オートバイのあれこれ『笑いのセンスもあったスズキ。』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『笑いのセンスもあったスズキ。』をテーマにお話ししようと思います。
1980年代、『GSX1100Sカタナ』や『ガンマ』『GSX-R』など、“ガチンコの”バイクを次々と市場投入していたスズキ。
唯一無二の油冷エンジンを開発したり、WGPマシンレプリカ『RG500Γ(400Γ)』をリリースするなど、当時のスズキの本気度は凄まじいものだったと言えます。
しかし、その一方。
そんな当時のスズキが、これらガチンコマシンとは正反対をゆく脱力系バイクも作っていたことをご存知でしょうか。
スズキはレーサーレプリカ市場で奮闘するかたわら、“冗談な”バイクもシレッと開発していたのです。
『GAG(ギャグ)』。
笑いを取るために作ったことがそのまま車名になった、まさに冗談由来の50cc原付モデルです。
見てのとおり外観こそイッチョマエに『GSX-R』なのですが、車体はとても小さく、小・中学生のキッズが乗ってちょうどいいくらいのサイズとなっていました。
いわばスズキはGSX-Rのパロディバイクをギャグ(冗談)で作ったわけですが、このGAGで興味深いのが、前輪ブレーキがディスク式となっていたり、リヤサスペンションがモノショック(1本ショック)になっていたりなど、要所要所が本格派のスポーツバイクっぽくなっていたところです。
当時のスズキの血気盛んなスポーツマインドが、GAGにも少しだけ反映されたのかもしれません。
とはいえ、肝心の走りはさすがにGSX-R的ではなく、トコトコ走るタイプ。
5.2psの4ストローク50ccエンジンは、お世辞にも速いとは言えませんでした。
このあたりに関しては、スズキも冗談のレベルに仕上げていたということでしょう。
ちなみにこの後、ヤマハ『YSR50』やホンダ『NSR50』など、GAGと似たような原付モデルが現れてきましたが、YSRやNSRは実際のところギャグ要素の無い本気の2ストミニレプリカで、性能的にはGAGを完全に上回っていました。
しかし、このガチのYSRやNSRが出てきたことで、GAGの脱力感や冗談具合がよりいっそう際立ったとも言えます。
性能的にはYSR・NSRに負けましたが、パロディマシンという自分だけの良いポジションを占めることができたという点では、GAGは勝ち組だったのかもしれません。