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【4月1日廃止】列車が来ない駅と自然に還る線路 根室本線 落合駅(北海道空知郡南富良野町)

清水要鉄道ライター

石狩国と十勝国を隔てる難所・狩勝峠。その峠を控えた終着駅として明治34(1901)年9月3日に開業したのが根室本線の落合駅だ。「落合」という駅名は東京メトロ東西線にもあり、「○○落合」という国名を冠した駅名も宮城県(陸前)、岡山県(美作)、広島県(備後)にあるが、その中でも一番古いのが北海道にあるこの落合駅である。「落合」という地名は川と川が落ち合う(合流する)ことに由来し、落合駅の近くでもシーソラプチ川とルウオマンソラプチ川が合流して空知川となっている。

駅舎
駅舎

終着駅であった落合駅には開業と同時に落合機関庫が設置されたが、明治40(1907)年9月8日の帯広延伸で途中駅となり、機関庫は大正6(1917)年4月16日に新得に移転している。その後は落合森林軌道による木材の積み出し駅として栄え、駅裏には製材工場への専用線もあった。昭和41(1966)年9月30日、狩勝峠越えの新線が開業、それまで使われていた新内(にいない)駅経由の旧線は翌10月1日に廃止されている。昭和56(1981)年10月1日に石勝線が開業すると、根室本線の滝川~新得間は支線に転落。落合駅も昭和57(1982)年11月15日に貨物と荷物の取り扱いをやめ、昭和61(1986)年10月31日には無人化されてしまった。しかし、狩勝峠を控えた駅ということもあって平成28(2016)年3月25日までは富良野方面からの一部列車の折り返し駅であった。

駅舎内
駅舎内

駅舎は古い木造駅舎だが築年は不明。入口部分の造りから見て、かなり改装の手が加えられているものと思われる。入口から右手に待合室があり、窓口跡も残っている。

駅全景
駅全景

落合駅を含む東鹿越~新得間は平成28(2016)年8月31日の台風10号による被害を受け、7年以上に渡ってバス代行が続いている。ホームは立入禁止となり、跨線橋にも近付くことができない。構内は草に覆われて自然に還りつつあり、まるで廃駅のような姿だが、令和6(2024)年4月1日での廃止が決定しているため、あと4ヶ月で文字通り廃駅となる予定だ。

駅前
駅前

駅があるのは国道38号から分岐する道道1117号落合停車場線の坂を下った突き当りで、駅前には公民館がある。

落合市街
落合市街

落合の市街地は国道38号に沿って形成されており、国道沿いに郵便局や廃校になった小学校、八幡神社もある。上写真右から2軒目の建物は落合郵便局の旧局舎だ。

跨線橋から見た駅構内
跨線橋から見た駅構内

駅の東方には昭和42(1967)年3月20日設置の人道跨線橋があり、駅構内を見下ろすことができる。構内の広さがよくわかるが、レールはほとんど草に覆われて終末感が漂っている。5月から6月には構内がルピナスの花に覆われて、美しくも物悲しい風景が出現するようだ。

旧線と新線の分岐点
旧線と新線の分岐点

跨線橋から新得方面を見てみると、こちらは草木に覆われていてレールの姿も視認できない。右の第一落合トンネルを潜るのが昭和41(1966)年9月30日開業の新線で、左に旧線跡が分かれている。平成28(2016)年8月31日の台風10号では第一落合トンネルに土砂が流入し、元々利用者の少なかったこの線区にとどめをさす一端となった。駅自体の開業から122年、新線への切り替えから57年、早くも自然に還りつつある落合駅の終焉まであと4か月だ。

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鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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