一日四回しか列車がやってこない仮の終着駅 大井川鐡道本線 川根温泉笹間渡駅(静岡県島田市川根町)
令和4(2022)年9月24日の台風15号で被災し、一部区間で不通が続いている大井川鐡道本線。その仮の終着駅が島田市最北端の川根温泉笹間渡駅だ。今年の10月1日より一年ぶりに運行を再開している。復旧していない千頭駅までは川根本町コミュニティバスによる代行輸送が行われているが、代行バスの起点は当駅ではなく家山駅だ。
駅名標のうち復旧していない隣の地名駅は隠されていて、一部区間が廃止になった路線のようだ。昭和5(1930)年7月16日開業時の駅名は「笹間渡」で、平成15(2003)年10月1日に「川根温泉笹間渡」に改称された。復旧日は奇しくも改称からちょうど20年目の同日である。
駅舎は開業時のもので築93年。昔ながらの駅の姿を色濃く残しながらも綺麗に保たれていて、状態は良い。線内の他の駅同様に昭和が舞台の映画のロケに使えそうな雰囲気だ。駅舎内にはカフェ「ひぐらし」が入居しているが、現在は予約営業となっている。
川根温泉笹間渡駅にやってくる列車は一日わずか4本。朝と昼に1本ずつ、夜に2本という陣容だ。これに臨時列車が2本加わるが、日常使いにも観光にもお世辞にも使いやすいとは言えないダイヤだ。
ホームは駅舎とは対照的に造りが新しく、駅舎とは階段とスロープで結ばれている。この駅をあまり映画やドラマで見かけることがないのは、駅舎は古くともホームが新しすぎて時代設定にそぐわないからなのだろう。
ホームは一面一線とシンプルで、列車は金谷方面からやってきて短時間で折り返していく。あまり終着駅らしくない雰囲気も災害による一時的な終着駅という当駅の性格をよく表している。
駅があるのは並行する県道63号藤枝天竜線から短い坂道を入ったところだ。代行バスは駅前まで入らず、坂道への入口に停車する。坂の下には駅前商店らしい雰囲気の建物があるが、営業を辞めて久しい様子だ。
終着駅らしからぬ雰囲気の川根温泉笹間渡駅が不通区間の運行再開で元の途中駅に戻る日がやって来るのはいつになるだろうか。
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