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ロケのために復元された築92年の木造駅舎 大井川鐡道本線 田野口駅(静岡県榛原郡川根本町)

清水要鉄道ライター

令和4(2022)年9月24日の台風15号で被災し、川根温泉笹間渡~千頭間で不通が続いている大井川鐡道本線。SL列車が走り、古い駅舎や昔ながらの沿線風景を残していることから、これまでにも数多くの映画やドラマのロケに使用されてきた。不通区間にある駅のうち田野口駅はロケ誘致のためにわざわざ復元された珍しい駅である。

駅舎
駅舎

田野口駅の開業は昭和6(1931)年4月12日。駅舎はその時建てられたもので、今年で築92年。昭和45(1970)年2月に無人化されており、荒れていた時期もあったようだが、平成17(2005)年に「駅舎等を対象とするロケーション・サービス推進事業」のモデル駅として、ロケ誘致のために開業当時の姿に復元された。

改札口
改札口

駅舎内は地元住民によって定期的に清掃されており、列車が来なくなった今でも美しく保たれている。窓口は板で無人化後に塞がれていたが、復元工事によって戦前の駅窓口の姿を取り戻している。さながら昔懐かしい駅の様子を今に伝えるタイムカプセルのようだ。

待合室
待合室

昔からあまり利用者の多い駅ではなかったためか、駅舎内の待合室はこじんまりとしている。壁に造りつけの長椅子もかつては全国の木造駅舎で見られたアイテムだが、今では建て替えやプラベンチへの交換で数を減らしつつある。窓枠はアルミサッシではなく緑に塗られた木製の桟だ。

ホーム
ホーム

ホームはかつて行き違い可能の1面2線だったが、現在は片面のみ使用されている。ホーム上には昔ながらの「鳥居型駅名標」を再現したものが立ち、これまた昭和風情を演出している。撤去された線路跡は駐車場に転用されて久しい。SLがよく似合いそうな駅だが、この駅を含む不通区間の復旧の目処は立っておらず、予断を許さない状況だ。この駅に再び汽車がやってくる日はいつになるだろうか。

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鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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