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彌彦神社のお膝元 朱塗りの社殿風木造駅舎が残る終着駅 弥彦線 弥彦駅(新潟県西蒲原郡弥彦村)

清水要鉄道ライター

信越本線の東三条駅から分岐して吉田駅で越後線と交差して弥彦駅に至る全長17.4キロの弥彦線。その起点が越後国一之宮彌彦神社への玄関口である弥彦駅だ。彌彦神社は神武天皇の名を受けて越国(こしのくに)を平定し、越後国の基礎を築いたと伝わる天香山命(アメノカグヤマノミコト)を主祭神とする神社で、標高634メートルの弥彦山そのものがご神体となっている。古くより越後の人々からの崇敬を集めており、弥彦線はその参拝路線として建設された。

駅舎
駅舎

弥彦線は私鉄の越後鉄道として大正5(1916)年10月16日に弥彦~西吉田(現:吉田)間が開業。昭和2(1927)年7月31日に越後長沢(廃止)までが全通し、同年10月1日に国有化された。弥彦駅の駅舎は開業時に建てられたもので、今年で築107年を迎える。彌彦神社の本殿が落成する5日前の開業だった。15万円をかけて建設されたが、当時の越後鉄道の年間利益が5万円だったというから、いかに費用をかけて建設されたかがわかるというものだ。

大正時代の駅舎(駅舎内のパネルより)
大正時代の駅舎(駅舎内のパネルより)

越後鉄道が年間利益3年分をかけて建てた駅舎は参拝駅にふさわしい和風のデザインで、左右対称の均整の取れた美しい建物だ。昔の写真と見比べてみると、今もその美しさが損なわれていないのがわかる。このような寺社風駅舎は全国各地の神社仏閣の最寄り駅に建てられたが、長野駅(平成9年建て替え)や彦山駅(令和3年解体)など姿を消す駅も多く、今となっては貴重な存在だ。

車寄せ部分
車寄せ部分

白壁に朱塗りの柱、細部の造形などは寺社建築そのもので、建築当時には宮大工も携わったのだろうかと想像が膨らむ。駅名表示がなければ、神社の建物の一つかと勘違いする人がいてもおかしくないほどに完成度は高い。駅舎の前には手水鉢も置かれているが、現在は水が満たされていない。

駅舎内
駅舎内

初詣などで多くの乗客が利用することを想定しているのか、駅舎内は広々としている。格子天井に格子戸と内部も和風で統一されている。弥彦線内では起点の東三条駅と共に二つしかないみどりの窓口設置駅で、Suicaも利用可能だ。

待合室
待合室

待合室もローカル線の駅にしては広い。クーラーも聞いており、暑い日にでも快適に列車を待つことができる。待合室内には菓子や飲み物を販売する売店「AMANE」もあるが、筆者が訪問した日には営業していなかった。

改札口
改札口

ホームへの出入りは出札窓口に面した通路を使うが、その隣には引き戸四面分の広い改札口もある。多客時に使用されるもので、ホーム側には擬宝珠(ぎぼし)のついたラッチが設置されているのがいかにも神社の参拝駅といった雰囲気だ。

ホーム
ホーム

ホームの上屋も木を組み合わせたもので、風格を感じさせる。平成25(2013)年9月11日の駅改装時に新調されたのか木材は新しい。今後時を経て古びてくるとまた違った味が出てくることだろう。

終着駅の車止め
終着駅の車止め

ホームは一面一線で、ホームの先には車止めがある。かつては駅裏に側線があったそうだが今は跡形もない。一日10本の電車が折り返すだけならこれだけの設備で充分なのだろう。電車は二両編成が基本で、ホームの端まで入ることは少ないため、線路の端はすっかり草に埋もれている。

朱塗りの駅舎
朱塗りの駅舎

新潟県を代表する神社への参拝駅として100年以上に渡って多くの乗客を迎えてきた木造駅舎。その雄姿を見に弥彦線で出かけてみてはいかがだろうか。

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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