのモノマネ」などといった辛口評価が飛びかったことで、大きな支持を得ることは残念ながらできませんでした。

▲ドゥカティ『900SS』(1991)
▲ドゥカティ『900SS』(1991)

たしかに、〈トラスフレーム+ツインエンジン〉というフォーマットはドゥカティと近く、さらにTRXのデビュー時のメインカラーは赤色でしたから、「ドゥカティとカブる」と言われてしまうのは致し方なかったのかもしれません。

とはいえ、TRXに何の存在意義も無かったということでは決してなく、270度クランクエンジンは一部の走り好きライダーに好評で、これ以降、市販バイクに270度クランクの採用例がどんどん増えていったのでした。

▲ドゥカティと似ている?(画像引用元:ヤマハ発動機)
▲ドゥカティと似ている?(画像引用元:ヤマハ発動機)

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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