オートバイのあれこれ『究極のCB。ド迫力の直6』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『究極のCB。ド迫力の直6』をテーマにお話ししようと思います。
1969年に『CB750FOUR』を発売し、世界的な成功を収めたホンダ。
しかし、70年代に入りライバルメーカーが次々と新進気鋭のオートバイを打ち出してくるなか、CBの覇権もそう長くは続きません。
当時最大のマーケットだったアメリカ(北米)ばかりに気が向いてしまっていたこともあり、とくにヨーロッパ市場において、ホンダの勢いはかなり鈍化してしまいました。
そのような状況のもと、ホンダは欧州での再興を賭け、CB750FOURを超えるCBの開発を決意。
そうして1978年にリリースされたのが、1000ccの『CBX』でした。
(『CBX1000』と呼ばれることが多いですが、正式名称は『CBX』です)
「X」は「究極」を表現したもので、ホンダは「究極のCB」という意味で『CBX』と名付けました。
そんなCBXの特徴はなんと言っても、並列6気筒エンジンを搭載していたこと。
世界を震撼させた「ナナハン」の4気筒をもさらに上回る、まさに“究極の”エンジンとして6気筒を採用したのです。
CBXに搭載された6気筒エンジンは見た目にもインパクト抜群で、とくに真正面や真上から車体を眺めた際、エンジンが横方向にかなり飛び出ていることが分かるでしょう。
現在の基準からするとかなり大きなエンジンという印象を受けますが、実はこれでも、軽量コンパクト化が押し進められたほうでした。
実はこのエンジンは、開発時にはもっと大きく重かったのです。
(CBXは乾燥重量が247kgですが、6気筒エンジンの開発初期段階では、エンジン単体の重さだけで200kg以上あったようです)
ホンダのエンジニアたちはヨーロピアンライダーが喜ぶ6気筒スポーツを作ろうと軽量化に没頭し、なんとかCBXの車重を4気筒マシンと同等の250kg以下に収めることができましたが、その苦労が販売価格へ見事に跳ね返って高額化してしまい、CBXはエンジニアたちの努力も虚しくあまり売れることはありませんでした。
結局ホンダはCBXの位置付けをスポーツモデルからツーリングモデルへと切り替え、デビュー4年目の81年からは大型カウルを取り付けて発売するようになり、82年に生産を終えてしまいました。
商売としては「上手くいった」とはいえないCBXですが、市販オートバイへ稀な6気筒エンジンを投入したホンダの挑戦は、十分称賛に値するものだったといって差し支えないでしょう。