オートバイのあれこれ『重厚感?それとも“重工”感?カワサキの6気筒』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『重厚感?それとも“重工”感?カワサキの6気筒』をテーマにお話ししようと思います。
日本のオートバイ史を振り返ると、日本製のバイクというのは並列4気筒エンジンとともに成りあがってきたといえます。
1969年デビューのホンダ『CB750FOUR』を皮切りに、カワサキの『900SUPER4』(Z1)やスズキ『GS750』といった4気筒モデルの活躍から、日本メーカーの快進撃が始まりました。
結論から言うと、当時としてはやはりバイクに性能を求めるのなら4気筒が最適だったわけですが、メーカーが発展途上の1970年代にあって「何がベストチョイスなのか」はまだまだ分かっておらず、さらなるハイスペックを求め4気筒を超える大きさのエンジンも作られていました。
そんななか生まれた一つが、カワサキの6気筒エンジンでした。
カワサキは1972年に空冷4気筒のZ1をリリースし見事世界的な成功を収めるものの、翌73年には早くもZ1を凌駕する次世代旗艦モデルの開発に乗り出します。
「Z1よりもハイパワーかつビッグなバイクを」とのことで開発された『Z1300』は、排気量1,286cc・水冷DOHC2バルブの並列6気筒エンジンを搭載。
ピークパワーは、Z1の82psから約1.5倍の120psを発揮しました。
120psももちろん見ものではあるのですが、とくにZ1300で注目しておきたいのがトルクの大きさ。
ボア62mm/ストローク71mmという大胆なロングストローク設定により、11.8kg-mという強大なトルクを出力していました。
ライバルモデルだったホンダ『CBX』(空冷6気筒)のピークトルクが8.6kg-mでしたから、Z1300のエンジンはやはりトルクの豊かさが頭一つ抜きん出ていたといえます。
そしてこのトルク型のエンジンが、そのままZ1300のキャラクターを決定づけることとなります。
先ほど説明したとおり、カワサキは当初Z1300を「Z1を超えるスポーツモデル」として企画していたのですが、大きなエンジンに比例して重厚になった車体と、大トルクのエンジン特性を鑑みて、路線を変更。
スポーツ車ではなく、どっしり優雅に乗れるツアラーとしてZ1300をポジショニングしたのです。
結果的にはこの方向転換が功を奏し、Z1300は『ボイジャー』といったグランドツーリングバイクへと進化しつつ10年以上にわたって生産が続けられたのでした。