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北前船を模した駅舎に改築へ まもなく消える築72年の木造駅舎 五能線 向能代駅(秋田県能代市)

清水要鉄道ライター
向能代駅

3月28日、JR東日本秋田支社は秋田県能代市にある五能線の向能代(むかいのしろ)駅を建て替えると発表した。既存の駅舎は老朽化が進んでおり、仮駅舎への移行後に解体して、跡地に新駅舎を建設する予定だ。工期は4月下旬から11月下旬で、11月下旬より新駅舎の供用が開始される。能代市が北前船の寄港地だったことにちなみ、新駅舎は北前船を模した意匠となる予定だ。

駅舎 駅名標には合併前の能代市の花「ハマナス」が描かれている
駅舎 駅名標には合併前の能代市の花「ハマナス」が描かれている

向能代駅は昭和24(1949)年2月1日に停留場として開業し、3年後の昭和27(1952)年1月25日に正式な駅に昇格した。現在の駅舎は正駅昇格時に建てられたものの可能性が高く、もしそうであれば築72年となる。

待合室
待合室

駅があるのは能代市の中心部から米代川を挟んだ対岸で、「能代かい(岸)」にあることから、「向能代」の地名が付いた。駅周辺は能代市の郊外といった趣で住宅や学校も多く、かつては能代西高校の最寄り駅であったため、駅待合室は広い。余談だが、能代西高校の合併相手である能代工業高校は漫画「SLAM DUNK」に登場する「山王工業高校」のモデルとされている。

待合室にはかつて冬期にストーブが設置されていたが、無人化と共に消えてしまった。

無人化前の窓口
無人化前の窓口

向能代駅は昭和59(1984)年4月1日から能代市に駅窓口業務が委託されており、朝から夕方まで乗車券の販売を行っていた。この簡易委託は能代西高校の閉校と同日の令和3(2021)年3月31日に終了し、駅は翌4月1日より無人化されている。駅が無人化されれば当然、駅員が詰めていた事務室は不要になるわけで、無人化後に駅舎が改築されて小さくなってしまう事例は多い。

ホーム
ホーム

ホームは単式一面一線。Wikipediaには「かつて交換設備があった」との記述がみられるが、開業時は停留所であったことや、駅の構造から見て交換設備が設けられた歴史はないと思われる。交換設備を撤去した駅なら、駅の前後で線路が少し曲がっているはずだ。

駅舎(ホーム側)
駅舎(ホーム側)

駅舎のホーム側には風除室が設けられており、北国らしい造りだ。温暖地の駅舎ならむき出しになっていることが多い庇の下の通路が駅舎から伸びた屋根と壁ですっぽり覆われている。

向能代駅を発車するキハ40
向能代駅を発車するキハ40

五能線をはじめとした秋田支社管内はここ20年ほどで駅舎の改築が一気に進んだ地区で、五能線でも北金ケ沢駅、鶴泊駅、川部駅が近年建て替えられている。古くからの駅舎が残るのは岩館駅、陸奥岩崎駅、驫木駅、陸奥森田駅、板柳駅の5駅のみだ。風光明媚な車窓で知られる五能線だが、駅設備に関しては他路線同様に近代化が進められているので、古い駅舎を味わいたいなら今のうちに行っておいた方がいいかもしれない。

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鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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